マカロニえんぴつ、音楽でつながる自信に満ちた圧倒的なパフォーマンス 『マカロックツアーvol.12』ファイナル公演

マカロニえんぴつ、Zepp Tokyoレポ

 国民的な認知度を得ているバンドには必ず、“あのツアーで化けた”、“あのライブがきっかけだった”というポイントが必ずある。ワンツアー、ひとつのライブで、もともと持っていた資質が開花し、目撃した誰もが“やばい!”と惹きつけられるーーこの日のマカロニえんぴつは、まさにそういう状態だった。

 9月から11月にかけて行われたライブハウスツアー『マカロックツアーvol.12 〜生き止まらないように走るんだゾ!篇〜』のファイナル、東京・Zepp Tokyo公演。この日彼らは、約10年のキャリアを総括するようなセットリストとともに、自らの独創的な音楽性をダイレクトに体現する圧巻のステージを繰り広げた。

 いつものようにThe Beatlesの「Hey Bulldog」とともにメンバーが一人一人登場。最後にはっとり(Vo/Gt)が姿を見せ、定位置に付くと、ドラムのフィルから1曲目の「愛のレンタル」へ。冒頭からそれぞれの音ががっちりと絡み合い、ポップにしてダイナミックな音像が出現する。さらにマカロニえんぴつ流のロックンロール「listen to the radio」、「もう最後なんで、何も思うことはないです。精一杯置いていくので、受け取ってください」(はっとり)というMCに導かれた「恋のマジカルミステリー」、〈この恋が この恋が この夜が/ずっと前から僕らを/待っていた〉というフレーズが鳴り響いたアッパーチューン「洗濯機と君とラヂオ」を披露。独創的なアイデアに溢れたアレンジ、高野賢也(Ba)、田辺由明(Gt)、長谷川大喜(Key)、サポートドラムの高浦“suzzy”充孝のプレイヤビリティを存分に感じられるステージによって、会場全体が高揚感と幸福感で包まれる。

 ギターポップ、ハードロック、ジャズ、レゲエ、ファンク、ソウル、R&Bといった多彩な要素を注ぎ込み、1曲のなかでビックリするような展開を見せるマカロニえんぴつの楽曲は、高い演奏技術が必要なのはもちろん、少しでも噛み合わないとアンサンブル全体が崩れてしまう危うさもあるのだが、この日のマカロニえんぴつはまさに完璧。すべての音がクリアに聴こえる音響の良さを含めて、彼らの楽曲の魅力を余すことなく感じ取ることができた。最初のMCではっとりが放った「ロックバンドです。CD出してツアー回ってっていうのを10年近くやってます。今日も音楽をたくさん歌います、届けます」という言葉にも、“今の自分たちなら、音楽だけでつながれるはずだ”という自信が滲み出ていた。

 ライブ中盤では、「恋人ごっこ」「two much pain」など、悲しさ、切なさ、痛みを描いた楽曲を重ねた。中心にあるのはもちろん、はっとりのボーカル。抑えていた感情が徐々に溢れ、最後は叫ぶように歌う姿からは、シンガーとしての存在感がさらに強まっていることがはっきりと伝わってきた。どんなに激しくシャウトしても、豊かなメロディは失われることがなく、すべての歌詞が生々しく響いていたことも記しておきたい。

 2度目のMCでメンバー紹介やツアーの思い出話(主に“食いしん坊キャラ”の長谷川のグルメレポート)をゆるゆる続けた後、「おいしいもの食べたおかげで、いいツアーになりました。体重が増えたことは水に流しましょう」(長谷川)というオチ(?)から「Mr.ウォーター」へ。ロック、レゲエ、ジャズを取り入れながら、好奇心や創造性の源となる謎の衝動を描き出した新曲「トマソン」、「サビ前のコールは任せた!」(はっとり)という煽りによってオーディエンスの強いリアクションを引き出したライブアンセム「ワンドリンク別」、ミラーボールに反射するレモン色の光のなかで演奏された人気曲「レモンパイ」、マカロニえんぴつが目指す“全世代型ロックバンド”をさらに押し進めるきっかけとなった「はしりがき」(『映画クレヨンしんちゃん 謎メキ!花の天カス学園』主題歌)をつなげ、ライブはクライマックスに向かって突き進む。

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