iri、もさを。、Ado……“会いたい”気持ちを素直に歌った恋愛ソングに注目集まった理由
「いつでも好きな場所に行けるし、好きな人に会える」ことが常識となった私たちの世界を、2019年末から蔓延する新型コロナウイルスは一変させた。
離れて暮らしている家族や恋人、友人に会いたくても会えない。先が見えない状況の中でひたすら我慢するしかない苦しみを支えてくれたのは、「会いたい」という素直な気持ちを歌った楽曲だ。
音源としては2017年にリリースされながら、〈どこへ行けば 何をすれば 平和なあの日戻ってくるの?〉という歌詞があまりにもコロナ禍状況と重なるのはiriの「会いたいわ」。10月26日にデビュー5周年を迎えるiriが、デビュー前から歌い続けている代表作の一つで2019年秋頃からバイルラルヒットを記録。TikTokを中心に人気を集め、各ストリーミングサービスのチャートで上位にランクインした。9月30日にリリースから4年の時を経て公開された、TVドラマや映画の監督も務める山岸聖太が手がけたMVも大きな話題となっている。
MVは穂志もえか演じる女性が夜更けに一人、磯田龍生演じる男性との思い出に耽る内容となっているが、まさしく「会いたいわ」はエモーショナルな気分にぴったりな楽曲だ。洗練されたスモーキーなiriの歌声と浮遊感のあるメロディが静かな夜を感じさせ、心身ともにリラックスできる。しかし、流れてくる言葉は様々な感情が入り混じった複雑な思い。繰り返し登場する「会いたい」というワードに胸が締め付けられる恋愛ソングだが、遠距離恋愛や友達以上恋人未満の関係性など、色々な解釈ができる。リスナーそれぞれが自分の状況に当てはめられるからこそ、若者の共感を得たのだろう。
一方、遠距離恋愛に特化したラブソングを届けたのはもさを。の「会いたい」だ。2020年2月にTikTokで歌唱動画を投稿し始め、初めて発表したオリジナルソング「ぎゅっと。」で話題を集めたもさを。。温かみのある優しい歌声を持つ彼が歌う女性目線のラブソングは、切なさの中に誰かを想う尊さを感じさせる。
そんなもさを。の「会いたい」で特に印象に残るのは、〈会いたい 足りない 電話越しの声じゃ〉というフレーズだ。その気になればいつでも会いに行けるけれど、お互いにそれぞれの日常があり、やはり頻繁には会えない遠距離恋愛。いくらでもLINEでメッセージを送り合うことも、テレビ電話で顔を見ながら会話をすることも可能な時代だが、同じ景色を見たり、肌に触れたりすることは叶わない。コロナ禍で誰もが、直接会って同じ時間を過ごすことの大切さを実感しただろう。離れていても相手を信じる気持ちと、〈夢の中でもいいから会いたい〉という願いの狭間で揺れる真っ直ぐな感情を歌った同曲は、しばらくの間“擬似遠距離恋愛”の状態だったカップルにも刺さったはずだ。