米津玄師好調のバイラルチャート上位に現れた“もさを。”は何者か 日常と願望をシンプルに表現した「ぎゅっと。」の魅力
参考:https://spotifycharts.com/viral/jp/weekly/latest
Spotifyの「バイラルトップ50(日本)」は、最もストリーミング再生された曲をランク付けした「Spotify Top 50チャート」とは異なり、純粋にファンが聴いて共感共有した音楽のデータを示す指標を元に作られたプレイリスト。同チャートを1週間分集計した数値の今週分(8月20日公開:8月13日~8月19日集計分)のTOP10は以下の通り。
1位:米津玄師「Lemon」
2位:もさを。「ぎゅっと。」
3位:米津玄師「馬と鹿」
4位:米津玄師「Flamingo」
5位:米津玄師「パプリカ」
6位:米津玄師「ピースサイン」
7位:米津玄師「海の幽霊」
8位:米津玄師「LOSER」
9位:米津玄師「TEENAGE RIOT」
10位:オレンジスパイニクラブ「キンモクセイ」
2020年夏。バイラルチャートでは、米津玄師が日本音楽史に残る“打上花火”の連発で、長く不安な夜空を鮮やかに彩っている。その中に、彗星のごとく切り込んできた人物がいる。今週、チャート2位にランクインしたもさを。の「ぎゅっと。」だ。今回は、2020年夏の彗星、もさを。の「ぎゅっと。」にスポットを当てたい。
具体的なプロフィールもわからない、顔も未公開のシンガーソングライターもさを。は、作詞・作曲・編曲のすべてを自身で手掛けている。彼のTwitterを遡っていくと、学生時代には自ら軽音部を立ち上げるなど、音楽に対しては能動的で行動力もあったようだ。YouTubeやTikTokに、様々なアーティストの弾き語りカバーをアップしていたが、徐々にオリジナル曲も発表するように。その動画が多くの人の目にとまり、ライブやイベントにも誘われるようになった。ざっくりだが、この活動歴を見れば、SNSというコミュニケーションツールが、楽曲の力により本人のプロモーション媒体になった、実にデジタルネイティブらしい=今時らしい実績を積んできた1人と言える。
今週、2位にランクインした「ぎゅっと。」も、TikTokなどから火がついた。カップル動画系のBGM、風景系のBGM、弾き語りしてみた、歌ってみたなど、様々なシチュエーションと共に使われている。TikTokというアプリ自体が、もはやある一定数の人間の日常だとするならば、もさを。の歌は、すんなり他人の日常に溶け込む特性を持っているといえるのではなかろうか。では、この “特性”とは何か。「ぎゅっと。」という楽曲から、その詳細を考えてみたい。
まずはメロディ。素朴さもあるウォームな曲調は、耳馴染みが良く、とても覚えやすい。語るようなリズムの譜割りもシンプル。随所に入って来るアレンジやコード進行のフックも、過度に入れ過ぎないことで、そのフレーズや音色がしっかり耳に残るようになっている。要するに、キャッチーな複数の要素が、とてもいいバランスで配置されているのだ。サウンド全体の情報量も素っ気ないくらい少ないゆえ、聴き手の脳が、歌詞とメロディ、アレンジを同時に処理することができる。だからこそ覚えやすくキャッチーで、バイラルチャート上位にランクインするほど多くの人の間で共有され、拡散していったのだ。