『最愛』、宇多田ヒカルによる主題歌「君に夢中」はなぜ切なく響くのか 梨央や大輝、加瀬の秘める強い想いとの重なり

『最愛』主題歌「君に夢中」はなぜ切ない?

 過去のインタビュー(※1)で監督の塚原あゆ子についてプロデューサーの新井順子が「塚原さんはよくイヤホンしてカット割りしてますよね。主題歌をエンドレスに流しているんです(笑)。「主題歌がないとカット割りができない」ともよく言ってます」と話しており、塚原はそれに「現場では爆音で主題歌を流しています(笑)」と答える経緯もあり、この演出には塚原の意図的なセンスが込められているのだろう。前述した第8話は、「君に夢中」が持つ繊細で儚い印象と、独特の手法で主題歌をドラマに落とし込む塚原との相性の良さが特に感じられたシーンだ。

 また、本楽曲は『最愛』のために宇多田自身が書き下ろしたものであり、第1話放送時に初めて解禁されたという経緯がある。劇中では一部しか流れないが実際は1曲全てが『最愛』のストーリーを想起させるような歌詞になっており、後半ではドラマで印象的なピアノの旋律とは対照的にエレクトリックなアレンジも聴くことができる。切なく響く愛の鍵盤に本作の孕むサスペンスの影が脳裏をよぎる構成となっているのだ。ドラマ放送中以外も本楽曲の魅力に浸ってみてほしい。

 いよいよ『最愛』はクライマックスに向けて大きく動き出す。それぞれの愛はどこに向かうのか、そして事件はどう収束するのか。「君に夢中」の流れるタイミングにも注目しながら、作品を追いかけたいと思う。

※1:https://news.yahoo.co.jp/byline/kimatafuyu/20211022-00264235

■放送情報
金曜ドラマ『最愛』
TBS系にて、毎週金曜22:00~22:54放送
出演:吉高由里子、松下洸平、田中みな実、佐久間由衣、高橋文哉、奥野瑛太、岡山天音、薬師丸ひろ子(特別出演)、光石研、酒向芳、津田健次郎、及川光博、井浦新
脚本:奥寺佐渡子、清水友佳子
プロデュース:新井順子
演出:塚原あゆ子
編成:中西真央、東仲恵吾
主題歌:宇多田ヒカル「君に夢中」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
製作:TBSスパークル、TBS
(c)TBS

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「アーティスト分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる