KALMA 畑山悠月、等身大で音楽をかき鳴らす理由 「世界は救えないからこそ誰か1人のヒーローになる」

KALMA、等身大で音楽を鳴らす理由

「20歳だからこそのプレッシャーや焦りもある」

ーーそれが少しずつ現実になってきているなかで、それでもなかなか自信は持てずにいるっていう。それがリアルなのかもしれないですよね。

畑山:ライブに来てくれてる人がいるから、本当は自信持っていなきゃいけないのに、自信が持てないんですよね。

ーー「ふたりの海」の最初の2行〈大人になれない僕は今日も愚痴ばかりSNSに書き込んでる/同世代の活躍を布団の中で悔しくなるけれど否めない〉とか、曲のテーマからしたらなくてもいい部分だと思うんですよ。でも書いちゃうところが畑山さんらしいですよね。

畑山:めちゃくちゃ畑山悠月の歌詞だと思う(笑)。サビだけでいいんですよ、本当は。でも他のところは僕の心の声になってるというか。

ーー本音なんですよね。

畑山:そうですね、本音です。ラブソングじゃんと思ったら、流れてくるのがまずあのゴリゴリのサウンドというのもカッコいいなと思います。

ーー「スローでイコー」もいい曲で、「ゆっくり行こうぜ」っていう歌かと思いきや、最後「そうじゃないんだ」って歌うという。その揺れ動く感じも人間的だなと思います。

畑山:ゆっくりでいいなと思う時もあれば、焦っちゃう時もあるっていうのを表現したくて最後速くしましたね。周りの人たちは「ゆっくりでいいよ」とか、「二十歳だから焦らず好きなことやりなよ」と言ってくれるけど、20歳だからこそのプレッシャーとか焦りもあって。それはもう高校生のときからそうだったんです。他のバンドに比べたら早いうちから北海道から東京に来て、取材を受けたりライブがあったり、いろんなことが起きて。そのときも「まだ若いから」とか言われたけど、若いからこそ若さだけで見られてたら、いつか死んじゃうと思っていたし。その焦りはあるから、最終的にはゆっくりなだけじゃダメなんだなっていう思いで書きました。

ーーその両方を持っているのが大事なんだと思います。

畑山:確かに。それこそ誰かを救わなきゃいけないとか、誰かのヒーローになりたいなら、そう言い切った方がいいんですよ。でも、僕もどっちなのか決まってないから。聴いてる側も「どっちがいいのか教えてくれ!」じゃなくて、KALMAも迷ってるんだったら、私もそれで間違えていなかったんだって思ってくれると嬉しいですね。僕らは本当のヒーローのようにはできないけど、できないからこそ伝わるものがあると思ってるし、どっちかわかんないけどそれでこそ人間だしって思います。

KALMA / スローでイコー [Music Video]

「“誰かに向けて”というのは自分のことでもある」

ーー正しいかどうかもわからないけど進むんだっていうのは、KALMAの基本姿勢ですよね。このアルバムも、希望とか夢とか未来とか憧れとか、そういう形のないもの/目に見えないものをすごく一生懸命曲にして歌っていますよね。

畑山:確かに何か見えないものを追いかけてるかもしれないです。誰かの二番煎じじゃなくて、唯一無二なことをやれてるなとも思います。でも逆に「それでいいのかな」みたいなところもあるんですよね。誰もやってないことを僕らがやれてるとすれば、それはそれで「僕らだけ置いてきぼりじゃない?」みたいな、そういう自信のなさが出てくる(笑)。

ーーなるほど、ややこしい(笑)。

畑山:けど、最近はKALMAのことを好きだって言ってくれる人やバンドが多くて。札幌で先輩と話したときにも、「KALMAに憧れてるバンドってたくさんいるよね。お前らがKALMAっていうジャンルをちゃんと作れてるから、それをリスペクトしてる後輩もめっちゃいるんだよ」みたいなことを言われて、嬉しいなって思ったんです。だから僕らが作った世界は間違っていなかったし、1人じゃないって思いました。

ーーそうやって揺れ動きながら進んでいくんでしょうね、KALMAというバンドも、畑山悠月という人も。

畑山:はい。本当に超人間っぽいと思うんですよ、自分のこと。こう見えてメンバーの中では一番いろんなことを気にしちゃうし、ライブ前も一番緊張してしまうくらい、結構ネガティブなんですけど、だからこそ歌詞が書けると思うんです。働きたかった会社に内定もらったとか、ずっと入りたかった高校に受かったとか、それはゴールじゃなくスタートで、またいろんな落とし穴に引っかかってまたいろんな日々を経験して、落ち込んだりもする。自分も今そうで、メジャーデビューしたからこその厳しい道があるんです。だからこそ伝えられることがあるし、意外とこの面倒くさい性格で良かったなっていつも思います。逆に何も気にしない超ポジティブな人だったらそうはならないと思うんで、曲ができるたびに意外とこんなダルい性格で良かったなって。

ーーしかもKALMAの大きな特徴は、歌詞にはそういう部分も出ているけど、曲はちゃんとキャッチーになるっていうことですよね。暗い気持ちを暗い曲にしてもしょうがないじゃん、みたいな。

畑山:そうですね。なんでそうなるかというと、たぶん自分に対しても歌いたいからなんですよ。自分を励ましたい。そのために曲を作るから。さっきも言った「誰かに向けて歌ってる」というのは自分のことでもあるんです。「ふたりの海」はまさしくそうですね。

ーーアルバムの最後に入った「逃げるなよ、少年!」もまさに、自分に歌いかけるような曲ですよね。

畑山:超自分です。自分に向かって歌っているけど、それが誰かに届くと思っているので。

ーーわかりました。総じて振り返るとレコーディングはどうでしたか。

畑山:別のインタビューでも、「楽しくゆっくりと好きなようにやらせてもらいましたね」とか話すけど、よく考えたら意外とそんなことなくて、時間はなかったですね(笑)。ツアーをやりながらの制作だったので、ツアー中に北海道帰らないで、東京に来てレコーディングしたりしたんです。31泊したんですよ、ずっとホテルで(笑)。だから、思えば忙しかったけど、その忙しさよりも楽しさが勝ってたんで。1曲1曲ちゃんと思いを込めたかったし、全部違うものにしたかったから、ちゃんと1曲ごとにメンバーと練った上でレコーディングできましたし、本当にいいアルバムになったと思います。今作でもう1回メジャーデビューしたいくらい(笑)。1作目が良すぎて、2作目が1作目を超えるかどうかわからないってよく言うじゃないですか。それができちゃったなって思います。だからこそ、次も期待はしていてほしいなと思いますね。

KALMA『ミレニアム・ヒーロー』

■リリース情報
KALMA 1st Full Album
『ミレニアム・ヒーロー』
2021年10月20日(水)発売
<初回限定盤:CD+DVD> ¥3,500+税
<通常盤:CD> ¥2,500+税

収録曲
01. Millennium Hero
02. 夏の奇跡
03. モーソー
04. 希望の唄
05. 恋人
06. 親友
07. パリラリラ
08. さよならのメロディ
09. スローでイコー
10. ふたりの海
11. さくら
12. めぐり
13. 2767
14. 逃げるなよ、少年!

初回限定盤付属DVD内容
●LIVE at SHIBUYA CLUB QUATTRO, 2020.12.15
TEEN / デイズ / ねぇミスター / イノセント・デイズ / 僕たちの唄 / ハレルヤ / さらり風 / パリラリラ / SORA / 少年から / 逃げるなよ、少年! / これでいいんだ / くだらん夢 / わがまま / blue!!
●ミレニアム・ヒーローが誕生するまで 〜Recording & Shooting〜
・Recording:夏の奇跡 / さくら / 希望の唄 / 恋人 / 親友 / ふたりの海 / さよならのメロディ / Millennium Hero / スローでイコー / めぐり / 『ミレニアム・ヒーロー誕生』
・MV Shooting:さくら / 夏の奇跡

■ツアー情報
10月24日(日)愛知 DIAMOND HALL   開場16:00/開演17:00
10月27日(水)福岡 DRUM LOGOS 開場17:00/開演18:00
11月1日(月)東京 LIQUIDROOM   開場17:00/開演18:00
11月2日(火)東京 LIQUIDROOM   開場17:00/開演18:00
12月26日(日)北海道 道新ホール 開場16:15/開演17:00
ツアー詳細:https://www.kalma-official.com/news/?page_no=&id=134
グッズ好評発売中:https://shop.eplus.jp/kalma/

KALMA オフィシャルサイト

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる