三吉彩花、松井愛莉、佐藤日向、BABYMETALも輩出 成長期限定ユニット・さくら学院が走り切った11年4カ月の功績
世界から注目を集めるメタルダンスユニット・BABYMETAL、雑誌『Seventeen』(集英社)元専属モデルで女優の三吉彩花、結婚情報誌『ゼクシィ』(リクルート)のゼクシィ6代目CMガールで雑誌『Ray』(主婦の友社)元専属モデルの松井愛莉、そしてアニメ『ラブライブ!サンシャイン!!』の鹿角理亞役で人気を集める声優の佐藤日向など、数々の有名アーティスト及びタレントを輩出して来た、成長期限定ユニット・さくら学院。そんなさくら学院が11年4カ月の活動を経て、昨年8月に閉校(活動終了)した。今回はさくら学院がガールズユニットシーンにおいてどういった存在だったのか、振り返っていきたい。
ファンはまさに“父兄”のように見守る
さくら学院が結成されたのは2010年4月。AKB48が2009年10月リリースの「RIVER」で本格的なブレイクを果たしたことでアイドル市場が活性化。ももいろクローバー(現ももいろクローバーZ)、東京女子流、スマイレージ(現アンジュルム)など、数多くのアイドルグループが台頭し、のちに“アイドル戦国時代”と呼ばれるシーンの活況が始まった頃だった。
コンセプトは「成長期限定」。メンバーは中学生以下に限られ、中学卒業と同時にグループも卒業する、というシステム。かつ学校の設定で活動し、衣裳は基本的に学校制服をモチーフとしたもの。また、メンバーは「生徒」、派生ユニットは「部活動」、マネージャーは「職員室の先生」、ライブなどでMCをつとめる脚本家・タレントの森ハヤシは「担任の先生」、卒業式で祝辞を述べるなど学院の顔的存在の放送作家・倉本美津留は「校長」、ファンの総称は「父兄」と、活動にまつわるワードも学校由来のものに変換されていた。
『TOKYO IDOL FESTIVAL』などの外部ライブや、単独公演の『学院祭』、様々な分野のスペシャリストを講師として招き行われるイベント『公開授業』、そしてCDリリースやメディア出演など、グループは年間を通して活発に学校行事に沿った活動を展開していく。小中学生のメンバーはその度に成長し、中学を卒業すると同時にグループも卒業する。ファンはまさに“父兄”のような目線でメンバーを見守り、見送ることができた。さらに期間限定であることは、より一層アイドル特有の刹那的な楽しさや美しさを強調し、没入感を高めるシステムとして機能していた。
“触れることができない”という特異性
そうした独自のルール、システムの中で特に画期的だったのは、握手会などを一切行わず、「ファンと接触しないこと」だった。AKB以降のほとんどのアイドルグループはこの“接触”商法によってファンを獲得してきたため、さくら学院のこの方針はシーンにおいてより一層際立っていた。加えてこの“触れることができない”という特異性は、より強いアイドル性をグループに付与することに成功していた。また、目先の利益に縛られず、純粋に新人育成機関として維持できたのは、大手芸能プロダクション・アミューズだったからだろう。大手が運営しているからこそ、父兄はグループを継続して応援することに安心感を得ることができた。
さらに、BABYMETALを輩出したことからも分かるように、楽曲のクオリティが高いことも、グループの大きな魅力となっていた。部活動でいえば、重音部として始まったBABYMETALだけでなく、テクノポップ風路線の科学部「科学究明機構ロヂカ?」、渋谷系テイストなテニス部「Pastel Wind」、沖井礼二によるバトン部「Twinklestars」は、音楽好きなアイドルファンをも唸らせた存在だった。