ONE OK ROCK Takaの歌声はなぜ極上なのか? 専門家に聞く、音域のバランスやリズム感に秀でた歌唱
破格のスケールを持つロックバンドとして、日本のみならず海外でも活躍を見せるONE OK ROCK。音楽性を変化させながらもロックのダイナミズムを体現し続けるバンドの核にあるのは、やはりボーカリスト・Takaの歌声だろう。その評価は日を追うごとに高まっており、昨今ではロックに限らない、様々なジャンルのアーティストの楽曲にゲスト参加している。なぜTakaの歌声はこれほどまでに胸に響き、才能豊かなアーティストまでも虜にするのだろうか。作詞・作曲・編曲家/ボイストレーナーであり、アーティストへの歌唱指導も行っているミニー・P氏に、Takaの歌声の魅力について聞いた。
どんな高さでも歌の迫力を維持できる理由
「まず、音域が非常に広いですよね。女性ボーカルくらいの高さまで難なく出せて、しかも苦しそうじゃない。声質の柔らかさを保ったまま、あの高さまで出せるっていうのがやっぱり他にいないと思います。声のスケールや大きさ、抜けの良さも素晴らしいです」
Takaが持つ“声の良さ”とは、幅広い音を難なく出せてしまうレンジの広さに起因しているのだとまず語った。さらにTakaの歌声が極上である理由について、ミニー・P氏はこう続ける。
「高音・中音・低音の周波数が、きめ細やかなシルクのように綺麗なグラデーションで歌の中に入っていて。ものすごく粒の揃った美しいバランスの声なんですね。高音の周波数しか出ていないと、高いパートを歌うと声が細くなってしまうんですけど、中音も低音も一緒に出ると、強い響きの歌になるんです。それをやってのけているのがTakaさんですね。
例えば、キーが高いパートなのに、聴いているとあまり高く感じないことってあるじゃないですか。それは歌声に、高音・中音・低音の周波数がバランスよく入っているからなんです。Takaさんはどの音でも綺麗に出るし、高音・中音・低音の間を自由に行ったり来たりしながら、音を抜くこともできる。こういう歌い方ができるシンガーは、少なくとも日本のアーティストでは見たことがなかったです」
声の高さのバランスをコントロールする絶妙な塩梅は、ボーカリストとしての天性の才とも言えるだろう。そこには、非常に細かいリズムへの感性も備わっているというのだ。
「高い声を出す時って、下から徐々にスライドしていって高音に到達することが多いんですけど、Takaさんはそういうスライドをほとんどなしで、ストレート・トゥ・ザ・ポイントに高音を出せるんですね。機械的と言っていいほどの正確さで、聴いた時の抜けの良さにも繋がっています。しかもそれはリズム感も良くないとできないんです。シンガーって基本的にリズムを取りながら歌っていて、普通だったら16ビートくらいの細かさでリズムを取るんですけど、Takaさんは聴こえないリズムも感じながら、さらに倍の32ビートくらいの非常に細かいリズムで歌っているんですね。ライブ映像とかを観ていると、細かく手を振動させて歌っている時があるのでよくわかります」
清水翔太や絢香との共演で発揮されるオリジナリティ
そんなTakaは近年、様々なアーティストの楽曲に客演参加しており、その特別な歌声が幅広い場所で求められている。声質や歌い方も異なるシンガー同士でコラボすることで、どのような化学反応が生まれているのだろうか。まずは、清水翔太「Curtain Call feat.Taka」について。
「清水翔太さんはR&Bの影響を受けているシンガーなので、例えば1番の最初のところは、一定のハネるリズムをキープしながら歌っているんですね。でも2番のはじめのところでは、Takaさんの歌があまりハネていない8ビートのロック的なリズムから、ハネるリズムに移っていくので、R&Bシンガーの曲に対しても自分のリズムで挑んでいて、しかもちゃんとハマっているのがすごいなと思いました。私はもともとR&Bのプロデュースをやっていたので、『ここでこういう風にハネるんだろうな』と思いながら聴いてしまうんですけど、Takaさんの歌には逆にそういう固定概念がないので、こういうアプローチがあるんだと勉強になりましたね」
続いての選曲は、絢香「Victim of Love feat. Taka」。この曲においてもTakaは自身のオリジナリティを発揮しながら、特異なコントラストを生み出しているという。
「A〜Bメロでは、日本的でメロディアスなボーカルアプローチなんですけど、次第にエッジボイスを使ったり、下からしゃくるように歌ったりとか、ものすごくたくさんの技を駆使しながら歌っているな……と思っていたら、抜けのいいサビがバーンと来る。日本的な歌と海外っぽさがちょうどよくブレンドされていて、それがお洒落に聴こえるんだと思います。この曲では絢香さんがR&B的なアプローチを取って、細かいリズムの上でブレッシーな声で歌っているんですけど、Takaさんは力強さに繊細さを加えたような歌い方になっていて、そのコントラストもすごく良かったです」