桑田佳祐、ファンに送る勇気と感謝 「炎の聖歌隊」とツアーに込めた音楽人としての姿勢

 桑田佳祐が、2021年9月15日、新作EP(ミニアルバム)をリリースする。ソロ作品としては、アルバム『がらくた』(2017年8月)以来となる本作のタイトルは、「ごはん味噌汁海苔お漬物卵焼きfeat. 梅干し」。この題名の由来は、桑田が考える“究極の献立”。日常的な献立、ずっと味わいたいもの、日本ならでは……といろいろな想像をかき立てるタイトルを冠した本作には、「SMILE〜晴れ渡る空のように〜」(「民放共同企画“一緒にやろう”応援ソング」)、「金目鯛の煮つけ」(SOMPOグループCMソング)、新曲「Soulコブラツイスト〜魂の悶絶」に加え、未発表の新曲「さすらいのRIDER」「炎の聖歌隊 [Choir(クワイア)]」「鬼灯(ほおずき)」を収録。また、完全生産限定盤には 2021年 3月に東京・Blue Note Tokyoで開催された無観客配信ライブ『静かな春の戯れ〜Live in Blue Note Tokyo〜』が全編完全収録される。

 本作のリリースが発表されると、Twitterでは「久々のリリース!そして初のミニアルバム!楽しみだなぁ」「ミニアルバムにブルーノートライブって超贅沢」「桑田さんのミニアルバム聴きながら江ノ電乗ってまた海眺めに訪れたいな」といったファンからの声が多数寄せられ、4年ぶりの新作に対する期待度の高さを証明した。

桑田佳祐「炎の聖歌隊 [Choir(クワイア)]」
桑田佳祐「炎の聖歌隊 [Choir(クワイア)]」

 待望のEP『ごはん味噌汁海苔お漬物卵焼きfeat. 梅干し』に先がけ、本稿では新曲「炎の聖歌隊 [Choir(クワイア)]」を紹介したい。

 軽快なエイトビート、華やかなイントロのフレーズから始まる「炎の聖歌隊 [Choir(クワイア)]」は、桑田佳祐のポップサイドを押し出した楽曲。切なさと爽やかさを併せ持ったメロディ、心地よい疾走感に溢れたバンドサウンド、そして、The Beach BoysやThe Venturesを想起させるアレンジメント。湘南サウンドの最新版とも言える、“これぞ桑田佳祐!”と喝采を送りたくなるナンバーである。

 〈旅の空 雨が上がったら/まだ見ぬHeaven〉というフレーズが聴こえてきた瞬間、解放的な気分に誘い込まれる歌詞も素晴らしい。〈開演お待ちどうさん/ご来場 大変ご足労さん〉に象徴されるように、この歌詞の軸になっているのは、“ライブでみなさんとお会いしたい”という切なる願いだ。

 昨年から続くコロナ禍によって、我々の生活は一変し、大切な人と会えなくなり、外食やコンサートとなどの楽しみが奪われ、不安に満ちた日々が続くなか、未来への希望を失いかけている人も多いはず。そんな状況のなかで桑田佳祐は一貫して、“少しでもみなさんに楽しんでほしい、元気を出してほしい”という思いのもと、数々のエンターテインメントを提供してきた。昨年6月と12月に横浜アリーナから届けられたサザンオールスターズの配信ライブ、そして、今年3月にBlue Note Tokyoで行われたソロの配信ライブ。この3本のライブは音楽ファンにとって、コロナ禍における、数少ない嬉しい出来事だったことは間違いないだろう(桑田がライブを通し、医療従事者、エッセンシャルワーカーの方々への感謝を伝え続け、ライブエンタメ事業に従事する人たちの仕事を生み出すべく行動していたことも、改めて記しておきたい)。

 「炎の聖歌隊 [Choir(クワイア)]」の根底にあるのも、ファンに対する強い思いだ。個人的にもっとも心を揺さぶられたのは、〈生きるのが辛い事もある/勇気を出して/笑顔になろう/この場所で〉。心配事ばかりに捉われていると、どうしても笑顔を忘れてしまい、楽しいことに身を置くことを恐れてしまう。負のスパイラルに陥りがちな人々に向かって桑田は、“せめてこの場所にいるときは、勇気を出して楽しもう”と呼びかけているのだと思う。深く、真摯なメッセージを、楽しく分かりやすい歌、誰もが気軽に親しめるポップソングに結びつけているのも、本当に粋(いき)だ。

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