ROSÉ、全曲作詞作曲の初フルアルバムで表現した“ありのままの自分” K-POPからグローバルポップへの成長
2024年のポップミュージック/ポップカルチャーシーンが年末の振り返りに入ろうとしていたこの1~2カ月。その動きをあざ笑うかのように、突如として旋風を巻き起こしているアーティストがいる。それがBLACKPINKのメンバーであり、12月6日にソロアルバム『rosie』をリリースしたROSÉだ。ここまでの巨大な現象になることを、果たしてどのくらいの人が予想していただろう? 来年以降も影響力を拡大しそうな鮮烈なカムバック劇になったが、本稿では、一体今回のROSÉ現象がどのような意味合いを持っているかについて分析してみよう。
まず語るべきは、「APT.」である。10月18日にブルーノ・マーズとのコラボという形でリリースされたこの曲は各国ヒットチャートを席巻、数々の記録を打ち立てるメガヒットソングとなった。アメリカのBillboardチャート「Billboard Hot 100」では、BLACKPINK関連の楽曲としては2020年の「Ice Cream(feat. Selena Gomez)」を超えて最高位に浮上し、Spotifyピーク時の月間リスナー数では、BTSの4,580万人を大きく上回る6,000万人超えという域にまで達した。さらに日本でも、TikTokをきっかけとしてUGC起点の爆発的なヒットを生んでいる。韓国の飲み会ゲームから着想したというこの曲は、中毒性の高いフレーズによって、今この瞬間も全世界でキュートなダンス動画が次々とアップロードされているはずだ。
さて、ポップなダンスチューンが先行でヒットしたため様々な憶測を呼んだアルバム『rosie』だが、蓋を開けてみると、良い意味で予想を裏切るような作風になっていた。ここには、K-POPを脱した新しいROSÉがいる。そう、『rosie』は、もはやK-POPには収まりきらないスケールの作品なのだ。それについてはまず、彼女自らがアルバム全12曲の制作に参加し、エグゼクティブプロデューサーも務めたという事実が大きい。多くのプロデューサーを束ねながら、自身の身に降り注いだ経験を作品に昇華していった点で、シンガーソングライター的な才覚を発揮して作ったアルバムである。だからなのか、これまでのBLACKPINKとは似ても似つかない作風となっている。というか、昨今のK-POPのトレンドと並べて聴いてみると、かなり異なるベクトルを向いたサウンドだ。
というのも、NewJeansやaespa、LE SSERAFIM、BABYMONSTER、ILLITといった第四~第五世代のK-POP勢は、高いエネルギー量と刺激によって、リスナーを視覚的/聴覚的に圧倒する楽曲を作り上げてきたからだ。特に最近は、洗練されたダンスミュージックの要素を巧みに引用することで「グローバルなK-POP」を海外にも送り出している。もちろん、その流れの礎を築いた先輩グループとして、BLACKPINKのブレイクは記念碑的な出来事だった。けれども、『rosie』はもはやその流れには位置づけられない。この作品は、「グローバルなK-POP」ではなく「グローバルポップ」なのだ。