なぜK-POPはアジアと世界の境界線を越えられたのか? Coldplay×BTSなどコラボ曲が与える衝撃
このような市場規模や再生回数、登録者数といった定量面のインパクトにとどまらないのがK-POPの実力、底力である。今年行われた第63回グラミー賞では、BTS「Dynamite」が最優秀ポップ・デュオ/グループ・パフォーマンス部門にノミネートにされ、惜しくも受賞は逃すもののK-POPが世界の音楽シーンの最先端にいることを鮮烈に印象づけた。さらに彼らは今年9月に国連総会でスピーチをするなど、その影響力の高さを証明し続けている。
すでに欧米だけでなく、世界の音楽シーンを語る上でも避けて通れない存在にまで浸透したK-POPは、ついにアジアから太平洋を超えて、アメリカの音楽シーンへと続く橋をかける。そして欧米のメジャーアーティストとK-POPのコラボレーションこそが、その橋を完成させる最後の1ピースとなった。レディー・ガガのアルバム『Chromatica』ではアリアナ・グランデやエルトン・ジョンを客演に招いた楽曲が収録されるなか、「Sour Candy」ではBLACKPINKとコラボ。さらに8人組ボーイズグループ・ATEEZもペンタトニックス「A Little Space」のリミックスに参加。大物アーティストと肩を並べても引けを取らないパフォーマンスは、実力に裏付けされたK-POPの強みでもある。
そして、先ごろ発表されたColdplayとBTSによる「My Universe」の衝撃は、冒頭に紹介したポールとマイケルによる「セイ・セイ・セイ」のインパクトに引けを取らないだろう。Coldplayとのコラボという事実もさることながら、クリス・マーティンがBTSに提供するつもりで書き下ろされた楽曲には、BTSメンバー全員分のパートがあり、かつ韓国語詞も含まれる部分に純度の高さを感じる。才能と才能がぶつかり合い、そこからひねり出される相乗効果を真髄とするならば、「My Universe」は本当の意味でのコラボ作品であると言える。
このようにK-POPと世界規模のポップミュージックとの素晴らしいコラボの数々は、「音楽は、国境を越える」という言葉が「音楽は、国境を越えた」と過去形に変化した瞬間を象徴しているようだ。