高橋幸宏が後世に与えた多大な影響 高野寛が証言する、70年代から現代に至るイノベーターとしての真価
“普通”を排除するシビアな審美眼
高野：そうですね。それをさらにわかりやすくしたのが、YMOの『浮気なぼくら』だったのかもしれない。やっぱり『テクノデリック』と『浮気なぼくら』の橋渡しみたいなところも随所にあって。だから、すごく聴きやすいけど、一筋縄ではいかないようなアレンジばっかりですよね。
――先見性についてはどうでしょうか。今はみんな普通にやっているけど、実は幸宏さんが始めた、というようなことはありますか？
高野：それはやっぱり、クリック（ガイド音）に合わせてドラムを叩くというのを完璧にこなした最初の人ということですね。今はコンピュータの演奏に合わせてバンドが演奏するというのがごく当たり前で、そっちの方が主流になってるけど。人間のグルーヴって本来揺れるものだったんですね。それを、幸宏さんは機械に戦いを挑むかのように正確なテンポで叩いた。しかも幸宏さん、決してジャストのタイミングじゃなくて、常にビートのほんの少し前に行くんですよ。だから、アグレッシブだしグルーヴィーなんだけど、スクエアで、唯一無二のタイム感なんですよね。
――高野さんが幸宏さんから学んだことで、最も大きなことは何ですか？
高野：表現の厳しさかな。ある程度スキルが身に付いてくると、誰もが手癖で音楽を作れちゃうところがあるんですね。だけど、幸宏さんはありきたりの表現をいつも疑ってかかる。特に、YMOの3人が集まった時が顕著なんですけど、中途半端な表現や妥協を許さないという雰囲気が、無言の空間の中でもビシビシ伝わってくるんですよ。普通の楽曲だったら、コードネームのギターを刻んでいればアレンジは成立するんだけど、YMOでそれをやっても誰も評価してくれないのが、やる前からわかるというか。「お前はこの曲に対してどういう解釈をするのか」、そういうことをまず問いかけられるようなムードがあって。その厳しさの向こう側に、新しいものが生まれてくるのかなと感じますね。
――そのマインドは高野さんの中にも受け継がれているんですね。
高野：90年代半ばくらいから、2000年代前半くらいまでは共演する機会があまりなかったんですけど、その後久しぶりにお会いして一緒にやると、やっぱり、そういう忘れかけていたマインドがよみがえってきて。和気あいあいとやってはいるんだけど、チョイスがものすごく徹底しているというか、普通だとつまらないから、普通のやり方を排除するーーそこから独自の世界観とアートとしての作品が生まれてくるわけです。一緒にやっていて、本当にそこが刺激になりますね。そしてそれは、自分の中に楔のように打ち込まれているマインドで、抜こうとしても抜けないんです。それがなかったら、もしかしたら人生は楽なんですけどね（笑）。
――そもそも音楽は「音が楽しい」と書くぐらいですから、楽しさだけをとことん追求しても良さそうなものなのに、幸宏さんや高野さんみたいに挑戦をし続けて、常に新しさを更新していくというのは、しんどいことでもありますね。
高野：でも結局、そのしんどさを乗り越えた先に見えるものが自分にとって一番嬉しいものなので、そこを乗り越えなきゃいけないというのは、もうわかっているんですよ。そこで、ルーティンワークになってしまうと、魂が躍らないというか。いつも戦っている先輩方の背中を見てきたので、自分もそこは、ずっと影響を受けていますね。
――幸宏さんはしばらく療養なさっていますけど、お元気になったら一緒にやってみたいことはありますか？
高野：pupaはやりたいね、とメンバー同士の間でも時々話に出ています。幸宏さんが復帰して、最初にやるのはpupaが合っているような気がするんですよね。割とリラックスしてできる音楽というか。あとはファンの皆さんもそうだと思うんだけど、ライブでドラムを叩いている姿を見たいですよね。
※1：https://realsound.jp/2021/10/post-892154.html
■リリース情報
＜ユキヒロ×幸宏 EARLY 80s＞第2弾
2022年3月9日発売
発売元：ソニー・ミュージックダイレクト
高橋幸宏『WHAT, ME WORRY?』
Original release: 1982.6.21
アルファレコード内に細野晴臣と立ち上げた“YENレーベル”からの初リリースとなった4thソロアルバム。細野晴臣、坂本龍一、大村憲司、佐藤博らの日本勢に加え、ビル・ネルソン（元ビー・バップ・デラックス）、ザイン・グリフ、トニー・マンスフィールド（ニュー・ミュージック）らの海外ゲストが参加。T10はジョージ・ハリスン作曲のビートルズ・ナンバーのカヴァー。CD版はミニアルバム『ボク、大丈夫？』から3曲を追加収録。オリジナル盤はジャケットの文字色が2種類（赤・青）で同時発売されたが、今回の再発ではCD＝赤、LP＝青を採用。
SA-CD hybrid：￥3,300（税込）
1. ホワット、ミー・ウォーリー？／WHAT, ME WORRY?
2. きっとうまくいく／IT'S GONNA WORK OUT
3. サヨナラ／SAYONARA
4. ディス・ストレンジ・オブセッション／THIS STRANGE OBSESSION
5. 回想／FLASHBACK
6. 本当の君／THE REAL YOU
7. 使いすてハート／DISPOSABLE LOVE
8. マイ・ハイランド・ホーム・イン・タイランド／MY HIGHLAND HOME IN THAILAND
9. すぐそこにある／ALL YOU'VE GOT TO DO
10. すべて 素晴らしすぎる／IT'S ALL TOO MUCH
[Bonus Tracks]
11. 二人の陰に／FUTARI NO KAGE NI
12. 使いすてハート（日本語ヴァージョン）／DISPOSABLE LOVE (Japanese Version)
13. 白銀は招くよ／ICH BIN DER GLÜCKLICHSTE MENSCH AUF DER WELT
30cm 33 1/3rpm Vinyl：¥4,070（税込）
※完全生産限定盤
SIDE 1
1. ホワット、ミー・ウォーリー？／WHAT, ME WORRY?
2. きっとうまくいく／IT'S GONNA WORK OUT
3. サヨナラ／SAYONARA
4. ディス・ストレンジ・オブセッション／THIS STRANGE OBSESSION
5. 回想／FLASHBACK
SIDE 2
1. 本当の君／THE REAL YOU
2. 使いすてハート／DISPOSABLE LOVE
3. マイ・ハイランド・ホーム・イン・タイランド／MY HIGHLAND HOME IN THAILAND
4. すぐそこにある／ALL YOU'VE GOT TO DO
5. すべて 素晴らしすぎる／IT'S ALL TOO MUCH
※ハイレゾ含む全曲配信同時開始
高橋幸宏『薔薇色の明日』
TOMORROWS JUST ANOTHER DAY
Original release: 1983.8.24
“YENレーベル”からの第2作となった5thソロアルバム。ビル・ネルソン、ピエール・バルーといった海外ゲストを迎えているが、全曲日本録音、約半数の曲が日本語歌唱で、ヴォーカリストとしての存在感を強く打ち出した今作はチャート11位とソロ最高位を記録した。T10はハル・デヴィッド＝バート・バカラック1969年の作品（オリジナル歌唱：ディオンヌ・ワーウィック）のカヴァー。CD版はボーナストラック3曲収録。
SA-CD hybrid：¥3,300（税込）
1. RIPPLE
2. MY BRIGHT TOMORROW
3. 蜉蝣／KAGEROU
4. ６月の天使／ROKUGATSU NO TENSHI
5. 前兆／MAEBURE
6. 偶然／COINCIDENCE
7. THIS ISLAND EARTH
8. ARE YOU RECEIVING ME? (Remix)
9. GOOD TIME
10. THE APRIL FOOLS
[Bonus Tracks]
11. ARE YOU RECEIVING ME? (Single Version)
12. AND I BELIEVE IN YOU
13. ANOTHER DOOR
30cm 33 1/3rpm Vinyl：¥4,070（税込）
※完全生産限定盤
SIDE 1
1. RIPPLE
2. MY BRIGHT TOMORROW
3. 蜉蝣／KAGEROU
4. ６月の天使／ROKUGATSU NO TENSHI
5. 前兆／MAEBURE
SIDE 2
1. 偶然／COINCIDENCE
2. THIS ISLAND EARTH
3. ARE YOU RECEIVING ME? (Remix)
4. GOOD TIME
5. THE APRIL FOOLS
※ハイレゾ含む全曲配信同時開始
ユキヒロ×幸宏 EARLY 80s ソニーミュージック特設サイト
https://www.110107.com/YTearly80s
高橋幸宏 最新コンピレーション『GRAND ESPOIR』 ソニーミュージック特設サイト
https://www.110107.com/YT2021
![【Amazon.co.jp限定】WHAT, ME WORRY? (アナログ盤) (メガジャケ付) [Analog]の商品画像](https://m.media-amazon.com/images/I/41YyKgHEmpL._SL500_.jpg)
