花譜、たなか(前職ぼくりり)との邂逅で開いた新たな扉 メールインタビューと共に紐解く「飛翔するmeme」

花譜、たなかとの邂逅で開いた新たな扉

 花譜が、3周年記念プロジェクト『組曲』第4弾として、たなか(前職ぼくのりりっくのぼうよみ)とのコラボ曲「飛翔するmeme」を1月19日にリリースした。花譜は、昨年10月27日に発表したGLIM SPANKYとのコラボ曲「鏡よ鏡」からはじまり、大森靖子とのコラボ曲「イマジナリーフレンド」、カンザキイオリ楽曲制作で佐倉綾音とコラボした「あさひ」といった楽曲を通して、ボーカリストとしての多彩な一面を開花。本稿では、たなかへのメールインタビューと共に「飛翔するmeme」の魅力を紐解いていきたい。

【組曲】花譜×たなか #95.5「飛翔するmeme」【オリジナルMV】

 コラボの前日譚ではないが、花譜は予てよりライブにてぼくのりりっくのぼうよみの楽曲「朝焼けと熱帯魚」をカバーしており、この『組曲』シリーズにおいて、たなかとコラボすることは自然な流れだったと言える。実はたなか自身も花譜の存在はコラボ前から認知していたようで、実際にライブにも足を運び、「魅力的すぎる声と表現力が素晴らしいなあと思っていました。ライブで見た『海に化ける』がすごくよくて、引き込まれました。あと、まったく異なる『朝焼け』がそこにあって、懐かしいようで新しく、楽しく聴かせていただきました!」と自身の曲がカバーされたこと、そして今回コラボをすることに喜びを感じていたという。

「花譜さんのCeVIO AI“可不”の広がり方がとても面白く、そこにインスパイアされたところがあります。そこから僕がFeatさせていただくということで、その重なりと、主役は圧倒的に花譜さんであることを念頭に置きつつ歌詞を考えていきました。歌声自体がひとつのミームとして多くの人に届いていくこと、“わたし”がどこにいたとしても、歌声は無限の遠くまで響いていくことをイメージしながら作っていきました。あくまでメインは花譜さんで、僕は添えられた左手くらいの感じです」

 “花譜のための楽曲”ということを念頭に置いて制作されたというだけあって、「飛翔するmeme」というタイトルそのものが、花譜という存在やインターネットによって伝播する彼女の歌声を端的に表している。また、叙情的なリリックにもバーチャルやインターネットをイメージするワードが散りばめられているのだが、どこかディストピア的な情景が広がりながらも、その中を花譜(の歌)という光がヒラヒラと彼方へ飛翔していくイメージが脳裏に浮かぶ。また、〈胡蝶の夢〉でリアルとデジタルを表現するワードセンスや、〈起動するシープ シープ シープ 夢をみてよ〉というSF好きが反応するような遊びの効いたフレーズなど、歌詞をテキストとして読みたくなるような仕掛けは聴いていて面白い。

 今作の制作には、ぼくりり時代からタッグを組んでいるケンカイヨシが作曲(たなかと共作)と編曲に参加(ちなみに、ケンカイヨシは花譜の「彷徨い(吐息Remix)」にもアレンジャーとして参加している)。たなか曰く、音の質感をシンプルに、音数を少なめにすることに重点をおいて制作したというが、小気味良く響く鍵盤とミニマルなビートの気持ち良さ、繰り返し聴きたくなるような中毒性がある。そして何より、“「朝焼けと熱帯魚」をカバーしている花譜”に提供した曲という文脈を考慮すると、この曲の中に“ぼくりりの幻影”のようなものを感じずにはいられない。当時からたなかを追い続けているファンにとっても、たまらない一曲になっているのではないかと想像してしまう。

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