『鬼滅の刃』が賑わした音楽シーンの隆盛 LiSA、梶浦由記らによる主題歌・劇伴がもたらした影響を解説
その「炎」を作編曲し、LiSAと共作詞したのが梶浦由記。彼女と椎名豪がTVアニメ、『無限列車編』を通じて担当した劇伴も、『鬼滅の刃』ブームの大きな立役者と言えるだろう。『Fate』シリーズや『ソードアート・オンライン』シリーズ、『魔法少女まどか☆マギカ』などでも知られる梶浦の音楽は、国や時代を超越した壮大さと幻想感が持ち味。コーラスワークで多用される、いわゆる“梶浦語”による独特の響きも特徴的で、アニメを知らずとも『歴史秘話ヒストリア』(NHK総合)の音楽も彼女の手によるものと言えば、ピンとくる人も多いだろう。
『テイルズ オブ』シリーズや『ゴッドイーター』などの音楽を担当してきた椎名豪も、シンフォニックかつドラマティックなサウンドに定評がある。『鬼滅の刃』で初めて組んだ2人だが、人間を喰らう鬼との闘いという、ある意味ダークファンタジーに分類される作品の性質を考えると、まさに最強の組み合わせ。具体的にはTVアニメ1期のメイン劇伴を椎名、エンディングテーマと1、2話のBGM数曲を梶浦が。『無限列車編』では主題歌とそのアレンジ曲を梶浦、劇中のBGMを椎名が担当している。
特筆すべきは、『鬼滅の刃』の劇伴が“フィルムスコアリング”という特殊な方法で制作されていること。指定されたメニューシートに沿って曲を作り、それが映像に当てられていくのではなく、実際に出来上がった映像を観ながら曲を付けていく手法のことだ。必然的に各シーンの長さや切り替わるタイミングが把握できるため、作曲者は場面をまたがって長尺の曲を作ることができ、よりストーリー展開や登場人物の心情に寄り添ったBGMが実現する。『鬼滅の刃』がアニメ放映をきっかけに支持を広げたのも、これら作品世界と緻密に結びついた音楽の力が大きいことは間違いない。
実際、今年の5月には『TVアニメ「鬼滅の刃」竈門炭治郎 立志編 オリジナルサウンドトラック』がリリース。昨年11月からは『TVアニメ「鬼滅の刃」オーケストラコンサート~鬼滅の奏~』が全国7都市で、今年9月4・5日には『「鬼滅の刃」オーケストラコンサート~鬼滅の奏~ 無限列車編』がパシフィコ横浜で開催された。縁の下の力持ち的役回りの劇伴が、これだけの脚光を浴びるのも、その音楽の質および作品世界とのシンクロ性の高さゆえだろう。
今年の秋・冬に放映予定のTVアニメ2期『遊郭編』についても、音楽は“梶浦由記・椎名豪”の名前がクレジット。引き続き2人が劇伴を担当するようなので、ここでも美しい映像と荘重な音楽のコラボレーションを楽しめそうだ。そして、未だ発表されていない主題歌については誰が担当するのか。1期の際は「一人のアーティストがオープニング・エンディング両方を歌うことで、映像作品としての完成度や統一感を高め、特別な作品にしたい」というスタッフサイドの希望により、エンディングテーマで梶浦由記とLiSAのタッグが実現したが、果たして今回は? 期待と想像に胸ふくらませながら、そう遠くはないであろう発表を待とう。