KREVAがステージで見せたラッパーとしての確固たる実力 念願の有観客開催、ZORN迎えた『908 FESTIVAL 2021+1』
KREVAの主催する音楽の祭り『908 FESTIVAL 2021+1』が、2月17日・18日・19日の3日間に渡って開催され、初日の東京国際フォーラムホールA公演にはZORN、18日・19日の日本武道館公演にはそれぞれKICK THE CAN CREW、三浦大知がステージに立った。2012年より毎年開催されていた『908 FESTIVAL』だが、2020年は新型コロナウイルス感染拡大によりオンライン開催、2021年は爆発的な感染拡大により中止となっていた。念願の有観客で開催された『908 FESTIVAL 2021+1』から、ZORNを迎えた初日公演のレポートをお届けしたい。
パンデミックの影響から、2年連続で思うような開催ができなかった『908 FESTIVAL』。2年分の待ちきれぬ思いを受けるように定刻ちょうどに暗転し、KREVAのシルエットがステージに現れると、オーディエンスからは大きな拍手が起こった。「本当によく来てくれました。ありがとう」「感謝の気持ちを曲に乗せて余すところなく、みんなにぶつけたいと思います」と感謝の気持ちを何度も口にし、最新アルバム『LOOP END / LOOP START』収録の「Finally」へ。〈やっとあえたな…/あれから僕たちは何かを信じて 裏切られ〉の歌い出しは、KREVAからオーディエンスへの個人的なメッセージに聴こえるほど親密に響いた。そして、息をつく間もなくビートは続き、2曲目「クラフト feat. ZORN」では、初日のゲストアーティスト ZORNが登場。緻密なライミングが魅力の若手屈指のラッパーであり、計算され尽くしたKREVAのライミングと互角に渡り合うZORNのスキルは、まさに「クラフトマンシップ」の為せる技だ。
KREVAからZORNにマイクが引き継がれると、会場はたちまちZORNが放つ独特な緊張感に満たされた。「品のあるバラードから始めさせてください」というMCからスタートしたのは、予想外にもハードなヒップホップチューン「Rep」。真っ赤に照らされたZORNの鬼気迫る姿に思わず圧倒されてしまう。緊張感を保ったまま、続く「Keep It Real」「Shinkoiwa」「Don’t Look Back」「Life Story」でも、等身大の自分をさらけ出し、地元を誇る姿勢を崩さず、都心のど真ん中・有楽町の東京国際フォーラムのステージであっても、あくまでいつものZORNがそこに立っていた。MCでは、KREVAとの関係を“新小岩と葛西で隣り合っている街の先輩後輩”であると説明。子供の頃からKREVAやKICK THE CAN CREWの曲をカラオケで歌っていたという。
MCの最後を「世の中にもいろいろ事情があるんと思うんですけど、僕にもいろいろ事情があるんです」という言葉で締めくくると、ZORNの幼少時代から現在に至るまでの心境をありのままさらけだした「家庭の事情」へ。成功と引き換えに失っていくものを題材にした「Lost」での印象的なリリック〈今が一番幸せかと聞いたら/My lifeの頃だと言った〉から「My Life」につながる演出もドラマチックで、名パンチライン〈洗濯物干すのもHip Hop〉では、オーディエンスが大きく湧き上がった。ほかにも仲間への思いをリリックにした「All My Homies」や、OZROSAURUSに客演した「Rewind」などを立て続けに披露。「最後はバンドでやらせてください」とKREBandを率いた「One Mic feat. KREVA」では、KREVAとマイクを分け合い、最後までZORNらしい一本筋の通ったパフォーマンスで締めくくった。