ネクライトーキー、自信に満ち溢れた最強のロックバンドへ 進化を確信させた『ゴーゴートーキーズ!2021』ファイナル
「男子三日会わざれば刮目して見よ」という言葉があるが、ロックバンドはなおさらである。いつの間にかガラッと変わっていたり、メキメキ進化していたりする。アルバム『FREAK』のリリースツアーとして、6月19日の神奈川 1000 CLUBを皮切りに全国22カ所を巡ってきた『ゴーゴートーキーズ!2021』。北は北海道、南は沖縄まで(もっさはMCで「地図のこういう(線で区切られた)ところにも行きました!」と胸を張っていた)を回り、辿り着いた23公演目。ファイナルの9月30日、豊洲PIT。個人的にネクライトーキーのライブを現場で観るのは1年以上ぶりであり、まして今回バンド史上最長のツアーを巡ってきたなかで、バリバリ成長しているらしいことは風の便りで聞き及んでいたのだが、実際に彼らはめちゃくちゃタフで筋肉質で自信に満ち溢れた、最強のロックバンドになっていた。
まずシンプルに、音が信じられないほど力強い。1曲目となった「誰が為にCHAKAPOCOは鳴る」から、カズマ・タケイ(Dr)の踏むバスドラの低音がズシンズシンと腹に響く。PITの音響の関係とか、たまたまPAがこの日いつも以上に興が乗ってローを突きがちだったとか、決してそういうことではないだろう。なぜなら、パワフルなのはドラムだけではなかったからだ。メンバーによる振り付け(音に合わせて右を向いたり左を向いたりする、MVでもやっている振り)もバッチリ決まり、もっさ(Vo/Gt)のボーカルがエモーショナルに爆発した2曲目「北上のススメ」、朝日(Gt)の暴れ馬のようなギターが冴え渡った「はよファズ踏めや」、5人の鳴らす音がカオティックな塊となって一気に坂道を転げていくような「きらいな人」。もう頭4曲だけでも、何回「うわあ」と口に出そうになったことか(歓声はNGなので口には出せなかったが)。
でもメンバーはいたって自然体。最初のMC、PITを埋め尽くしたお客さんの数に「びっくりしちゃった」ともっさは素直な感想を口にする。コロナの状況が依然シビアな中、無事ファイナルまでやってこれたことにホッとしたような表情も見せつつ、「最後まで楽しんでいってください!」(朝日)とライブは続いていく。複雑なリズム展開を見せる「踊る子供、走るパトカー」から、ギターリフの快感がほとばしる軽快なロックンロール「カニノダンス」を経て、「こんがらがった!」を投下。中村郁香(Key)のキーボードのフレーズが、もっさの歌うメロディをますますポップに輝かせる。
それに続けて披露されたのが「魔法電車とキライちゃん」。朝日がかつてボカロP・石風呂として発表した楽曲だ。序盤で演奏した「きらいな人」も含め、ネクライトーキーは石風呂楽曲もレパートリーにしていて、2019年にはそれを集めた『MEMORIES』というミニアルバムもリリースしているが、「魔法電車とキライちゃん」はそこにも収録されていなかった曲だ。この曲についてはのちのMCで朝日が感慨深そうに語っていたが、確かにこの日鳴らされた「魔法電車~」はとても瑞々しく、生まれ変わったような輝きに満ちていた。いや、この曲だけではない。今回のツアーは当然『FREAK』の楽曲が中心となっているのだが、例えば「オシャレ大作戦」のような初期曲も、『FREAK』後にリリースされた「ふざけてないぜ」のような新曲も、全部が全部きれいにアップデートされていた。
それをことさら強く感じたのが、「魔法電車~」に続けて演奏された「波のある生活」。これはもともと『徒然草』を解釈して楽曲にするという企画に基づいて作られた楽曲。シングル『ふざけてないぜ』のカップリングになっているのだが、これが音源で聴くのとはまったく違う印象だったのだ。ちょっと前のめりなテンポ、アタック感の強いサウンド、解釈をさらに再解釈してリニューアルさせたような新鮮さだった(中村のキーボードの音色が違っていたのも新鮮さの要因のひとつだったのだが、実はそれはミスだったということがその後のMCで明かされた)。代表曲のひとつ「許せ!服部」ではメンバー全員での「服部!」というコールに加え、もっさが手にした「CD」「ライブ」というプラカードに合わせて、バンドがアレンジを切り替えていくという彼らのライブではおなじみの展開も入れ込み、各パートのソロ(中村のショルダーキーボードも!)も交えて一気に会場をヒートアップさせる。