梶浦由記が生み出す音楽は“時代を照らす光”に 『鬼滅の刃』や『まどか☆マギカ』楽曲に見る、作品世界の表現

梶浦由記
『Yuki Kajiura LIVE vol.#11 elemental Tour 2014.4.20@NHK Hall + Making of elemental Tour 2014』

 大ヒット中の映画『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』で、LiSAが歌う主題歌「炎」をLiSAと共に作詞し、同楽曲の作編曲を手がけた他、TVアニメ『鬼滅の刃』(TOKYO MXほか)エンディングテーマ「from the edge」(FictionJunction feat.LiSA)の作詞・作曲・編曲、さらに同シリーズの劇伴を椎名豪と共同で行っている梶浦由記。これまで『魔法少女まどか☆マギカ』や『ソードアート・オンライン』シリーズ、『劇場版「Fate/stay night [Heaven's Feel]」』など数多くのアニメ作品の劇伴を手がけるほか、連続テレビ小説『花子とアン』(NHK総合ほか)やミュージカル作品など実写作品の音楽も数多く手がけている。数々の人気作を引き立てる、梶浦の音楽の魅力とは?

シンフォニック、梶浦語……独自のサウンドでヒットを連発

 音楽ユニット=See-Sawのメンバーとして1993年にシングル『Swimmer』でデビューした梶浦由記。担当楽器はキーボードで、メンバーには現在作詞家としても活躍する石川智晶がボーカルとして在籍していた。1995年〜2001年の活動休止を経て、2002年に『機動戦士ガンダムSEED』(TBS・MBSほか)のエンディングテーマ「あんなに一緒だったのに」のヒットでその名を知られるようになった。『機動戦士ガンダムSEED』では、FictionJunction featuring YUUKA名義で挿入歌「暁の車」もリリース。両曲は昨年放送された『全ガンダム大投票 40th』(NHK BSプレミアム)にて12位(「あんなに一緒だったのに」)と16位(「暁の車」)にランクイン。特に「あんなに一緒だったのに」は、キャラクターの心情の奥深くを読み取りながら、あくまでもJ-POPの歌詞として昇華させた石川の歌詞のクオリティの高さはもちろん、梶浦による耳に残るキャッチーなメロディと民族的な要素を取り入れたサウンドと巧みなコーラスワークは、FictionJunction以降の梶浦楽曲の試金石となった。

See-Saw - あんなに一緒だったのに

 梶浦の活動でもっともエポックメイキングだったのは、Kalafinaのプロデュースだろう。Kalafinaは、梶浦が劇伴を手がけた『劇場版「空の境界」』の主題歌と挿入歌のために結成され、『空の境界』のほか『Fate/Zero』や『魔法少女まどか☆マギカ』といったシリーズ作品など、人気アニメの楽曲を数多く担当した。

 中でも『魔法少女まどか☆マギカ』は、それまでのステレオタイプな魔法少女とは異なるダークな内容で社会現象となったが、そうした独特の設定や絵の世界観を表現する上で、梶浦の音楽が大いに貢献した。たとえばKalafina「Magia」は、ヘヴィなロックサウンドを中心に無国籍なシンフォニックサウンドと、縦横無尽に繰り広げられる緻密なコーラスワークの重なりによって、聴く者をミステリアスな異世界へと引き込んだ。

Kalafina 『Magia』

 さらに、その魅力のひとつとなっているのが、梶浦語と呼ばれる彼女独自の何語でもない言葉だ。たとえば『歴史秘話ヒストリア』(NHK総合)オープニングテーマ「Historia:opening theme」は有名で、歴史の神秘を紐解くという番組の趣旨を如実に表現していた。この梶浦語はさまざまな楽曲で聴くことができ、『魔法少女まどか☆マギカ』で、ファンの間で通称「マミさんのテーマ」と呼ばれた「Credens justitiam」も同様だ。梶浦楽曲のいわゆるJ-POPの枠を逸脱したサウンドメイクと言語に縛られない表現は、国内はもとより世界で高い評価を得ており、Kalafinaに関しては海外ライブも成功させている。

梶浦由記, Eri - Credens justitiam

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