エド・シーラン『=』、新たな人生の幕開け飾る4年ぶりのアルバム パーソナルな歌に刻まれた喪失と成長

 イギリスの国民的シンガーソングライターであるエド・シーランが、前作『÷(ディバイド)』からおよそ4年ぶりとなる最新作『=(イコールズ)』を携え再びシーンに舞い降りた。2019年のクリスマスイブに、自身のInstagramで休暇を発表したエド。その後は一切のソーシャルメディアを断ち充電期間を過ごしてきた彼にとって通算4枚目のアルバムとなる本作は、この4年の間に彼の身に降りかかった様々な出来事がモチーフとなっている。

「『=』は本当に個人的な作品で、僕にとって大きな意味を持つものだよ。ここ数年で僕の人生は大きく変わった。結婚して、父親になり、大切な人を失ったから、今回のアルバムの中ではこれらのテーマを振り返っている。このアルバムは僕が大人になるまでの成長の記録だと思ってるし、この次の章を皆さんと共有するのが待ち遠しいな」(※1)

 昨年9月、妻 チェリー・シーボーンとの間に、第一子 ライラ・アンタークティカ・シーボーン・シーラン(Lyra Antarctica Seaborn Sheeran)を授かったエド。その一方で、彼にとっては「メンターでありながら父親のような存在であった」(※2)と公言するオーストラリアの実業家、マイケル・グディンスキーを3月1日に喪ったことも、このアルバムには大きな影響を与えている。上のコメントで本人が述べているように、本作『=』はエド・シーランが「"coming-of-age"=大人」になるまでの成長の記録ともいえるのだ。

 では、具体的にはどのような形で楽曲に昇華されているのか。例えば先行シングルとして6月に発表され、全米チャートでは初登場2位に躍り出るなどすでに大ヒットを記録した「Bad Habits」は、父親としてどうあるべきかを考え、これまでの悪癖であるパーティ三昧やアルコール漬けの日々を改めようと思い至ったことが曲作りのモチーフとなっている。

 前作『÷』収録の大ヒット曲「Shape of You」でもタッグを組んだジョニー・マクデイドと、『No.6 Collaborations Project』の共同プロデュースも務めたフレッド(Fred)を共同執筆および共同制作チームに迎えた「Bad Habits」は、抑制されたシンプルだが不穏なビートの上で、エドの奏でる流麗なギターアルペジオと、まるで苦悶の表情を浮かべながら歌っているような歌声が絡み合う。ちなみに、ビリー・アイリッシュやケンドリック・ラマーのMVを手掛けたデイヴ・マイヤーズが監督を務めたMVでは、ピンクのジャケットを羽織ったヴァンパイア姿のエドが(どこか「Modern Love」の頃のデヴィッド・ボウイを彷彿とさせる)、仲間のモンスターたちと夜の街へ繰り出すダークなユーモアにあふれた仕上がりとなっていた。

Ed Sheeran - Bad Habits [Official Video]

 また、8月に先行リリースされた「Visiting Hours」は、先述したマイケル・グディンスキーに捧げられたレクイエムである。3月に開催されたマイケルのトリビュートコンサートで、マイケルと親交の深かったカイリー・ミノーグとジミー・バーンズをバッキングボーカルに迎えて初披露された、アーシーかつ美しいバラードだ(カイリーとジミーは、レコーディングにも参加)。かと思えば9月に先行リリースされた「Shivers」は、「Shape of You」同様ウッドブロックのようなオリエンタルな響きのシンセ音と、抑制の効いたエドの歌声が印象的なナンバー。初めて出会った時から一目惚れ、会うたびゾクゾク(shivers)するような狂おしい気持ちを歌ったストレートなラブソングに仕上がっている。

Ed Sheeran - Visiting Hours [Official Performance Video]
Ed Sheeran - Shivers [Official Video]

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