Nulbarichの5年間が結実した見事なツアーファイナル 圧巻の演奏で示したつながりと希望
また、そうやって自由に音を交歓していくためには、バンドとして、人として、いかに芯の部分でつながっているかが大切だが、この日はメンバー6人が横一列にビシッと並び、“全員が主役”であることを視覚的にも表現していた。それは多彩なゲストとの共演によって外への広がりを見せてきた最近のモードに対して、今回はバンドでしっかり見せていこうという意識の表れでもあるだろう。しきりにメンバーの名前を呼びながら演奏が進んでいくことからも、JQがこのバンドメンバーで音を鳴らす喜びを噛み締めていることがしっかり伝わってきた。コロナ禍で誰もが「人とのつながり」について考えたと思うが、そうやって誰かを必要として、無意識につながり合おうとするエネルギーが、人生のスケールを大きくしていく。未発表の新曲「It’s All For Us」は気持ちいい開放感に満ち溢れていて、まさにそんな状況を物語るようなスタジアムロックに仕上がっていた。
さらに、もう1つの大きなつながりは、言うまでもなくNulbarichと観客のつながりである。序盤で「NEW ERA」を演奏する際に「この曲で出会ってくれた人も多いんじゃないかな?」と話していたJQだが、今回のツアーはそんなNulbarichとリスナーの出会いの軌跡を、様々な“面=Dimension”から捉え直したセットリストとも言える。終盤では「Super Sonic」や「Break Free」といったベースラインでぐいぐい引っ張っていくナンバーでひとしきり踊らせたあと、屈指のライブアンセム「Stop Us Dreaming」へ。〈Ain’t a thing/that can stop us dreaming〉という歌詞はライブを重ねるごとに切実に響いてくるとともに、〈I found heaven in these clouds〉は暗雲立ち込める日々を乗り越え、ついにツアーファイナルに辿り着いたこの瞬間そのもののことを歌っているかのようだった。そして〈Ooo Ooo〉〈Yeah yeah〉のパートでは、何度も繰り返し観客にシンガロングを促していく。もちろん歓声NGのため心の中だけでの合唱となるが、バンドの演奏に観客が全力で応えていく光景は、Nulbarichの5年間が豊かな実りをもたらした証そのものではなかろうか。
ライブは「TOKYO」で大団円。冒頭から途切れることなくヒートアップし続けてきた空間を優しく包み込むように、イントロの鍵盤がゆったり鳴り始める。JQがハンドマイクを持って天を仰ぐように歌うこの曲は、平穏な世界へ想いを馳せる祈りのような美しさで、じんわりと体の芯まで染み渡っていく。東京という街を舞台に、様々な現実に直面しながらも、夢はまだこれから始まるんだという気持ち。JQもMCで語っていたが、もともとNulbarich自体どこに辿り着くかわからないまま片道切符で発進したけれど、夢を語れる仲間とともに、音楽に対して誠実に向き合い続けてきたからこそ、この日のような景色を作ることができたのだ。「先行きのわからない日々にこそ面白さがある」という冒険心を体現する彼らは、これからも様々な出会いを通して音楽を作り続けることだろう。そんな希望に満ちた未来に期待したくなる、素晴らしい一夜だった。
『Nulbarich The Fifth Dimension TOUR 2021 SET LIST
プレイリストはこちら