ONE OK ROCK Takaの歌声はなぜ極上なのか? 専門家に聞く、音域のバランスやリズム感に秀でた歌唱

海外のプロデューサーからも評価される特別な歌声

 続いては、Takaが英語詞で客演しているKOHH「I Want a Billion feat. Taka(ONE OK ROCK)」について。時折“日本人離れしている”とも言われるTakaの歌声だが、その理由は単なる上手さや発音の綺麗さだけではないようだ。

「Takaさんが英語を歌っている間は完全に洋楽に聴こえるんですよね。それは先ほども少し触れた、細かいリズムの取り方に関係していて。シンガーは通常、語尾の響かせ方を意識するとは思うんですけど、Takaさんは語尾でも細かいリズムを刻んでいるので、グルーヴを感じさせるんです。伸ばしている間さえも抜けが良かったり、エッジボイスを入れていたりとか、かなり洋楽的なアプローチを駆使していて、その感覚が天才的だなと。語尾の印象をパッと変えるだけでも、相当難しいことをやっていると思うんですよ。

 なぜそういう歌い方が洋楽的かというと、日本には昔から小唄や詩吟、演歌といった音楽がありますけど、どれもメロディの美しさを重視するので、リズムのノリを厳密に意識する土壌があまりなかったと思うんです。最近のシンガーの方々はリズムを重視していて、例えばYOASOBIもあれだけ機械的なリズムを人の声で歌うって難しいと思うんです。それとTakaさんの歌のすごさはまた違いますが、あれだけ正確な音程をピンポイントで出せることと、どんな時でもリズムの均等さを意識できるシンガーは他にいないと思います」

KOHH - I Want a Billion feat. Taka (360 Degree)

 また、ミニー・P氏が作曲家として海外に赴いていた数年前、現地の様々なプロデューサーたちの口から、優れたボーカリストの1人としてTakaの名前をよく聞いていたという。

「2016年頃、作曲家としてカリフォルニアに行って、ジャスティン・ビーバーやクリスティーナ・アギレラ、マライア・キャリーをプロデュースした人たちとコラボしたことがあるのですが、当時はちょうどアメリカのポップスからメロディが消えかけていた頃で、今に繋がるリズムと歌詞の時代になりかけていたんです。かつてはアメリカの音楽にも美しいメロディがあったので、アジアもヨーロッパも世界中の人たちがアメリカの音楽をフォローしていましたけど、メロディがなくなるとマニアックなリスナー以外には伝わりづらいじゃないですか。だから日本の若い世代がアメリカの音楽から離れていって、ここ数年はヨーロッパなどでも、各地域が持つ独自の音楽に回帰していったところがある気がするんです。その中でも日本には美しいメロディがあって、そこで注目されたのがONE OK ROCKだったと思います。日本的な素晴らしいメロディを持っていながら、リズム重視のアメリカのリスナーにもしっかり通用するボーカリストとして、Takaさんは海外からもリスペクトされていたんですよね。気鋭のプロデューサーたちの間でも『ONE OK ROCKはすごい!』って本当に言われていましたから。ここから海外でももっと伸びていくなと当時から感じていました」

 歌詞やメロディを聴かせる従来の日本のシンガーとは異なり、よりリズムを意識した歌い方で、評価と信頼をますます高めているTaka。ライブや新曲、そして客演などを通してその歌の魅力を研ぎ澄ませ、これからも音楽ファンを魅了し続けてくれることだろう。最後にミニー・P氏が、Takaの歌声が愛される理由についても教えてくれた。

「Takaさんはアルバムごとに表現が進化していて、初期の歌い方に比べるとどんどん洗練されています。ロックアーティストだけどいろんなジャンルを表現できて、繊細なのにものすごくスケールが大きい。まさにグレイテスト・エンターテイナーです。でも、一聴するだけで『やっぱりTakaさんだよね!』ってわかる個性もあるから、そこも愛される魅力なんだろうなと思います」

ONE OK ROCK: Renegades [OFFICIAL VIDEO]

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