EXILE、アルバムで辿る軌跡　第四章：表現の幅広さで“継承と進化”を印象づけた次世代の姿

　アルバムラストを飾る「悲しみの果てに…」で、作詞者のATSUSHIは〈出逢えたから 生きてゆける〉という言葉を綴っているが、EXILEというグループがさまざまな出逢いによって成り立っていることを、改めて示した作品と言えるだろう。だが、出逢いがあれば別れもある。長年、HIROと共にグループを牽引してきたオリジナルメンバーの松本利夫、ÜSA、MAKIDAIが2015年内でパフォーマンスを勇退すると発表したのは、アルバム『19 -Road to AMAZING WORLD-』をリリースした3カ月後のことだった。そして2015年12月27日・福岡ヤフオク!ドーム（当時）にて、アルバムを掲げて“19人”で駆け抜けた『EXILE LIVE TOUR 2015 "AMAZING WORLD"』が閉幕。新メンバーにとっては初のツアーだが、松本、ÜSA、MAKIDAIにとってはEXILEの一員として回る最後のツアーだった。「松本利夫は舞台を中心に演者としての活動の場を広げるべく、劇団EXILEで『松組』を立ち上げ、ÜSAはライフワークでもある『DANCE EARTH』でダンスが持つ可能性やすばらしさを世の中に伝え、MAKIDAIは新たな『PKCZ』という場で『DJ MAKIDAI』として、よりクリエイティブな活動も考えています」（※2）と、自らの背中でEXILEという生き方を伝えてくれた先輩達を見送るその裏で、AKIRAが次世代EXILEを牽引していく役割を引き継ぎ、『AMAZING WORLD』ツアーの打ち上げでHIROから背中を押されたことも明かしている（※3）。

　2016年、EXILEは15人の新体制でデビュー15周年を迎えると、デビュー記念日である9月27日に6thベストアルバム『EXTREME BEST』をリリースした。同作はデビュー曲「Your eyes only ～曖昧なぼくの輪郭～」（2001年9月27日）から、当時の最新シングル曲「Joy-ride ～歓喜のドライブ～」（2016年8月17日）までを収録したシングルコレクションのような作品となっており、EXILE激動の15年間を詰め込んだ、いわば“究極のベストアルバム”。その中には、今年、EXILEのデビュー20周年を記念したカバー企画『EXILE TRIBUTE』で、Jr.EXILEの4組がカバーした楽曲たちも多数収録されている。またDVD&Blu-rayには、第三章のパフォーマーたちのダンスをじっくり堪能できる『PERFORMER'S PRIDE』（41stシングル『EXILE PRIDE ～こんな世界を愛するため～』や10thアルバム『19 -Road to AMAZING WORLD-』にも収録）や、EXILE TRIBEメンバーや世界各国のダンサーが参加した『UNITED DANCE NATION in FUNK JUNGLE』も収録されており、メンバーたちのルーツやEXILE TRIBEの未来、世界との繋がりを感じられる貴重な映像に。HIROが総合プロデュースを務める映画『HiGH&LOW THE MOVIE』に登場したクラブ“FUNK JUNGLE”を舞台に、映画に出演しているメンバーたちが役柄とは違う表情でパフォーマンスしている様子も、この映像の面白いところだろう。

　2016年から活動拠点を海外に移していたATSUSHIが帰国すると、EXILEは2018年2月より、6カ月連続で毎月第一金曜日に新曲を配信する企画『EXILE FRIDAY』をスタートさせる。当時、AKIRAが「メンバーそれぞれが映像をプロデュースしたことも、今のEXILEを象徴しています。EXILEは全員がクリエイターですね」（※4）と語っていたように、そこで発表されたリリックビデオは全てメンバーたちがプロデュースしており、2018年7月25日に11thアルバム『STAR OF WISH』をリリースした際には、それらも全て収録された。新録曲は「Heads or Tails」と「浪漫の地球」の2曲。リードトラックの「Heads or Tails」は、「24karats GOLD SOUL」などを手がけたSTYが、3年ぶりの開催となる全国ドームツアー『EXILE LIVE TOUR 2018-2019 "STAR OF WISH"』に向けて書き下ろしたファイティングアンセム。ATSUSHIが書き下ろした「浪漫の地球」は美しくも哀愁を帯びたバラードで、DVD&Blu-rayには、2015年以降のEXILEを追ったドキュメンタリー映画『EXILE PRIDE』と融合した同曲のMVも収録されている。さらに、ダンストラック「STYLE of 24karats」のパフォーマンスMVは、「過去と未来、極限のパフォーマンス」をテーマにNAOTOがプロデュースを手がけ、アパレルブランド“24karats”とEXILEのダンス・演技を融合したアーティスティックかつ遊び心満載の作品に。ツアー前に世界も「今回のツアーは、きっとメンバー同士の化学反応が、すさまじく起きるツアーになると思います。一人ひとりの熱量が半端じゃなく高いので」（※5）と予告していたが、各グループや個人活動を経て、一段とパワーアップしたEXILEが帰ってきた。そんな未来への期待感を煽るアルバムとドームツアーになった。

※1：https://www.sanspo.com/article/20131231-7LNNSCZMX5LJ3AQI5K473Z5XSY/
※2：https://www.nikkansports.com/entertainment/news/1496114.html
※3〜5：https://realsound.jp/2018/07/post-225005.html

連載バックナンバー

・第一章＆第二章：デビューから受け継がれるエンタテインメントを追求する姿勢
・第三章：未来への願いを込めて、日本中に届けた力強いエンタテインメント