ENVii GABRIELLAが語り尽くす個々の活動、ユニット結成そしてメジャーへ 「自分たちらしく皆さんのパワーになるように」

ENVii GABRIELLAインタビュー

 ステージではピンヒールを履いて本格的なダンス音楽に取り組む”オネエユニット”のパイオニア的存在であり、ファッションやメイク、お悩み相談などを取り上げるYouTubeチャンネルでも強烈な個性を発揮しながら中毒者を増やし続けているENVii GABRIELLA(通称"エンガブ")。作詞・作曲・編曲からジャケットのデザインなども手がけるTakassy(タカシ)、ユニットのムードメーカーとして絶大なる存在感を発揮しているHIDEKiSM(ヒデキズム)、陸上自衛隊から新宿二丁目へと華麗なる転職を遂げたダンサーKamus(カミュ)の3人で2017年から活動を始め、今年10月22日、3カ月連続リリースとなるデジタルシングルの第1弾「Moratorium」でメジャーデビューを果たした。思わず息を呑む美しさ、いつも喜怒哀楽の温度を正しく伝えてくれる言葉、一瞬で耳と心を奪っていくメロディ。エンガブの魅力にはたくさんの入り口があるけれど、今回のインタビューににじみ出ている、誰よりも人間臭くて真っ直ぐで、愛情溢れる3人の生き様も感じ取ってもらえればと思う。(山田邦子)

ENVii GABRIELLAは“カッコはあるけど中が空欄みたいなユニット”

ーーまずはメジャーデビュー、おめでとうございます。改めて、今のお気持ちを聞かせてください。

Takassy:今まで積み重ねてきたものが、やっと一つの到達点にたどり着いたなという気持ちです。ここまで約4年、いろんな人が私たちの船に乗り込んでくれて、その人たちの思いも含め全てがひとつになったのがこのメジャーというところなんだなというのを感じていて。もちろん個人的にすごく嬉しいという気持ちもありますが、それよりも、恩返しができたなっていう気持ちが強かったですね。自分のことというよりも、周りの人に対して「ここまで来させてくれてありがとう」という気持ちでした。

HIDEKiSM:長いこと音楽・芸能活動をしてきた中で一つの大きな夢が叶ったわけですが、「やっと!」というよりも「報われた」という感覚が強かった気がします。自分がやってきたこと、このメンバーでやってきたことを一つ評価していただいたような気持ちであり、やってきたことは間違っていなかったんだと思うことができたというか。あとは、やっぱりアーティストってすごく難しいというか、とても不安定な職業じゃないですか。そんな中でこうして一つ結果を出せて、たかちゃん(Takassy)も今おっしゃいましたが、周りがすごく喜んでくれたんですよね。自分が好きでやってきたことで周りが喜んでくれる、要は、自分のために生きていることが人のためになるんだというのをすごく実感できたので、今後も自分たちらしく生きていくことはもちろんですが、それが皆さんのパワーになるようにという思いでやっていけたらと思っています。

Kamus:メジャーデビューは我々も夢だったけど、GAVii(エンガブファンの呼称)の夢でもあったと思うんです。GAViiたちがいてくれたからうちらが活動できているのはもちろんなんですが、そのGAViiと一緒にメジャーにたどり着けたのはすごく嬉しいことだなと思いました。今までもライブやトークショー、YouTubeなどいろんなことをやってきましたが、今後はさらにやりたいことややれることの幅が広がると思うので、これまで応援してくれたGAVii、新たなGAViiも含め、我々3人が先導してもうちょっと面白いこと、デカいことをやっていけたらいいなと思いました。

ーーもちろんすでにご存知の方もたくさんいらっしゃると思いますが、「ENVii GABRIELLAってどんなグループ?」と聞かれたら、皆さん自身はどんな言葉で答えますか?

HIDEKiSM:あら面白いこと言うわね(笑)。でもほんと、どういうグループなのかしら?

Takassy:私も、今すごくわかんないと思っちゃった。

Kamus:わかんなくなっちゃったね。

Takassy

Takassy:(しばし考えて)何でもあって何でもない、みたいな感じなんですよね。”オネエユニット”って掲げた時は「ピンヒール履いて歌って踊る、オネエのユニットです」って簡潔に言っていたんですが、4年続けてきて、我々の武器がそれだけではなくなったから。やりたいことが明確に見えつつもすごく広がったので、エンガブってどういうグループって言われると一言では……。

ーー今おっしゃったように、「ゲイ、オネエであることを武器にピンヒールを履いて音楽活動をする総合エンターテインメントユニット」など、テレビ番組などでエンガブを客観的に紹介する際のフレーズはよく目にするのですが、現時点での皆さんの捉え方はどうなのかなと思いまして。

HIDEKiSM:でも確かに、そこにちょっと満足しちゃってる感はありましたね。例えばですけど、どんな風に言われても良かったんです。当時。YouTuberでもタレントでもいいし、アーティストって言ってくださる方もいれば、オネエって言われても全然構わない。でも、音楽というのが軸にある。歌手である、アーティストである、ダンサーであるみたいな、音楽に付随している者というのは3人とも強くありました。じゃあ今エンガブというものが一体どういうものなのか……ですよね。

Takassy:私、今ずっと想像してたんだけど、“「  」”みたいな感じ? カッコはあるけど中が空欄みたいなユニットだなと思う。何にも、どこにも属さないというか。オネエタレントにも属してないし、LGBTQですとも自分たちからは特に発信はしないし、もちろんセクシュアリティを全面に出してはいるんですが、「だから聴いて!」っていう話でもないので。どこにも属したくないって、すごく今強く思っているのが正直なところですね。

HIDEKiSM:うん、うん。

Takassy:だから、「ENVii GABRIELLAです」って言えば済むようになりたい。最終的には(笑)。

ーーその感じ、とてもわかりやすいです! でもそもそも、どうしてこのエンガブの武器であり、象徴ともなっているピンヒールをアイテムとして用いようと思ったんですか?

Takassy:オネエユニットを組むとなった時にゲイであることをカミングアウトする覚悟もできたから、じゃあどういうパフォーマンスをしたいかと考えた時に、MAXとかガールズグループが好きだったからまずそこをイメージしたんです。海外にはピンヒールを履いてパフォーマンスしている男性のグループもいたりして、そのどこにも属していない感や、男女両方のセクシーさを持っている感じがすごくカッコいいなとも思っていたので、ピンヒールは絶対このユニットに取り入れようと。HIDEKiSMはそもそもピンヒールを履いてパフォーマンスをしていたから大賛成だったし、Kamusもソロでダンスをしていた時ピンヒールを履いていたから、そこに関しての3人のイメージは合致していましたね。

ーーちなみに最初にヒールを履いた日のこと、覚えてます?

HIDEKiSM

HIDEKiSM:覚えてます。私には姉がいるんですが、姉が持っていたサンダルでした。ちょっと踵がはみ出るんだけど、それを履いて、マンションの廊下をランウェイのようにしてよく歩いてました。10代の後半だったかな。でも外に履いていくことは出来ないというか、後ろ指さされるのが怖い時代でもあったから、隠れて履いて遊んでましたね。“オネエ”の方って、よくお母さんがいない時にこっそりお化粧品を借りていたみたいな話をされますけど、私はそれがハイヒールでした。女性は自分を可愛く見せるアイテムがたくさんあるけど、男性のアイテムって服も靴も振り幅がすごく狭い。それがすごく残念だった。けど私は既にソロで歌手活動をしていたので、改めて自分のアーティスト像を想像した時にふと「そうだ。ハイヒールを履いてパフォーマンスをしてしまおう」って思って。

ーー気持ちのスイッチが入ったみたいな。

HIDEKiSM:そういうパフォーマンスをすると決めた時、Takassyに「私はこれからハイヒールを履いて歌って踊るパフォーマンスをしていきたいと思っているから、“ハイヒール”っていう曲を作ってくれ」って言ったんです。とにかく履きたかったんですよ(笑)。足が綺麗に見えて、颯爽と歩いている女性にすごく憧れていたから。その気持ちを彼なりに解釈してくれて、「High Heels」という名曲を作ってくれたんですけど。

Takassy:自分たちで「名曲」って言うんだ(笑)。

HIDEKiSM:だって名曲ですよ。

ーーKamusさんはどうですか?

Kamus

Kamus:もともとゲイバーで働いていたんですが、誕生日が来るとバースデーイベントがあるんですね。そういう時は女装をするのが典型的なパターンなんですが、店のママがバースデーや周年で女装しているのを見て綺麗だなと思い、自分の時はママの衣装を借りて、ママのハイヒールを履いて、バースデーイベントに臨んだのを覚えてます。まるで別の人になったような感覚でした。

HIDEKiSM:わかる、わかる。

Kamus:ドレスやメイクもそうだけど、いつもの靴とは全然視線が変わるし、ハイヒールを履いただけなのにグラスを置く所作まで変わったりして、内側から変わる感じがありました。その2〜3年後にポールダンスと出会うんですが、ピンヒールを履いてパフォーマンスされる男性の方がたくさんいて。そうか、ピンヒールでパフォーマンスするのってかっこいいなと思い、初めて自分でピンヒールを買ったんです。それが、初期から履いているあのニーハイのピンヒールなんですけど。人と違うことをしている自分、ハイヒールを履きこなしている自分にすごい高揚感があったし、別の人になったような感覚でステージに出ましたね。

HIDEKiSM:「ムーン・プリズムパワー!」なのよね。

Kamus:「メーイク・アーップ!」(笑)。

HIDEKiSM:でも初めて自分でピンヒールを買った時は、いろんな思いが崩壊したわ。

Kamus:わかる(笑)。

HIDEKiSM:覚悟が決まった感じがあった。「ピンヒール買っちゃったんだけど、私」みたいな。「いよいよちゃんとゲイだわ」って(笑)。

Takassy:私、全然そういう思い入れなかったな。安室(奈美恵)ちゃんみたいにヒールを履いている女性アーティストを見てかっこいいなとは思ったけど、女性とヒールって一体化しているものだから、ヒールだけでかっこいいなと思ったことはなかったんですよね。ただ単にこのユニットはゲイがやるユニットで、さっき言った海外のアーティストとかを見た時に両方のセクシーさが出るっていう、その一番わかりやすいのがヒールだったからで。視覚的にセクシーじゃないですか、あのフォルム。あれを男性が履いているアンバランスさはすごくセクシャルな感じがするので、これは外せないなっていう、そういうインスピレーションでした。だから特に高揚感もなくっていう(笑)。もちろん今はトレードマークになっているから、誇りを持って履いてますけどね。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる