NHKドラマ『岸辺露伴は動かない』も担当 菊地成孔、ギルド的集団 =「新音楽制作工房」立ち上げの狙い

菊地成孔、新音楽制作工房立ち上げの狙い

必ず、僕を超えるフェイムとプライズを手にする作家が現れる

菊地成孔(写真=藤本孝之)

ーー日本ではこれまでになかったスタイルですし、しばらくは説明が必要かもしれないですね。

菊地:確かに何だかわからないでしょうね、最初は。マンガやアニメでいうと「フジオ・プロ」(赤塚不二夫)みたいなことですが、新音楽制作工房の場合、“先生とアシスタント”ではなくて。「菊地さんに仕事を頼むと、お弟子さんが手伝う」ではなく、あくまでも並列の関係なんです。最終的な目的は、日本では明確にされていなかったギルド的な制作集団として確立させ、「メンバーに直接仕事を頼みたい」という状況を作ること。そのために彼らの作品をアップするカタログのサイトを制作しています。19名いますし、なかには100曲近いストックを持っているメンバーもいるので、かなりの量になりますね。聴いてもらえればわかると思いますが、あるものを片っ端から入れているわけではなくて、当然、すべてプロのクオリティに達しています。我が子かわいいじゃないですが、「生徒の曲だから良く聴こえてるんじゃないの?」と思われそうですけど(笑)、どう客観的に聴いてもすごいので。年齢は20代から50代までバラバラなんですが、全員が刺激し合って、さらにクオリティが上がっている。しかもヒップホップからポップスまで、オールジャンル。誰がトップだとかいう話ではなく、いろいろな個性と才能が集まっているし、彼らの能力を具体的なジョブとして成立させたいですね。

ーーなるほど。それにしてもなぜ、突然変異的に才能が集まったのでしょうか?

菊地:共時的というか、「時代がこう変わったので」という言い方もできるとは思いますが、実際は通時的、石の上にも三年みたいなことでしょうね(笑)。ペン大は約30年続けてきて、プロのサックス奏者や作曲家は数名しか輩出していなくて。一時的に在籍していて、その後、世に出た方はいるんですよ。今や劇伴の大家である岩崎太整さんは一時期ペン大にいたし、長谷川白紙さんは美学校で僕の講義を取っていたことがあって。ペン大の大学院については、機が熟したとしか言いようがないですね。時代性や機材の発達もあるんでしょうが、それだけでは思わずのけぞるような才能が集団で現れることはないので。

ーー新音楽制作工房を目指す、菊地さんと仕事したいと思うクリエイターもいそうですね。

菊地:いまのところ募集する気はないです(笑)。でも、新音楽制作工房が世に出たら、「これなら自分にもできる」と思う人が出てくるかもしれないので、どうなるかはわからないです。僕がやることは何でもそうなんですが、流れのなかで面白そうなことをやっているだけなので。要するに僕は、58歳というこの歳になって、「自分で何でもかんでも一人でやる」という欲は捨てました。日本のお弟子さんお師匠さん体質だと、お師匠さんが偉すぎる。それはそれで日本の文化だから尊重しますが、弟子(生徒)が、自分の才能と同等、あるいは超えた、という事実を受け入れるのは、クリエイターの自意識としてなかなかできない。でも僕は、全く抵抗ないです。未来は彼らのものだし、僕は独力でやれるだけのことはやりきりました。これからは集団制作の意義と素晴らしさを音楽側から伝えていきたいです。必ず、僕を超えるフェイムとプライズを手にする作家が現れます。

新音楽制作工房 YouTube

■放送情報
『岸辺露伴は動かない』
NHK総合にて放送
第4話「ザ・ラン」 12月27日(月)22:00~22:49
第5話「背中の正面」 12月28日(火)22:00~22:49
第6話「六壁坂」 12月29日(水)22:00~22:49
(第1~3話:2020年12月放送)
出演:高橋一生、飯豊まりえ
第4話ゲスト:笠松将
第5話ゲスト:市川猿之助
第6話ゲスト:内田理央
第4話:真凛、中村まこと、増田朋弥、小水たいが、濱正悟、春木生
第5話:栄信、渡辺翔
第6話:渡辺大知、中島歩、井上肇、白鳥玉季、吉田奏佑ほか
原作:荒木飛呂彦『岸辺露伴は動かない』
脚本:小林靖子
音楽:菊地成孔/新音楽制作工房
演出:渡辺一貴
人物デザイン監修:柘植伊佐夫
制作統括:鈴木貴靖、土橋圭介、平賀大介
制 作:NHK エンタープライズ
制作・著作:NHK、ピクス
(c)LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社
(c)NHK・PICS

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