櫻坂46「流れ弾」MVに見る過去と現在 時代の閉塞感を打破する爆発的な生命力

 百花繚乱、絢爛豪華、狂喜乱舞。

 櫻坂46が公開した新曲「流れ弾」のMVは、そうした言葉がよく似合う作品だ。監督を務めたのは映像ディレクターの池田一真。過去に欅坂46の「サイレントマジョリティー」や「エキセントリック」「月曜日の朝、スカートを切られた」といった作品を手掛けた監督だ。MVの公開にあたり池田監督は「何年も前から描きたかったこのグループの持つ魅力をこの作品で表現できた」とコメントしている(※1)。大量の花びらが舞い散るの中でもなりふり構わず踊るメンバーたちの姿は、妖艶だが品があり、しなやかだが芯がある。欅坂46が描いてきたものと、櫻坂46が描こうとしてるもの、そのどちらもを強く感じる痛快な一作である。

櫻坂46『流れ弾』

 このMVは、大きく分けて二つのパートで成り立っている。黒い衣装で踊る前半と、真っ赤な衣装で踊る後半だ。厳密に言えば黒と赤が重なるシーンもあるが、基本的にはこの二つで世界観が真っ二つに分かれている。

 前半の黒い衣装では、グループのセンターを務める田村保乃が群れに迷い込んだ仔羊のようにふらつきながら、あれよあれよという間に踊らされ、無表情でパフォーマンスし始める。特筆すべきは無数の光がメンバーたちに向けられている点で、彼女たちが“注目されている状況”なのがステージセットから読み取れる。床には金箔が散りばめられていることからも、“輝かしい過去”の回想のような設定として捉えることができるパートだ。それは、まさに改名前の欅坂46時代を表しているのだろう。重厚感のある黒の衣装をまといながらも、最後はキラキラとした演出で踊り切っているのが印象的だ。

 そして、その後にやってくるのが“女王のお出まし感”のあるカットである。目まぐるしいカット割りが続くこのMVの中でひと際異彩を放つこの長尺のシーン。真紅のドレスに身を包んだメンバーたちが、これまでとはまるで別人のように不敵な笑みを浮かべながらこちらを見つめている。さらに田村による決め台詞「Wait a sec.」を引き金にして、そこから狂ったように踊る終盤の一連のダンスシーンは圧巻の一言だ。

 監視、拡散、炎上といったSNS社会の負の側面。それが行き着く世界を予見したような歌詞に対して、このMV後半の舞台となっているのは、極彩色の草花が飾られたテーブルに、床には花びらが敷き詰められた百花繚乱のパーティー会場である。鮮やかな赤で染められた衣装。流れ弾に撃たれて出た血飛沫のように勢いよく噴射する花びら。そんな“狂った世界”でも堂々と踊る凛としたメンバーたち。疾走感、躍動感、爆発力、生命力……これまでも同グループの作品に対して使ってきた言葉だが、今作ではそのレベルが振り切れている。特に今作で導入された4K映像で鑑賞すると、“髪まで踊る”が信条の彼女たちの髪の毛一本一本までくっきりと確認でき、ワントーンのドレス衣装の光沢や濃淡まではっきりと分かるほどの、その映像美と臨場感に思わず圧倒されてしまう。



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