乃木坂46 星野みなみはグループらしさの一端を担ったメンバーだったーー有終の美を飾った“アイドル”ラストステージを観て

 エモーショナルさに満ちたブロックを経て、イベントもついに佳境に突入する。結果として星野にとって最後のフロント曲となった「全部 夢のまま」では、そういった事実以上に「みなみじゃなくて、与田ちゃんに注目して」とセンターの与田祐希を引き立て、「そんなバカな…」や「おいでシャンプー」では満面の笑みを振り撒き続ける。この優しさに満ちた空気こそ“乃木坂46らしさ”そのものであり、そんな空気作りの一端を担っていたのが星野であることを再確認できたパフォーマンスだった。

 アンコールでは薄紫のドレスを着用した星野がステージに立ち、「昨日も何話そうかなと悩んだんですけど、あんまり考えないで、そのとき思ったことを話そう」と今の心境を告げていく。彼女はまず「誕生日のときにケーキを買ってお祝いしてくれたり可愛い動画を作ってくれたり、乃木坂駅にポスターを貼ってくれたり、うちわを手作りで作ってきてくれて。ライブではペンライトとかタオルとかたくさん見られるのがすごく楽しみで。だからライブは乃木坂のお仕事の中で一番好きでしたし、最後(の活動)がライブでよかったなって今日改めて思いました」とファンへの感謝を口にした。

 また、デビューシングルでフロントに選ばれた頃のことを「一緒にフロントに立っていた生駒ちゃんといくちゃんがすごすぎて。私は2人と一緒に並べる人じゃないのに、『なんで自分なんだろう?』と自信がなかった」と振り返りつつ、「その自信のなさがみんなに伝わって、選抜じゃなくなったときもあったんですけど、でもそこでファンの方が『どんな場所でも応援するよ』と言ってくれて。特別なものがなくても一人でも応援してくれている人がいるってすごい特技だな、こんなたくさんいる中で私を応援すると思わせられる自分すごいなと思えるようになって、そこからだんだん活動が楽しくなってきて。みんなが『可愛いよ』とか『応援してるよ』とかたくさん言ってくれるから、だんだん自信がついて、自分のことが好きになりました」と再度感謝を伝える。

 さらに彼女は「真夏はすぐに人を受け入れてくれる優しい人。乃木坂のために一生懸命で、ついていきたくなるキャプテンだな、支えたくなるキャプテンだなって本当に思います」、「飛鳥は一緒にシンメで活動することが多くて。最初は2人でやる曲を、自信を持ってできなかったけど、今日こうして最後にやれて本当によかった。特にスペインに一緒に行ったときに、たくさん本音で話し合えたのが楽しかった思い出。これからはお友達として仲良くしてください」、「ひなちま(樋口)は、私がちょっと暗い顔をしていると『大丈夫?』って抱きついてくれて。(樋口自身にとっては)さりげなく言った言葉かもしれないけど、それにすごく助けられて、こんなに温かい人がそばにいてくれたから頑張れました」、「まあやは楽屋でも隣でずっと楽しい話をしてくれたり、リフレッシュに外に連れ出してくれたり、私だけじゃなくてみんなのことも笑顔にする本当に素敵な子。いつも笑顔にしてくれてありがとう」と同期メンバーの秋元、齋藤、樋口、和田への思いを口にする。そして、最後に「本当に素敵なメンバーがたくさんいるので、皆さん乃木坂のメンバーことをよろしくお願いします!」と締めくくった。

 「自分にとって大切な思い出の曲を、みんなと一緒に歌いたいなと思います」という言葉に続いて披露されたのは、星野がアンダーメンバーとして初めてセンターに立った「初恋の人を今でも」。笑顔と涙が入り混じった表情のメンバーに囲まれる中、星野は最後まで堂々と歌いきった。

 最後の曲に入る前には、各期を代表して掛橋沙耶香が「4期生の私にも気さくに接してくださって、本当にありがとうございました」、向井が「何年か前に『私が選抜に入るまで待っていてください』って言ったら、みなみさんは『え、早くね!』と言ってくれて、それが私の心を救ってくれました。その夢は叶わなかったけど、今日2人で立てたステージはそれ以上に幸せな時間でした」、北野は「可愛いといえばみなみちゃんの右に出るものはいないことはみんなご存知ですが、強さや優しさでもみなみちゃんの右に出るものはいないなと私は思います」、樋口は「みなみはみんなに陰でいろいろ力をくれた。この人の味方でいたいなと思わせてくれる人でした。親友としてまた明日から始まると思うと、それが不思議ですけど楽しみです」と、それぞれ星野へ感謝の言葉を送る。そして、「ライブといえばこの曲がないとみなみはダメだなってぐらい楽しい曲」と称する「あらかじめ語られるロマンス」を最後に歌唱。〈星がいつもよりも美しい〉という最後のフレーズがまさにこの日のために用意されたのではと錯覚するほどの美しい笑顔で、“アイドル・星野みなみ”のラストステージは有終の美を飾った。

 涙混じりの笑顔で「10年間すごく楽しかったし、本当にやりきりました。皆さんとこうして会えたことが本当に楽しかったし、たくさんパワーをくれた人にいっぱい出会えて、本当に感謝しかないです。10年間本当にありがとうございました!」と挨拶をする星野に向けて、客席からは「10年間可愛い♡をありがとう」と記されたボードが掲げられる。そんな光景を前に、茶目っ気たっぷりに「またね」と言って星野はステージを去っていった。

 筆者とのインタビューで、星野は「個人としてこういう活動がしたいというよりも、乃木坂としての活動が楽しい」と何度も口にしていただけに、グループ卒業と同時に引退を選んだのは非常に彼女らしい選択だと感じている。そんな彼女の、今後の人生が輝かしいものになることを心から願っている。

■セットリスト
『乃木坂46星野みなみ 卒業セレモニー』
2022年2月12日(土)東京国際フォーラム ホールA
00. Overture
01. ぐるぐるカーテン
02. 指望遠鏡
03. 失いたくないから
04. シャキイズム
05. ロマンティックいか焼き
06. Am I Loving?
07. 無口なライオン
08. Threefold choice
09. 制服を脱いでサヨナラを…
10. 全部 夢のまま
11. そんなバカな…
12. おいでシャンプー
<アンコール>
13. 初恋の人を今でも
14. あらかじめ語られるロマンス

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