アイナ・ジ・エンド、観客の視線を独占した孤高のステージ 一人ひとりに感動届けた圧巻の表現力

アイナ、大阪城ホールワンマンレポ

 BiSHのメンバーとしても活躍しているアイナ・ジ・エンドが、2022年3月17日に大阪城ホールにてワンマンライブ『AiNA THE END “帰巣本能”』を行った。

 当然ながら、アイナはBiSHとして大阪城ホールのようなアリーナ規模でのライブ経験もある。慣れたものだとは言わないが、少なくとも、ホールのスケール感を知らないわけがない。しかし、このライブはいつもと違う要素がいくつもあった。というのも、アイナにとってこの日がソロとしては初のアリーナ公演だった。しかも、今回の公演はアイナが今まで行ったソロ公演とは違い、サポートバンドを引き連れることなく、完全に一人でステージに立つというのだ。いつものライブとは違うプレッシャーが嫌でもかかる、そんなシチュエーションだった。

 ……と、アイナ側の視点に立てば、そんな背景が想像できるが、観客側の自分が“アイナ一人だけのステージ”で感じたのは、ライブにおける視線の違いだった。当然ながら、ステージに観るものがたくさんあれば視線は散漫となる。だが、この日のステージは、アイナしかいない。そのため、真っ直ぐにアイナに視線がいくことになる。ライブにおける集中力が、アイナのパフォーマンスに全振りになったし、それがこのライブの体験を別格なものに変えるトリガーになるのだった。

 秀逸だったのは、セトリの流れや、ステージングの構成、そしてアイナの衣装の変化が、見事にシンクロしていたこと。さらには、その流れにそって繰り出されるアイナの歌とダンスも、その流れに綺麗に合わせられていた。ステージに目線が釘付けになっている状態で、こんな連打を繰り出されたら、惹き込まれるしかない。そんな時間だった。

 この日、ライブで最初に披露されたのは「サボテンガール」だった。その際のアイナの衣装は全身が青で統一された網目状のデザインが印象的で、キュートなイメージが強かった。頭上で手を左右に動かすサビの振り付けを、アイナと観客が一体になって行うことで、ライブの初っ端から幸福な空気が充満していく。以降、「NaNa」「ワタシハココニイマス for 雨」と、アッパーなチューンで会場のボルテージは上がっていく。

 MCでは「観客のみんなはどこから来たのか」というやり取りをしながら、地元大阪に帰ってきた喜びを言葉にする。

 そう。

 ツアータイトルが“帰巣本能”となっている通り、今回はアイナの地元大阪に帰ってきてライブを行う、というのがひとつの核になっていた。他のパートのMCでも、やっぱり大阪が好きであること、大阪で過ごした日々がかけがえないこと、などを口にする場面があった。その上で、今こうやって、こんなにも大きなステージでライブができているという事実に驚きと感謝を述べる一幕もあった。今日のステージの大きさを伝えるために、ステージに寝そべって天井を見上げ、大阪城ホールの天井が高いと爛漫に口にする場面もまた、印象的だった。

 途中、アイナが網目状の衣装を脱いで歌唱する場面があった。これにより、良い意味で一気にライブの空気が緊張感に満ち溢れていった。シリアスな色合いが見え隠れするなか、ソリッドな感情をむき出しにして歌いこなす「ロマンスの血」や「虹」が圧巻だった。

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