OAUは未来に向けて音楽を奏でていく 心地よい春風とともに日比谷野音で迎えた『New Spring Harvest』

OAU『New Spring Harvest』日比谷野音レポ

 アンコールはドラムとパーカッション、座り込んだTOSHI-LOWがジャンベを叩く三人のセッション「Banana Split」から始まり、パーカッシブな曲が一層輝き出す。ほかのメンバーが揃うとそのまま「Peach Melba」を続け、MARTINが「Clap Your Hands、Let’s Go!」と呼びかける後ろでMAKOTOがアップライトベースを弾きながら跳ねていた。

 「アンコールありがとうね、ホントあがった。最高」とMARTIN。「2年が無駄じゃなかった」とTOSHI-LOWも笑顔を見せ、集まったオーディエンスへの謝辞を述べた後、感情を抑えて語った。

「何で戦争があるんだよ。出兵していくパパを見送る、多分記憶がないであろう幼子。この街に残るっていう年老いた両親を、置いていかなければならない人々。遠くで母国を思う人。そして、虐殺、略奪、焼かれた街の映像、結論はどこにあるんだろう。正解はどこにあるんだろう。わかんないままだけど、俺たちは聞かれれば、そりゃ声を上げる。反戦、て」

 語りたいことは山ほどあっただろうが、彼がこのことに触れたのはこれだけだ。そして穏やかに新曲の説明をした。

「1600年終わりの頃、盲目のハーピストが、そのヨーロッパで曲を作りました。多分今よりもっともっと、オスマントルコ帝国やローマ帝国やロシア帝国や、戦争がたくさんあった時だと思います。その時に音楽家は何をしていたか。音楽を奏でたんです。未来のために平和のために、音楽をただただ奏でたんです。350年前のそのメロディに歌詞をつけて、俺たちが現代の音楽家として歌います。タイトルは新しくつけました。「This Song」と」

 TOSHI-LOWが歌った新曲は、中世を思わせるシンプルなメロディが、光と闇について歌っている歌を際立たせた。曲の終わりに、ステージのネオンが青と黄に変わった。

「来年も、また会えることを願っています。俺たちができることは多分、本当に、日常を、今ある幸せを噛み締めて生きていく。それこそが自分たちの一番の主張になるんだと俺は思っています。だから、ずっと音楽を止めることはないし、皆さんも音楽を楽しんでください。一生。お願いします」

 沸き起こった大きな拍手に「いいお客さんだなあ、帰したくねえよ」と笑顔を見せ、言った。

「気をつけて、どうか無事で、お帰りなさい、ただいま、いらっしゃい、たくさんこれからも言いましょう。OAUでした」

OAU 日比谷野音ライブ(写真=KAZUYAKOSAKA)

 ラストソングは「帰り道」。曲の途中から誰からともなくスマホのライトをステージにかざし、客席が星空のようになった。

「むちゃむちゃキレイ! ありがとう!」

 TOSHI-LOWがそう言ってメンバーと連れ立ち降りた後のステージのネオンは、再び青と黄に輝いていた。

 爆音上等のBRAHMANの4人がアコースティック楽器に持ち替えたことで生まれる、とてつもないエネルギーがOAUの原動力であることを改めて体感させるライブだった。それぞれの曲の歌詞が、時を超えて今を浮き上がらせた。最小限の言葉で今を語ったTOSHI-LOWの思いが、この2時間に込められていた。

OAU 日比谷野音ライブ(写真=KAZUYAKOSAKA)

■セットリスト
1.Old Road
2.こころの花
3.Apple Pie Rag
4.Broken Glass
5.世界の地図
6.Change
7.Sunny Day
8.all the way
9.Ankaa
10.Thank You
11.Mask(short ver)
12.Life
13.世界は変わる
14.New Tale
15.Bamboo leaf boat
16.Again
17.Americana
18.Midnight Sun
19.Making time

En1.Banana Split
En2.Peach Melba
En3.This Song(新曲)
En4.帰り道

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