女性アイドルの“駅名間違い”はなぜ起こり続けるのか? トラブルを楽しむファンの寛容さにも注目

アイドルの“駅名間違い”なぜ起こり続ける?

本番直前に会場入りすることが一因?

 アイドル界で駅名間違いが繰り返される大きな理由はもちろん、駅名の字面がよく似ているからだ。だが、間違えたとしても、時間に余裕を持って行動していたら対処できる。アイドルのことを知らない人は「ライブに出るんだったら、早めに会場へ入ってリハーサルをするんじゃないのか。もし間違えたとしても本番には間に合うのでは?」と考えるかもしれない。

 ただ、アイドルイベントは出演者が10組以上のものも多く、朝から晩にかけて開催。リハーサルを行うにしても朝の早い時間になってしまうため、例えば夕方以降に出演する場合は時間が空きすぎてしまう。しかもアイドルグループは大人数なので楽屋が混雑しやすく、入れ替わりで利用しなければならない。長い時間、楽屋にとどまれないのだ。そういった事情から、複数のアイドルが出演するイベントではリハーサルをやらず、会場入りも本番の1、2時間前になるケースがある。

 また土日となれば1日に2、3本のライブに出演することも当たり前。体力的にもハードだ。運営スタッフ側からすれば「会場入りをギリギリにして、できるだけ休んでもらいたい」という気持ちがあるのかもしれない。

アイドルファン特有のトラブルを楽しむ性質

 そして、こういった駅名間違いに対するファンの寛容さも見逃してはならない。筑後ののかが新高島駅と新高島平駅を誤った際、ツイートのリプライには「伝説ができたってことで、前向きに行こう」「『タモリ倶楽部』から出演依頼される案件」「なかなか斬新な間違え方で感心」など好意的とも受け取れる反応が目立った。

 2018年の小室あいかのときも、「涙が止まらない。もう本当にヤダ。今すぐ穴の中へ消えていきたい」と自己嫌悪する彼女のツイートに対して、「今は辛いけど後で笑い話になるから」「ライブは出られなかったけど、1万リツイートいって世間に名前を売ることはできたじゃん。元気出して!」と励ましのコメントが相次いだ。

 どんなことがあっても“推し”を支え続けるアイドルファンの深い愛情が、駅を間違えてライブに出られずに落ち込む彼女たちのマイナス感情をやわらげる。何より、アイドルファンはトラブルやハプニングも楽しむことができる特有の性質を持っている。観客がガラガラの“過疎現場”にゾクゾクしたり、悪天候の野外ライブで張り切ったり。おそらく、ほとんどのアイドルファンが一度はそういう現場を経験している。だからこそ、こういった駅名間違いをネタ化できるのかもしれない。

 駅を間違えたアイドルたちの当時の焦りは相当なものだっただろう。自分を責めてしまうのも仕方がない。ただファンは、ライブが毎週あり、合間にダンスや歌のレッスンも行い、ほかにも遠征の際には車で長距離移動し、人によっては普段は仕事や学校へ行っていることも知っている。ハードな日々を送りながら自分たちを目いっぱい楽しませてくれていることを考えたら、ミスすらも愛おしいのではないだろうか。

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