「コンサートホール」特別対談

清 竜人×筧昌也『スナック キズツキ』特別対談 ポップスとドラマ、時代を射抜く作品に求められること

社会や時代との整合性の中で作品を届けるということ

ーー『スナック キズツキ』と「コンサートホール」は理想的なコラボレーションだと思いますけど、清さんはタイアップの面白さをどんなところに感じていますか?

清:その面白さは年々増していますね。僕がこの仕事を始めたのは10代後半で、キャリアとしては14年くらいになるんですけど、最初の頃は作りたいものがたくさんあったなかで、使ってない引き出しもたくさんあったんですよ。作品を0から作り出すことが楽しかったし、やりがいも感じていたんですけど、キャリアを重ねるにつれて、外部からのアクションに対してアンサーする作り方も面白くなってきて。

ーー外からの刺激を求めていると。

清:そうですね。また次は0から自分で作るのが楽しくなったり、繰り返していくとは思うんですけど。ただ、自分だけでやっていると、どうしても似てくるんですよね。女子高生の前髪みたいなもので、自分ではすごく変えたつもりでも、傍から見たら何も変わってないっていう。

筧:はははは!

ーー(笑)。筧さんは自主映画からキャリアをスタートさせましたが、商業作品に関わるようになって、制作に対するスタンスは変化していますか。

筧:もちろん、変化はすごくありますね。「ライスワーク」と「ライフワーク」ってよく言うじゃないですか。ライスワークはごはんを食べるための仕事、わかりやすくいうと直近の仕事ですよね。ライフワークは10年とか20年、もしかすると一生かけてやる仕事。その2つを行ったり来たりしないと心が死んでしまう。もちろん前者として引き受けた作品にすごく刺激を受けることもあるし、一概には言えないんですけどね。いい出会いがあるかどうかなんて、やってみないとわからないので。ちなみに音楽の場合、1曲作るのにどれくらいかかるんですか?

清:曲によっても人によっても違いますけど、僕の場合は0から歌詞とメロディを作って、アレンジして、形になるまで1週間あれば、という感じですね。

筧:そんなに早いんですね! 僕らの場合は“相手ありき”なので、どうしても時間がかかるんです。俳優さんのスケジュールとか、ロケ場所やスタジオの都合もあるし。ドラマの場合だと最速でも3〜4カ月、映画は企画から数えると2年くらい前から準備しているので、その間にこちらのモチベーションが変わることもあるし、社会の状況も変化することもあって、そこは難しいところですね。僕は「何事も縁だ」と思ってとりあえず、何でも進めるようにしていますが。

清:その時間の流れはアルバムの制作に近いかもしれないですね。今まさにアルバムを作っているんですけど、コロナ禍もあって、1年以上かけてじっくり制作しながら配信で曲をリリースしているんです。その間にトレンドも変わっていくし、自分のモチベーションやブームも変化するんですが、アルバムは一貫性を持たせるように舵取りする必要があるんですよね。

ーーなるほど。社会の雰囲気や世相みたいなものも意識しますか。

筧:『スナック キズツキ』は寓話的というか、あえて“今”ではない作り方をしています。実は、時計やカレンダー、さらに住所など、特定の時代や場所がわかるものを意識して画面から外すようにしているんですよ。設定としてはたぶん3〜4月くらいで、原作だと東京が舞台のようなんですけど、「とある街」に設定し直しています。今は配信で観られることも増えたし、なるべく時代性や土地が出ないようにしたかったので。

ーー『スナック キズツキ』の店内も昭和の雰囲気ですからね。

筧:そうなんです。ちょっとレアな作り方かもしれないですね。テレビドラマは時代とシンクロさせたほうが観られやすいし、時代を映すほうがテレビらしいとも思うんですが、今回はあえてズラしているので。

ーー清さんは4月リリースの「Knockdown」以来、シンガーソングライターとしての原点回帰、ポップスに改めて向き合うことを掲げていますが、楽曲を制作する上で時代性と普遍性のバランスをどう取っていますか。

清:難しい課題ですが、ある程度トレンディである必要はあるのかなと思っています。「コンサートホール」の歌詞に〈スワイプ〉という言葉があるんですけど、そういう時代を表わすような表現は、これまではできるだけ使わないようにしてたんです。音楽は一生残るものだし、将来振り返ったときに「あれはよくなかったな」と思いたくないので。そういう考えは今もあるんですが、「現代の人は現代の音楽を聴いている」という事実もあるし、例えばサブスクリプションで聴かれているランキングを見ると、ほとんどが20代のアーティストなんです。もちろん大御所アーティストの曲がランクインすることもありますが、今の若い人が新しい音楽を聴いている現状は無視できないし、そこは自分も意識したいと思っていて。今作っているアルバムは、特にそうですね。

筧:なるほど。僕の場合、もちろん「全世代に観てもらいたい」という気持ちはありますけど、ドラマで仮想ターゲットにしているのは、中学2年生の男子なんですよ。

ーー思春期の男の子に観てほしいと。

筧:それくらいの年齢の子がマセた気分で観たときに「面白い!」と思ってもらえる作品を作りたくて。清さんもそうだと思いますけど、若い人に届けたいじゃないですか。

清:うん、そうですね。

筧:彼らに「イケてる」と言われないと終わりというか。ドラマ全体の視聴者層を見ると、「女性や年配の方をターゲットに」と言われる業界ではありますが、自分の理想も忘れないでいたいなと思います。

清 竜人「コンサートホール」

■リリース情報
清 竜人「コンサートホール」
配信中 DL/ストリーミングはこちら

■配信ライブ情報
テレビ東京系ドラマ24『スナック キズツキ』最終話直前無料配信ライブ
『清 竜人 Special Acoustic Live in スナック キズツキ』
 配信日時:2021年12月18日(土)21:00
アーカイブ:2021年12月24日(金)24:00まで
配信チャンネル:https://youtu.be/sfA2TN1h2aQ

清 竜人 オフィシャルサイト

■ドラマ情報
ドラマ24『スナック キズツキ』(テレビ東京系)
第11話:12月17日(金)24:52~放送開始
最終話:12月24日(金)24:27~放送開始

出演:原田知世、成海璃子、平岩紙、塚地武雅、小関裕太、徳永えり、西田尚美、丘みつ子、堀内敬子、吉柳咲良、八嶋智人、浜野謙太
原作:益田ミリ著『スナック キズツキ』(マガジンハウス刊)
監督:筧昌也、湯浅弘章
脚本:佐藤久美子、今西祐子
チーフプロデューサー:阿部真士(テレビ東京)
プロデューサー:濱谷晃一(テレビ東京)、井上竜太(ホリプロ)、奥村麻美子(ホリプロ)
制作:テレビ東京・ホリプロ
製作著作:『スナック キズツキ』製作委員会
(c)『スナック キズツキ』製作委員会

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