あいみょんやtofubeatsらを輩出 阪本奨悟、門脇更紗、近石涼……兵庫県から生まれる新しい才能たち
今や日本を代表するアーティストととなったあいみょん、「トイレの神様」で知られる植村花菜、切なくも愛らしいラブソングでZ世代の支持を得ている井上苑子、DJ、ビートメイカー、プロデューサー、劇伴など幅広く才能を発揮しているtofubeats。これらのアーティストの共通点には、兵庫出身であること。「チキンジョージ」「太陽と虎」「VARIT.」などの個性的なライブハウスが存在し、入場無料のチャリティイベント『COMIN‘KOBE』も開催されている兵庫は、70〜80年代から現在に至るまで、音楽が盛んな土地として知られ、ここ数年も魅力的なアーティストを輩出し続けている。そこで今回は、次世代を担う兵庫出身のシンガーソングライターを紹介したい。
兵庫県西宮市出身の阪本奨悟は、異例のキャリアを辿ってきたシンガーソングライターだ。10代の頃は俳優として活動。『ミュージカル テニスの王子様』で人気を獲得した後、舞台、テレビドラマなどに次々と出演し、将来を期待されていた。まさに順風満帆の人生だったのだが、その後、彼はシンガーソングライターを志し、地元・関西を中心にひとりでライブ活動をはじめる。葛藤を抱えながらも路上ライブ、ライブハウスでの活動を地道に行い、時間をかけて地力を積み上げてきた阪本。生々しい感情や情景描写を込めた楽曲、そして、俳優としての経験に裏打ちされた歌の表現によって注目を集めた彼は、2017年に福山雅治のプロデュースによる『鼻声/しょっぱい涙』でメジャーデビュー。翌年7月に1stアルバム『FLUFFY HOPE』をリリースした。
昨年10月には、2ndアルバム『=+』を発表。アニメ『あひるの空』(テレビ東京)のエンディングテーマ「太陽ランナー」、阪本が声優として初主演を務めたアニメ『トライナイツ』(日本テレビ系)の主題歌「無限のトライ」などを収めた本作は、華やかなエンタメ性と豊かなエモーションを感じさせる音楽性を共存させた作品。このアルバムによって彼は、シンガーソングライターとしての個性を確立したと言っていいだろう。
1999年、兵庫県の南東部に位置する川西市で生まれた門脇更紗は、10歳のときにYUIに憧れ、ギターを手にした。高校時代からライブハウスや路上ライブで活動をスタートさせ、2018年9月には初のワンマンライブを神戸 VARIT.で開催。翌年には東京 7th FLOORで初ワンマンライブを成功させ、2020年に地元・神戸のFM局“Kiss FM KOBE”でレギュラー番組がはじまるなど、徐々に活動を広げた彼女は、2021年3月に満を持してメジャーデビューを果たした。
デビュー曲「トリハダ」は、ギターのフィードバック音から始まるロックチューン。スピード感に溢れたサウンド、鋭利なポップネスと称すべきメロディ、そして〈どこまで羽ばたくなんて勝手にさせてよ/誰とも同じじゃない/物語なんだから〉というフレーズが一つになったこの曲は、シンガーソングライターとしての彼女の魅力が凝縮されている。さらにフォーキーな手触りの音像とともに、前向きに“今”を生きる決意をナチュラルに綴った「わすれものをしないように」、エレクトロ的なトラックと切ない旋律、〈悲しくて寂しくてとても嬉しいの〉というラインが響き合う「きれいだ」(TVアニメ『セスタス-The Roman Fighter-』EDテーマ)を次々に発表。凛としたボーカリゼーション、豊かなストーリー性を備えた楽曲はここから、さらに幅広いリスナーを魅了することになりそうだ。