「社会に出てもまともに働ける自信がなかった」 Ado、“陰な自分”と向き合い夢を掴んだ行動力

Ado、“陰キャ”が夢を掴んだ行動力

歌うことをやめようと思ったことはない

【Ado】キライ・キライ・ジガヒダイ! 歌いました

――活動を続ける中で大きな手ごたえを感じた瞬間もありました?

Ado:当初は自分の方向性があまり定まっていなくて、どう歌ったらいいんだろうってずっと思っていたんですよね。自分が憧れている姿になるためには、もっと有名になりたいという思いもあったので、ただ動画を投稿するだけではダメだなと。そんなとき、和田たけあき(くらげP)さんの「キライ・キライ・ジガヒダイ!」を歌ってみた動画を上げたところ、Twitter上の動画で初めて100いいねをもらえたんですよ。

――そこでは歌い方で何か工夫したんですか?

Ado:そうですね。「キライ・キライ・ジガヒダイ!」はボーカロイドの音街ウナちゃんが歌っているかわいい曲なので、他の方の“歌ってみた”動画もみんなそっちに寄せていることが多かったんです。ただ、かわいい曲ではあるけど、歌詞はけっこう尖った内容だと感じたので、私はちょっとがなりの要素を多くした歌い方にしてみたんですよね。その結果、いつもよりも多くの反応をいただけることになったので、そういう歌い方が自分には合ってるのかもしれないなって思うようになったんです。

――自身の歌の持ち味を認識できた出来事だったと。

Ado:まぁ、当時はまだフワフワした感じで、そこまではっきり認識していたわけではなかったですけど、振り返ればけっこう大事なターニングポイントだったのかもしれません。

――投稿を続ける中で挫折を味わった瞬間はなかったですか?

Ado:いや、それはもちろんいっぱいありましたよ。「今日は調子いいぞ」って思った直後に、「私には向いていない世界なんじゃないかな」「私なんかに需要があるのかな」って考えてしまったりとか、もう毎日がジェットコースターのような感じで(笑)。以前よりはコンプレックスを抱くことが少なくはなってきているんですけど、やっぱりいろんな瞬間に自分に対してネガティブに考えてしまうことが多くて。誰かに何かを言われたとかではなく、基本的には自分の思い込みみたいなことで気持ちが落ちることが多いですね。

――例えば思うように歌えないことで落ち込んだりすることもあります?

Ado:それはあまりないかもしれないです。もちろん録音中に「もうダメだ!」みたいな気持ちになることはありますけど、なんだかんだ完成したものを聴くと「あ、けっこういいじゃん」って思えちゃうというか(笑)。だから、いろいろ落ち込むことはあっても、歌うことをやめようと思ったことはないんですよね。「ここでやめたらダメだ」っていう思いも自分の中には常にありましたし。

――感情の浮き沈みや迷いはありつつも、自分の歌だけは信じられていたということなのかもしれないですね。

Ado:あぁ、そうなのかもしれないです。ただ、自分の歌声に関して好きかと聞かれると微妙ですけどね(笑)。たまに「すごくかっこいい声ですね」と言っていただいても、自分としては「え、何言ってるんだろうこの人⁉」って感じになっちゃうというか。「おばさんみたいな声ですね」とか「声が老けてますね」ってコメントがあったかと思えば、「すごく子供っぽい声ですね」って言われることもあって。「どっちですか!」みたいな感じなんですけど(笑)、でもみなさんにいろんな受け取り方をしていただけるのはすごくおもしろいなって思います。自分では思ってないですけど、けっこう変な声なのかもしれない(笑)。

――昨年10月に初のオリジナル曲「うっせぇわ」でメジャーデビューをされましたが、メジャーというフィールドに関してはどんな思いを抱いていましたか?

Ado:まったく未知の世界だったので、「何をするの?」みたいな感じでした。なんだかすごい場所っていうことだけは認識していましたけど、昔からボーカロイドの曲ばかりをネットで聴いてきていたので、それがどれくらいすごいことなのかっていう規模感はけっこうフワフワしてましたね(笑)。

――そこで一歩を踏み出せたのはどうしてだったんでしょう?

Ado:高校生のときに「私って将来、何やってるんだろう?」って考えたことがあったんですけど、その段階では絶対にニートになると思ってたんですよ(笑)。さっきも言った通り、コンプレックスの大きい陰な人間なので、社会に出てもまともに働ける自信がなかったというか。テキパキ働いている自分の姿もまったく想像できなかったですし。とは言え、何かをやらなきゃダメだよなとは思っていたので、まずはずっと続けている歌い手としての活動で何か爪痕を残すようなかっこいいことをしよう思ったんです。で、当時やっていたYouTubeライブで100~200人の方が観ている前で、「私は高校生の間に、18歳までにZepp DiverCityでワンマンライブします!」って宣言したんですよ。

――大きな夢を公言して、後戻りできないようにしたわけですね。

Ado:そうですね。ただ、そのすぐ後にコロナ禍になってしまったので、その目標を実現させるのが難しくなってしまって。そんなときに奇跡かのごとくメジャーデビューのお誘いが来たんです。「うわ、すごい!」って思いましたね。「これは大きな爪痕になる、やったー!」って(笑)。ただ、その爪痕は自分に対してのものだったような気もしていて。このままじゃダメだと思っていた自分にとって、メジャーデビューという爪痕を残せたことが未来に気持ちを繋げてくれたというか。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる