EXILE、アルバムで辿る軌跡 第三章:未来への願いを込めて、日本中に届けた力強いエンタテインメント

『願いの塔』

 10周年のアニバーサリーイヤーにリリースされた8thアルバム『願いの塔』(2011年3月9日)は、2010年5月19日に『EXILE DIGITAL FANTASY PROJECT』の一環として配信した「願い」(ATSUSHIソロ曲)をきっかけにして、運命に導かれるように完成した1枚である。そのため、〈幸せを願う事こそが愛〉と歌う「I Wish For You」や、〈僕の願いの砂〉というフレーズが印象的な「掌の砂」、ハイチ地震復興支援チャリティソングとして制作された「One Wish」など、さまざまな“願い”を込めた楽曲が収録されており、前作『愛すべき未来へ』の際は加入直後で周りが見えていなかったというTETSUYAも、全員が心を1つにして制作した「軸のしっかりとしたブレていないアルバム」(※6)だと語っている。また、初回限定盤付属のカバーアルバム『EXILE COVER』でボーカル4人のルーツとなる楽曲を届けたことも、今作のポイント。それまではATSUSHIとTAKAHIROのツインボーカルがフィーチャーされることが多く、SHOKICHIとNESMITHはボーカルでありながらパフォーマンスに徹する機会も多かったのだが、この頃からは2人の歌声もプッシュされるようになった。だが、“第三章EXILE”の活動が広がりを見せる一方で、リリースからわずか2日後の3月11日に東日本大震災が発生する。予想外の事態に国内に緊張が走る中、10周年の節目に掲げた“願い”は奇しくも日本全体のテーマへと変わり、EXILEは“日本を元気に”するためにさまざまなアプローチで震災復興に尽力したのだった。

『EXILE JAPAN/Solo』

 しかしAKIRAによると、2011年、大震災を機にEXILEが掲げたテーマ“日本を元気に”は「昨年のみの話ではなくて、2年後、3年後、EXILEはどうありたいのかというイメージがあって、それを目指しながら想いや信念を持ってやってきた結果」(※7)なのだという。それはこの先の展開にも言えることで、数年前から準備してきたことを形にするべく、2012年1月1日、10カ月ぶりのアルバム『EXILE JAPAN/Solo』がリリースされた。本作はEXILEの9thアルバム『EXILE JAPAN』とATSUSHIの1stソロアルバム『Solo』をパッケージしたもので、それぞれ15曲ずつ収録。『EXILE JAPAN』という豪快なタイトルには「何よりも自分たちが強く前進していこう。世の中や社会に笑顔をお届けしていけるようなエンタテインメントを目指そう!!」(※8)というEXILEらしい熱いメッセージが込められており、先行してリリースされたチャリティーソング「Rising Sun」や、SHOKICHIが作詞作曲した「Everlasting Song」(SHOKICHIとNESMITHで歌唱)、『EXILE TRIBUTE』でTHE RAMPAGEがカバーしたミディアムナンバー「あなたへ」などが収められている。ATSUSHIに関しては『Solo』でも、AIと共作した「So Special -Version EX-」や「END OF THE DAY feat. Boyz II Men -A's Urban Version-」といった多彩なコラボレーションを見せているが、今年12月には、LDHの動画配信サービス「CL(シーエル)」の新企画『KEY MUSIC』内で、THE RAMPAGEの3ボーカルとATSUSHIが共に「あなたへ」を歌唱する場面も。時を越えて実現したJr.EXILEとの夢のコラボレーション、こちらもぜひご覧いただきたい。

EXILE / Rising Sun -short version-
EXILE / あなたへ
『EXILE BEST HITS -LOVE SIDE / SOUL SIDE-』

 そして2012年12月5日、4年ぶりのベストアルバム『EXILE BEST HITS -LOVE SIDE / SOUL SIDE-』がリリースされた。本作は愛をテーマにしたバラードを中心に収録した“泣きザイル盤”「LOVE SIDE」と、人気のアップナンバーを中心に収録した“アゲザイル盤”「SOUL SIDE」で構成。「LOVE SIDE」に収録されている新曲「Bloom」は、2012年に結婚したリーダーHIROを祝うために小竹正人とATSUSHIが書き下ろした楽曲で、パフォーマーを含むメンバー全員がコーラスに参加したレアなナンバーとなっている。楽曲一つひとつが濃厚で、EXILEとして歩んできた4年間の“時の欠片”を散りばめた花道のようなベストアルバム。この作品を聴き終えた時、仲間達の温かな歌声とファンの歓声に背中を押されながら、照れ笑いを浮かべてステージを歩いていくHIROの姿が浮かぶことだろう。

EXILE / Bloom -All Most Full version-

※1:https://realsound.jp/2020/10/post-633499.html
※2、3:https://m.ex-m.jp/static/discography/exile/album/aisubekimirai/index
※4:http://www.pia.co.jp/interview/103/index.php
※5:https://realsound.jp/2021/08/post-833915.html
※6:https://www.hmv.co.jp/news/article/1103070060/
※7、8:https://www.tokyoheadline.com/339971/

連載バックナンバー

EXILE、アルバムで辿る軌跡 第一章&第二章:デビューから受け継がれるエンタテインメントを追求する姿勢

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