TRIGGERは“アイドルの中のアイドル”で在り続ける 『VARIANT』で描かれた、3人の変化と強さの歴史
6月23日にリリースされたTRIGGERの新作アルバム『VARIANT』。「変化」の意味を持つ言葉を冠したこのアルバムは、正しくTRIGGERの変化していく姿を描いた作品となった。
インストの「The dawn ~Sword of VARIANT~」に続くのは、アルバムタイトルと1文字違いの「VALIANT」。作編曲は、国内外問わず様々なアーティストとのコラボやプロデュースを行うTeddyLoidと、初期のボーカロイドシーンを席巻し、確固たる地位を築いたサウンドクリエイターのGigaが手がけている。ReolやAdoの「踊」でも組んできた2人によるらしさ全開の、存在感のあるトラックやEDM調のサウンドは、「今までのTRIGGERにはない」というだけでなく、「今までのTRIGGERらしさ」からも解き放たれたような曲に仕上がっている。「変化」のアルバムにおいて、まずこの曲を序盤に持ってきていることに強いメッセージを感じる。
「Treasure!」はホーンセクションやベースのスラップなど、とにかく賑やかで勢いのあるサウンドでありながら、歌詞には〈闇に魘(うな)され 雨にずぶ濡れたって/悪くはないさ/男の美学とは強さの歴史〉など、泥臭いほどストレートな熱さが滲む。クールなイメージを纏った今までのTRIGGERであれば、決して歌われることはなかったであろう曲だ。だが、この情熱は新たに生まれたものではなく、これまでもずっと3人の内で燃えていたものなのだろう。そう確信させるほど、力強く楽しげな3人の歌声が曲にハマっている。
続く「Crescent rise」は、『三日月狼』をリメイクしたミュージカル『クレセント・ウルフ』の主題歌。同ミュージカルは八乙女楽(CV:羽多野渉)、九条天(CV:斉藤壮馬)、十龍之介(CV:佐藤拓也)がオーディションで主要人物の役を勝ち取った作品でもある。印象的なギターのリフレインから始まり、サビで一気に加速するヒリヒリ感が、八乙女演じる月舘信八郎の極限の生き様をよく表している。
MVの制作をアニメーションスタジオのTRIGGERが手がけたことから、「TRIGGER×TRIGGERのコラボ」としても話題になった同楽曲。劇中、月舘が言う「俺たちにとってこれは、終わりではなく、終わりの始まりでもない。始まりの、終わりだ」というセリフは、TRIGGER自身にとっても非常に象徴的なセリフであるように感じられる。
一転して、「バラツユ」はラブバラード。〈君のすべてに 恋していると/夢でならば何度だって やさしい言葉を/ほかには何もいらないというのに/今日も朝が来て どうして君は泣いてる〉と後悔を抱え、夢にすがる姿を綴った甘やかで切ない曲だ。ここでも際立つのは、今までのTRIGGERならば見せなかった弱さや繊細さ。パーフェクトであり続けた彼らが垣間見せた、人間らしい「素」の姿だ。