羽多野渉、内田雄馬、古川慎……それぞれの持ち味と豊かな表現生かす、男性声優の注目作

 男性声優のニューシングルが続々とリリースされた2月。それぞれの作品で各々の声質やキャラクターにマッチした楽曲が生まれた。

 2021年12月にアーティスト活動10周年を迎えた羽多野渉は、通算12枚目のシングル『ナニイロ』をリリース。表題曲が自身も出演しているアニメ『オリエント』(テレビ東京系)のエンディングテーマでもある本作は、 1stシングル『はじまりの日に』などでタッグを組んだ山下洋介による作詞作曲で作られた。

 「ナニイロ」は、軽やかなキーボードが印象的なイントロからはじまり、ストリングスが彩りを加え、羽多野のボーカルが弾むように言葉を紡ぐ。明るい表情が見えるような声色は、声優だからこそできる表現でもあるだろう。前向きに奏でられる本曲は、鬼退治の旅を続けるアニメの内容にもマッチしている一方、〈諦めちゃ有限 諦めなきゃ無限〉など聴き手をはっとさせる歌詞も散りばめられている。ハスキーな歌声で滑らかに盛り上がるサビの〈君はナニイロ 僕はナニイロ〉というフレーズは、羽多野が掲げる声優としての目標「できるだけ幅広いキャラクターを演じたい」にも繋がっているように思える。アニメにも羽多野自身の活動にもリンクした、希望的な楽曲だ。

羽多野渉 / 「ナニイロ」Music Video

 カップリングの「雨空の先は」は「ナニイロ」とは雰囲気を大きく変えた、しっとりと落ち着いた楽曲。都会的な洗練された曲調に、雨音や〈シトシト〉といった雨を表現した歌詞がぴったりとマッチし、羽多野の深みのある声とともに湿った雰囲気を演出する。抑揚がありながらもどこか呟くような歌い方は、細かいニュアンスを聴かせると言った様子で、歌唱力が光る。〈「必ずいつか晴れる」 希望に託さないで ずぶ濡れだって走ろう〉など実はポジティブな詞なのだが、自身も雨男だという羽多野が雨天を受け入れ肯定する楽曲でもある。楽曲の景色を作りこみながら、羽多野自身ともリンクした2曲が揃った。

 内田雄馬は9thシングル『Good mood』をリリース。ノンタイアップということもあり、自身のやりたいことにフォーカスして作られたという表題曲「Good mood」は、ピアノが印象的なミディアムバラードだ。ピアノとボーカルのみで展開される1コーラス目は、ただ内田の美しい歌声に惹きこまれていく。2コーラス目からはストリングスやビートが加わり景色を変えながら展開していくが、終始シンプルな曲調は内田のボーカルの魅力を存分に引き出していく。Aメロは低い歌声が柔らかさを持ち合わせており、力強くなるサビでは切なさが滲み出る。透明感のあるファルセットは叶わぬ恋を歌う歌詞の儚さをさらに強調しているように感じた。ピアノと紡ぐ前半は滑らかな歌唱が美しく、ビートが加わってからは歌唱もリズミカルに変化。これまでも内田の楽曲の作詞を数多く手がけているShogoによる韻を踏んだ詞はゆるやかなテンポの楽曲にグルーヴを生み出し、単に落ち着いた曲調にとどまらない、しっかりと聴きごたえを感じられるナンバーである。

内田雄馬「Good mood」MUSIC VIDEO

 カップリングの「Angel」は、ベースとクラップがノリを牽引する華やかな楽曲。ポップなリズムで紡がれるボーカルは、恋の始まりを思わせるような心躍る明るさがある一方、時折登場するビブラートを効かせる部分では大人の艶やかさも感じられる。〈心のど真ん中を撃ち抜いて〉〈ありのままの姿の君は 世界中の何よりも綺麗だよ〉といったストレートな歌詞は、恋の曖昧な瞬間を切り取った「Good mood」とは真逆のシチュエーションにある。それぞれ恋愛の切なさや幸福感を写し取った2曲は、内田の新たな魅力を引き立て合っている。

内田雄馬「Angel」Easy Listening Clip

 そしてもう1つのカップリング「your words」は、内田の歌唱力が発揮された圧巻のバラード。内田の持ち味でもある澄んだファルセットと包み込むような歌声が存分に味わえる楽曲だ。繊細な歌声でぐっと引き込み、終盤にかけて壮大に展開していく。前述した2曲は恋愛を描いていたが、「your words」は恋愛を超えた愛情を歌う。そのスケールの大きさが歌唱にも表れている楽曲だ。どの曲も内田の声色にフィットした、優しいラブソングとなっている。

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