アイナ・ジ・エンド、観客の視線を独占した孤高のステージ 一人ひとりに感動届けた圧巻の表現力

アイナ、大阪城ホールワンマンレポ

 次に衣装チェンジをした際は、赤色に包まれた衣装で登場。「ZOKINGDOG」を披露することで、会場に一体感が生まれていく。また、「STEP by STEP」「誰誰誰」でもアイナのハスキーボイスが躍動していた。

 その流れの中で、アイナは花道を歩いたのだが、花道の先でアイナは一度給水をとる場面があり、そこも見どころのひとつになった。というのも、バケツにストローが突き刺さったものをステージに運んでもらい、バケツを抱えて給水していたのだ。撮影ありということで、そのシーンを撮影していた観客も多かった。そのシーンを総括するかのように、アイナは「動物園の動物ってこういう気持ちなんだ」と納得した顔でつぶやく一幕があって、ここのシュールさもまた、印象的だった。

 ライブの中盤からはぐっと雰囲気が変わる。「粧し込んだ日にかぎって」「金木犀」「静的情夜」といった、メッセージ性の強いしっとりとした楽曲を立て続けに披露。その後のMCでは、BiSHのことにも触れた。BiSHは2023年をもって解散が発表されている。そんな中で、「この曲を含めて全曲を愛してるから、これからもずっとどこかで歌いたいし踊り続けていたい、今日は心にBiSHの想いをこめて1人で歌ってみます」と述べ、BiSHの楽曲である「リズム」を披露。感情表現豊かなアイナの歌唱だからこそ、モモコグミカンパニーが書いた歌詞が痛烈に響いてくるし、アイナがこの歌を再解釈して歌うからこそ、また違ったメッセージ性が浮かび上がる。

 そんなドラマチックな流れになったかと思えば、衣装チェンジの際に流れるVTRでは、天竺鼠の川原克己と一緒に“ナスビ”の格好をしながら、呼び鈴を使ったネタ(?)を披露。長尺な映像だったこともあり、シリアスな雰囲気から一転、会場は笑いに包まれることになった。

 そんな微笑ましい時間が終了して、アイナがステージに出てきた。ポニーテールに服装もガーリーな雰囲気に包まれていて、ステージも一気にキュートなテイストに。この流れもまた秀逸で、ありとあらゆるジャンルから感情に揺さぶりをかけてくる、この日のライブの真骨頂が味わえる瞬間となった。

 この日のライブ本編は「きえないで」、アンコールは「スイカ」で終わったこの日のライブ。終盤のMCでは、アイナは今日のステージは世界一寂しいステージだった、と述べた。でも、寂しいステージもたくさんのお客さんがいるからこそ楽しいステージに変わったし、寂しさを経験したからこそ孤独を愛せるようになるとも語った。

 よくみると、アンコールが終わった際のアイナの目は、少し潤んでいるようにも見えた。もしかすると、それは一人でライブをするというプレッシャーの開放から生じた感情の吐露だったのかもしれない。一日を通して、アイナのステージ上での表現力は見事なものだったし、まったく付け入る先のない説得力と迫力に満ちたライブだったからこそ、その感情の吐露になんだかぐっとくるものがあった。

 改めて感じたのは、アイナ・ジ・エンドというアーティストの表現力の高さ。しかも、ソロだからこそ、ステージにたった一人という環境だったからこそ、それがよりダイレクトに伝わってきた。なにより、ポジティブもネガティブも包み隠さず歌にしてきたアイナだからこそのキラメキと感動が宿っていた、そんな素晴らしいライブだった。

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