三阪咲の歌声に感じる、シンガーとしての普遍性 メジャーデビューEP『I am ME』でも放つ圧倒的な存在感
三阪咲、18歳のシンガーである。彼女の歌声を聴いたら、ほとんどの人は驚くのではないだろうか。なぜなら、その年齢を忘れるほど、否、資料に書かれている18歳というプロフィールを再確認するほど、シンガーとして多くのスキルが備わっているからだ。ただ歌がうまい、リズム感がいい、ピッチが安定しているというだけでなく、楽曲に対するボーカルアプローチの引き出しも多く、ニュアンスも多彩で、それぞれのテクニックが卓越している。声質そのものの大人っぽさ以上に発声が独特で、言葉の発音もじつに艶っぽい。日本語の母音の抜き方や、英語も含んだ「ラ行」(RやLなど)の発音が巻き舌を使いながらもドープよりにならず、どこか話し言葉のように聴こえるところも面白い。また、女性ボーカル特有の高音のロングトーンや、昨今の音楽シーンにおいて女性ボーカルの新機軸にもなってきている低音を印象付ける歌い方とは別の手法で圧倒的な存在感を放っている。
その三阪咲が11月1日にメジャーデビューEP『I am ME』をデジタルリリースした。4曲入りの本作には、世代を超えた国内外のアーティストが参加。M1の「My Type」には、2013年にグラミー賞とASCAPをダブル受賞し、現在もワールドワイドに楽曲を提供し続けているウィリー・ウィークスも名を連ねている。
さて、ここで三阪咲について改めて紹介しておきたい。彼女は小さな頃から、ダンス・ピアノ・ギターを習い始め、小学生で歌手になると決めてからは、路上ライブなどを中心に活動を展開し、次第にYouTubeやSNSで注目を集めるようになった。2019年に『第98回全国高校サッカー選手権大会』の応援歌「繋げ!」を担当。デビュー前の現役高校1年生(当時)が応援歌を担当するのは最年少かつ史上初めてという快挙であった。2020年1月には同大会の決勝戦が開催された埼玉スタジアム2002にて、観衆6万人の前で「繋げ!」を歌唱。同曲はSpotify Weeklyバイラルチャートで2位にランクインするなど、同世代を中心にその存在はどんどん拡散されていった。
昨年7月から始めたオフィシャルTikTokは、メジャーデビュー前ながらフォロワーがすでに10万人を突破。「#三阪咲」関連動画に至っては、11月上旬現在で6億5000万視聴を超えている。
2019年3月に自主制作のシングルCD『ヒラヒラ』をリリース以降、ハイペースで楽曲を発表してきた彼女。2021年10月13日にリリースした自身初のデジタルフルアルバム『INDIES PERSONAL BEST』には、スマッシュヒット曲となったABEMA『今日、好きになりました。』の主題歌「私を好きになってくれませんか」や「繋げ!」などはもちろん、未発表音源も含む16曲が収録されている。どの曲も彼女の溌溂とした中高音が映える、ポップチューンに仕上がっている。