藤田麻衣子、葛藤の果てに噛み締めた15周年の喜び 支え合ってきた様々な人とのストーリーを振り返る

藤田麻衣子、支え合ってきた人とのストーリー

「ツラくても最高のものを精一杯残してきたことが自信に」

ーーMCで近藤さんのことを聞き、パンフレットで対談を読み、映像で本編最後の「恋に落ちて」を聴いたとき、近藤さんが藤田さんのことを「いい」と思った最初の気持ちがわかった気がしました。ご自身は「恋に落ちて」を歌いながら、どんなことを思っていましたか?

藤田:歌うときはただその歌の気持ちになることが多いんですけど、あのときはやっぱり弾き語りで歌っていた路上ライブのことや、3人と一緒に小さいライブハウスに出ていた頃の景色がブワーッと見えました。というのも、あの15周年のライブをやることへの戸惑いみたいなものがやっぱりすごく大きくて。

ーー感染者数がすごく増えた直後でしたからね。

藤田:関係者ひとりでも感染者が出たら中止となるかもしれない。代わりが利くメンバーじゃないし、お客さんのことも心配。15周年を祝って幸せな気持ちで歌いたいけど、果たしてそれでいいのかという葛藤みたいなものも大きかった。だから、「恋に落ちて」にたどり着いたとき、このメンバーでできていることも奇跡だし、コンサート自体ができたことすら奇跡だなと、なんかすごく胸にくるものがあったんです。

ーーギリギリの状態で迎えた貴重な1日だったんですね。アンコールのラストでは「あなたは幸せになる」をアカペラで響かせる場面もありました。オーチャードホールに響く生声、いかがでしたか?

藤田:「あなたは幸せになる」の最後をアカペラでというのは、今までもいろんなところでやってきているので、逆にいつも通りというか、ただ夢中で、来てくれた人たちの幸せを願いながら歌っていたと思います。

ーーなるほど。藤田さんご自身として印象深いシーンは?

藤田:「Overture」です。

ーー序曲として11曲が詰め込まれていました。

藤田:清香にアレンジしてもらったんですけど、私自身のこだわりが強くて、もっとこうしてほしいああしてほしいと散々やり取りして作ったので、感慨深かったです。もともと私はディズニー映画のアラン・メンケンの音楽が大好きなので、そういう世界観を自分のコンサートでも感じてほしいと思っているんですね。私と同じように感じてほしいわけではなくて、なんかよくわからないけど素敵だなと思ってもらえたらなと。

ーーそれもまた藤田さんの原点ですもんね。

藤田:はい。「Overture」が出来上がってリハで最初に聴いたとき、本当にワクワクしました。本番では、その間私はステージ袖のカーテンのところにいたんですけど、聴いている数分間、すごく幸せな気持ちでした。それが、こうやって映像作品として残せたということが嬉しいんです。

ーーご自身で過去の映像作品を観たりすることもありますか?

藤田:気まぐれに家で観たりします。そして観るたびに、こうやって残っているって宝物だなと思うんですよね。めちゃくちゃ大変だったとか、精神的にキツかったと思っていたライブでも、私自身がすごく幸せそうに歌っている。つまり、裏で自分がどんな気持ちで過ごそうが、1回1回、そのときの最高のものを精一杯残そうとしてきたんだなと。そう思えることがまた自分の自信に繋がっていく気がします。今回は特に、コロナ禍での15周年ということで思いも強かったので、残せた喜びは大きいです。

ーーパンフレットに Ikomanさんの短くも深いコメントが掲載されていることも、レアですよね。

藤田:一緒にやり始めたのが2011年なので、もう10年ほど関わってくれています。すごく大きな存在です。特に最初の頃は、めちゃくちゃお尻を叩かれました。Ikomanさんがいたから、メジャーデビューできたのかなと思います。

ーーというと?

藤田:Ikomanさんと出会った頃、私はすでにインディーズでの活動が長かったから、ちょっと諦めのなかにいたというか。メジャーに行きたい気持ちはあったけど、「このままやるしかないのかな」と思っていて、出口が見えなかったんですね。野心はあって、自分のやりたいことを口に出すことはできるけど、100%自信満々に「自分は天才だから」みたいなことを言うタイプでもない。諦めるところは諦めてやっているような感じだったんですけど、Ikomanさんは、「そんなところで満足してるの? もっとたくさんの人の前で歌っているのが見えるのに」と言ってくれて。

ーー苦難の時代?

藤田:そうですね。インディーズのときは本当に苦しかったです。人数も少ないなかで結構大きなことをやっていたので、スタッフに大きな負担をかけていた。それがわかるので見るのがツラいんですよ。でも、Ikomanさんは、そういう限られた状況のなかでも、アイデアを出して諦めずにやっていれば、絶対に奇跡を起こせるということを本当に見せてくれたというか、一緒に歩んでくれたんです。それで、諦めかけていたメジャーデビューもできたし、思い描いてもいなかった会場でも歌えるようになった。厳しいIkomanさんがいなかったら、そこまでの力は出せなかったんじゃないかなと思います。ケンカもいっぱいしましたけど(笑)。

ーー15周年のいいまとめができましたね。これが20周年に向けてのハズみになりそうですか?

藤田:ちょっと気持ちが軽くなりました。まだ明確に思っているわけじゃないんですけど、何か新しいことに挑戦してもいいのかな、みたいな感じにはなっています。なんか、令和になって本当に時代が変わったなと感じているんですね。そういうなかで、自分はこれからどんな歌を作っていけばいいんだろうと考えることが多くなりました。

ーー藤田さんがこれからどういうテーマを見つけていくのか、女性としても興味津々です。

藤田:20周年までに40代を迎えるんです。それでいきなり何かが変わるわけではないと思うんですけど、すべてを恋の歌で揃えるのもなんとなく違うと思うし、かといって、いきなり方向転換するっていうのも違うと思うし(笑)。

ーー少しゆっくりと時間を使ってくださいね。

藤田:はい。未知の世界をまた少しずつイメージしてみようと思います。

■映像作品詳細
『藤田麻衣子 15th Anniversary Special Live』
2022年3月23日(水)発売
◆初回限定盤:9,900円(税込)
Blu-ray+2CD(Blu-ray収録のライブ音源20曲入り)+オリジナルパンフレット
三方背スリーブケース仕様
◆通常盤:6,600円(税込)、Blu-rayのみ
<収録曲>
1 Overture
2 ねぇ
3 高鳴る
4 今でもあなたが
5 瞬間
6 運命の人
7 君が手を伸ばす先に
8 宝物
9 金魚すくい
10 anniversary
11 素敵なことがあなたを待っている
12 カーテン
13 ベイブリッジ
14 1%
15 in fact
16 きみのあした
17 共犯者
18 恋に落ちて
En-1 君に会いたくなる夜は
En-2 あなたは幸せになる

オフィシャルサイト

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