kiki vivi lily、“味覚”で表現した手の届く範囲のファンタジー 生活スタイルの変化が音楽に与えた影響

kiki vivi lilyインタビュー

細野晴臣さんの曲や松本隆さんの歌詞で歌ってみたい

ーーその後に、ハワイアンレゲエ調の「You Were Mine」に続きます。

kiki vivi lily:ハワイアンレゲエ、大好きなんですよ。ハワイに行くのも好きで、ハワイに行ったときは必ずレゲエコンサートに行くんです。

ーーちょっと意外ですが、ハワイのどんなところが好きですか。

kiki vivi lily:いろいろあるんですけど、自分の悩みがちっぽけに思えるところが好きです。大自然の中にいるから、全てを肯定できるし、好きなことを全部やろうって思える。ハワイだとそういうパワーを感じられるので好きですね。

ーーkiki viviさんは都会のナイトミュージック感もあるけど、そういうオーガニックなムードもあるんですよね。

kiki vivi lily:そうですね。この曲のイメージは、本名の私ですね。これまではそういう姿をあまり見せていなかったけど、今までいろんなサウンド感を提示できたので、そろそろ飾らない自分を見せてもいいのかなと思って。カッコつけない自分というか。

ーーハワイにいるプライベートな自分を見せたわけですね。

kiki vivi lily:見せちゃいましたね(笑)。歌詞はどストレートなラブソングです。海と共に気持ちを浄化していくイメージですね。ただ、一般的なハワイアンレゲエで歌われるものとは異なるものを目指してみたので、そのギャップを楽しんでもらえたらいいなと思います。

ーー明るいレゲエだけど失恋なんですよね。タイトルの〈You Were Mine〉と繰り返していて。

kiki vivi lily:You are mineじゃなく、wereで、寂しい、過去形なんだっていう。You are mineとか、You are my babyみたいなレゲエの歌詞、すごく多いんですよ。あえてwereなんだっていうのを見せたくて、このタイトルにしました。

kiki vivi lily「New Day (feat. Sweet William)」Lyric Videof

ーーそして、8曲目「New Day」はSweet Williamさんと作ってますね。

kiki vivi lily:彼には、私のアルバムではリミックス的な立ち位置で入ってもらうことが多かったので、今回は彼のビートを先に作ろうっていうことになって。それは、ワンループで仕上げる感じでやりたいねっていう話をしたんですね。最初に彼に組んでもらったものも良かったんですけど、ジャズピアノのサンプリングが入っていたんですよ「Lazy」をレコーディングしたスタジオがピアノも使えるので、彼が最初に組んだビートのピアノのサンプリングの部分をもう一回弾き直してもらって。それを彼に渡して、チョップしたり、入れ替えたりしながら組み立てて作ってもらいました。

ーー複雑な作り方ですよね。

kiki vivi lily:ずっとそういう作り方を彼としたら良さそうだなと思っていたので、それができたのが良かった。彼のルーツであるジャズっぽい空気もありつつ、ちょっと爽やかに仕上げたいなと思って、後味が爽やかになるようなバランスにしました。

ーーこの流れもいいですよね。「You Were Mine」で、ハワイの波と共に思い出を流して、飛行機に乗って帰国した感じもします。

kiki vivi lily:波の音で終わって、そこからストリングスが入ってくる流れが綺麗だなと思って。夕暮れ時から、早朝になっていくんですけど、ストリングスがあって、飛行機の音がして。そこが美しいなと思って、こういう並びにしました。

ーー味覚で言うと、〈グレープフルーツ〉が出てきます。

kiki vivi lily:ちょっと苦いんですけど、後味がスッキリするような、甘酸っぱい味を表しました。歌詞は失恋まで行くかわからないんですけど、それぞれの場所で、それぞれに前を向いて生きていけたらいいよねっていうストーリーを込めましたね。

ーーそして、最後にピアノの弾き語りによる「Onion Soup」が入ってます。

kiki vivi lily:友達にエールを送る気持ちを込めて作った歌なんですけど、弾き語りで作って荒田くんとMELRAWの二人にデモを聴いてもらったら、「これは、kiki viviが弾いて歌ったらいい」と言っていただいて。私はアレンジする気満々だったんですけど、絶対に弾き語りの方がいいって説得されました。そのままのアレンジで、本当に頑張って録りました(笑)。

ーー夫婦の喧嘩と仲直りが描かれてますよね。恋に落ちた瞬間や失恋とか、ドラマチックな場面じゃなく、本当に日常に近いものを歌っています。

kiki vivi lily:そうですね。でも、こういう時ってありますよね。みんな、そういう夜を超えて一緒にいるんだなと思うと、すごいなと思って。私はまだそこまでの深い愛はわからないので、想像しながら書いてみました。

ーーオニオンスープはご自身にとってどんなものですか。

kiki vivi lily:ちょっと特別な日に出てくるご飯。朝食にもなるし、夜食にもなる。お母さんが作ってくれた時に、ちょっとスペシャル気持ちになっていたのを覚えています。トーストとチーズが浮かんでいて、ちょっと手が込んでる。それが出てくると、あたたかい気持ちになるし、愛を感じたんですよね。あと、〈ビール〉も歌詞に出てきますけど、喧嘩した夜に飲みたくなりますよね。飲まなきゃやってられない感じになるけど、頑張ってオニオンスープを作ってるっていう二人ですね。

ーーこの流れで1曲目に戻ると、1回目に聴いた時よりも朝を感じるんですよね。

kiki vivi lily:そうですね。そのままずっとエンドレスで聴いてください(笑)。

ーー(笑)。2枚目のフルアルバムを作り終えて、今後はどう考えてますか。

kiki vivi lily:まず、いいプロデューサー陣とミュージシャンたちと一緒に全てを楽しく作り終えることができて、大満足していて。自分たちは手作りでやってるので、作品を作るごとに、どんどんスキルが上がっていくんですよね。例えば、歌の録り方とか、細かいところがわかっていく。それがすごく楽しくて、毎回、作り終えるたびに、次はもっといいものが作れるっていう気持ちになるんですよ。「また成長したね、僕たち」って。次はさらにミックスまで自分たちでやろうと思っているし、この作品で経て得たスキルや学びをもって、またさらに一緒に作品を作っていきたいなと思います。

ーー今作でも新たなコラボがありましたが、今、誰か一緒にやってみたい人はいますか。

kiki vivi lily:憧れの人はいっぱいいますね。大好きな細野晴臣さんとやってみたいし、松本隆さんの歌詞で歌ってみたい。夢は膨らみます。この想い、細野さんと松本さんに届けてください。

ーーこのインタビューから届くのを願ってます。そして、初のワンマンツアーも控えてます。

kiki vivi lily:私、前回のワンマンが2019年なので、もうみんなに会いたくて仕方がないし、ライブがやりたくてたまらないんですよね。だから、もう、本当に楽しみにしてます。バンドとの関係性もこの数年でちょっとずつ築き上げてきて、今回の「Lazy」にも参加してくれた。そういう状態で、お客さんの前でみんなで音を鳴らしたことがまだないので、本当に楽しみですね。私は聴いてくださっている方の人生を肯定したいという気持ちや、明るい気持ちになって欲しいという願いがあるので、大変な状況にあるとは思いますが、気持ち的には気軽にライブに来ていただいて楽しんで欲しいなって思いますね。

kiki vivi lily『Tasty』
kiki vivi lily『Tasty』

■リリース情報
2nd Full Album『Tasty』
2021年10月1日(水)リリース
デジタル配信リリース
CDはWEB通販(https://kikivivilily.official.ec/)及びライブ会場限定にて数量限定販売
¥2,500(税込)
※特典ステッカー付き

1.Intro : wip
2.Lazy
3.手を触れたら
4.Yum Yum (feat. Shin Sakiura & Itto)
5.Whiskey
6.Interlude : Tasty
7.You Were Mine
8.New Day (feat. Sweet William)
9.Onion Soup

HP:https://columbia.jp/kikivivilily/
SNS:https://lit.link/kikivivilily

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