DECO*27、Rockwell&DMYM/No.734と交わすOTOIRO創作対談 初音ミクを取り巻くクリエイティブの全貌

DECO*27、Rockwell&DMYM/No.734創作対談

 2022年、躍進している音楽プロデューサーといえばDECO*27だ。5人組ボーカルユニットmzsrz、トランジションクリエイターのケチャップなど、気鋭のニューカマーのプロデュースや、話題のゲーム『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』へ楽曲提供しながらも、今年3月9日には、“アイドル全員初音ミク”をキャッチコピーとした初音ミク愛を具現化した8枚目となるアルバム『MANNEQUIN』をリリースしたばかり。

 TikTokやYouTube界隈で大ヒットとなった「ヴァンパイア」、「シンデレラ」、「アニマル」他、代表曲である「モザイクロール」や「おじゃま虫」のニューバージョンを収録するなどDECO*27の現時点での集大成であり、次世代につながる令和ミュージックシーンの未来を占う1枚。それこそ小室哲哉、つんく♂、中田ヤスタカなど、ヒットを量産する音楽プロデューサーの“令和版”が待たれる過渡期の音楽シーン。ボカロ文化圏〜TikTok文化圏〜YouTube文化圏を紡ぐ存在としてDECO*27に熱い期待が寄せられている。

 そんな多作家であるDECO*27の魅力を紐解くべく、DECO*27が立ち上げたクリエイティブチームOTOIROの音部門である“Team.OTO”サウンドプロデューサーRockwell、そして、色(アートワーク)部門としてイラストやMV、パッケージデザインなどのアートディレクションを担当する“Team.IRO”のDMYM/No.734が、それぞれDECO*27と制作ストーリーを対談することで、8枚目のアルバム作品となる『MANNEQUIN』の魅力を掘り下げていきたい。(ふくりゅう)

DECO*27×Rockwell対談:テーマ=ミュージック

DECO*27 - ヴァンパイア feat. 初音ミク

ーー『MANNEQUIN』は、それぞれが異なるテーマを持ったアルバム作品シリーズ『GHOST』、『アンドロイドガール』、『アンデットアリス』の系譜から逸脱しつつ、ボーカロイド 初音ミクとコンセプチュアルに向き合った意欲作になりました。アルバムのコンセプトを思いついたきっかけから教えてください。

DECO*27:「ヴァンパイア」を書いたのが一昨年の年末から去年の年始にかけてで。2週間ぐらいで直感的に作ったんです。「ヴァンパイア」は、DECO*27のなかでも新しい音楽性でかつ、イラストも可愛くて。僕も長く活動していますが、新鮮だなって思えて。それでいうと、過去のアルバム作品『GHOST』、『アンドロイドガール』、『アンデットアリス』はダーク寄りなコンセプトだったんですね。

ーーそうですね。

DECO*27:このタイミングで明るい方向に振り切ってみようと。そこで思いついたのが、初音ミクとアイドルを掛け合わせるというアイデアでした。「シンデレラ」が出る前には決まっていたかな。

ーーコンセプトが生まれたおかげで振り切れた曲もあったのでは?

DECO*27:そうですね。このアルバムはアーティストDECO*27というより、プロデューサーDECO*27のアルバムとなりました。それこそ“こんな曲をやりたい!”みたいな想いよりも、逆に「ヴァンパイア」みたいな曲があることで、ミクの魅力を新たに引き出せたんじゃないかなって、バランスを考えながらシフトしましたね。

ーーこれまでもポップでキュートな曲はたくさんありましたが、モチベーションの捉え方に変化があったのですね。

DECO*27:去年、ボカロに書いた曲だと「シンデレラ」が一番好きなんですけど、「シンデレラ」は「ヴァンパイア」を書いて、アルバムのコンセプトを思い浮かべながら書いたんですよ。「アニマル」もですね。その時点でだいぶ見えていました。

Rockwell

ーーRockwellさんは、アルバム『MANNEQUIN』でも複数の楽曲のアレンジを担当していますが、今回の「ヴァンパイア」から『MANNEQUIN』への流れをどのように感じましたか?

Rockwell:「ヴァンパイア」を作りはじめたときにDECO*27が新しいことに挑戦しようとしているんだなと感じたので。これまでにやっていなかった音の入れ方を自分なりに見つめ直すいいタイミングとなりました。普段だったら使わない生活音だったり、ちょっと変わった音を提案したら「面白いじゃん!」って。

ーー変わった音とはどんなサウンドですか?

Rockwell:DECO*27は歌詞が特徴的じゃないですか。印象強いフックがあるワードを思い浮かべながら音を探して、少しずつサウンドを当てはめていきました。そこで、歌詞に影響を受けた変わった音使いをやってみたいという発想が生まれました。

ーー本作で、DECO*27さんとRockwellさんの色を感じる曲が実はあって。「U」のポップパンクなサウンドはヤバいですね。

DECO*27&Rockwell:(笑)

ーーそれに英語詞で。楽しく聴かせてもらったのですが、完全にふたりの色ですよね?

DECO*27:僕らが、DECO*27とRockwellになる前の学生時代に聴いていたサウンドに近いです。

ーーふたりは学生時代からの知り合いなんですよね。しかも、いま時代的に90年代リバイバルもあって、マシン・ガン・ケリー、アヴリル・ラヴィーンなどのポップパンクなサウンドが世界中で盛り上がりを見せつつあります。

DECO*27:そうそう。今回楽曲それぞれに、初音ミクのイラストが付いてキャラクター設定も明確にしているんですよ。

ーー「U」は、グループの西海岸担当って書いてありました。

DECO*27:この子は、帰国子女の設定で。全部英語で歌っているのはアルバムの中でも挑戦でした。あと、普通にポップパンクを全力でやりたかったんですよ。

Rockwell:もうひたすら、バカになりながら昔を思い出しましたね。ポップパンクは、blink-182やNew Found Glory、SUM 41など、自分にとって大きな影響を受けているジャンルなので。

DECO*27:ポップパンクや、ミクへのキャラクター設定付けはとても楽しかったですね。こんな企画自体初めてだったので。ちなみに、年齢と身長はみんな一緒なんですよ。みんな初音ミクなので。その上でテーマカラーや口癖など差異をいかに出すかっていうね。さらに、それぞれ好きなDECO*27の曲まで書いてありますからね。

ーその細かい設定もファン心理をくすぐりますね。

DECO*27:自分でもぶっ飛んだことをやったなと思っています(笑)。アルバム『MANNEQUIN』は、新しいことと、これまでやってきたことをうまく融合できた1枚になったんじゃないかな。作品としては集大成感があると思いますし、動画の投稿順にもこだわっているんです。「ヴァンパイア」ができた後に「おじゃま虫2」もできていて、「モザイクロール」の新録もやることを決めていました。ちなみに、アルバム発売直前に出した「パラサイト」や「ジレンマ」など、動画になっている曲は去年の夏には実は完成していて。

ーーそうなんですね。

DECO*27:アルバムの発売が2022年3月9日に決まっていたので、それに向けて、どのタイミングでMVを出していくかにこだわりましたね。意外と「ヴァンパイア」、「シンデレラ」、「アニマル」が今までの自分の作品と違いすぎたので、リスナーの中にはアレルギー反応を起こす方もいるんじゃないかなって。新規獲得には「ヴァンパイア」以降の流れは今の時代においてベストなんですけどね。その間に、自分がこれまでやってきた過去曲も聴いて欲しくて「モザイクロール」や「おじゃま虫」にも興味を持って欲しいし。

ーーそんな思いがあっての過去の人気曲の再録だったのですね。

DECO*27:そして、「ヴァンパイア」、「シンデレラ」、「アニマル」でDECO*27を知った人に、「パラサイト」や「ジレンマ」という作品で、“こっち側”の曲もあるからねって。

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