『映画「東京リベンジャーズ」オリジナル・サウンドトラック』インタビュー
映画『東京リベンジャーズ』を彩る音楽はどのように生まれた? 作曲家 やまだ豊が語る“物語を活かす劇伴の美学”
やまだが影響を受けた“リズムで聴かせる音楽”
ーーちなみに近年、やまださんに影響を与えたアーティストはどなたですか。
やまだ:意外に思われるかもしれないですが、劇伴作曲家ではなく、ロック系アーティストなんです。特に、先ほど名前を挙げたI Prevailからはかなり影響を受けています。最近はデジタルが主流の中で、ドラムがどこに行ったのか分からないようなロックバンドも多いんですが、そんななかでI Prevailは思いっきり「バンドサウンド」なんですよね。曲の構成はEDMのようでも、ギターソロに相当する部分がドロップだったり、楽器でビルドアップしていたり、カッコいいと思える音作りをしているバンドです。僕は特にドラムがちゃんと鳴っていて、全体のリズムがカッコいいかどうかを重視して音楽を聴きます。
ハリウッドには、ロック出身の映画音楽作曲家が何人かいて、代表格のトレント・レズナーは何よりリズムがカッコいいと思える曲を書いている。それにトレント・レズナーは、アルペジオだけの曲もすごく良いですよね。最近のEDMにも通ずると思うんですが、音数を少なくリフでグルーヴを生むみたいな、そういう構成も曲を作る時のヒントにしています。
ーーやまださんの曲はロックだけではなく、『キングダム』など荘厳な劇伴も聴きごたえがあります。
やまだ:自分の場合、王道でクラシカルな曲であってもいろんな要素を混ぜていきたくて。クラシックは原理主義的なところがあって、バッハ、モーツァルトがずっと“神”として位置している。でも自分はそこだけに寄るのではなく、ジョン・クーリッジ・アダムズのような目新しい曲作りにも挑戦していきたい。クラシカルにロックスピリットを重ねていきたいなって思います。
過去から学んで未来につなげる
ーー『東京リベンジャーズ』の物語に絡めた質問なのですが、主人公のタケミチは高校卒業後、ずっとどん底の人生を歩みますよね。それをなんとか好転させようとしますけど、やまださんはこれまでの仕事のなかで、どん底だった時期はあるのでしょうか。
やまだ:2013年から今の事務所に所属しているのですが、それより前は別の事務所に所属していました。ただ、当時は仕事がほとんどない状況で。今だったら仕事がない状況であっても、それこそインプットする時間に充てたりして、音楽の勉強をすると思いますけど、当時はまだ未熟で、誰かから課題を与えられないことには何もできなかったんです。
ーー経験があまりないなかで、自分で課題を見つけて動くのは難しいですよね。
やまだ:だから自分を高めたり成長したりすることが、なかなかできませんでした。そのあと現在の事務所に移籍したら、いきなり映画の仕事が入ったんですけど、そのときは自分のなかにストックがなさすぎて、ものすごくキツくて。一気に強度が上がりましたから。筋トレでたとえると、それまで20キロのダンベルを上げていたけど、突然「今日から100キロでやりましょう」みたいな感じで。
ーーそれは不可能ですね。
やまだ:案の定、体調を崩して入院しちゃったんです。だけど、マネージャーが入院先へ「次の台本です」と持ってくるという……(笑)。
ーーはははは。だけどそれまでは仕事がなくて苦い思いをしていたわけですから、急に忙しくなって悩ましい反面、嬉しい状況ですよね。
やまだ:そうですね。当時もただ単純に「良い音楽を作ってください」とリクエストされたら、自分なりに書くことができました。だけど、書いたことがないジャンルの音楽に関しては良いものが作れない。その当時だったら、ヒップホップの知識が少なかったから、カッコいいヒップホップを書くのが難しかった。だけど勉強していって、「カッコいいヒップホップって、まずトラップなんだな」とか気づいていくんです。しかも最近であれば、YouTubeを観れば「トラップの作り方」みたいな動画が上がっていたりするじゃないですか。そうやって勉強できるなら、なんでも良いと思うんです。BPMだってジャンルによってある程度は決まっていたりして、実は方法論ってそんなにないですから、「最新のヒップホップ」だったとしても、その95%は伝統を踏襲している。残りの“真新しい5%”を見つけるために、過去のことを学んでいくという感じですね。
ーー過去が現在へとつながるという部分では、まさに『東京リベンジャーズ』と同じですね。最後に、サウンドトラックで特にやまださんの推しポイントとなる曲は、どれでしょうか。
やまだ:「Second Chance」という曲が個人的にはお気に入りです。仲間との絆や未来、そういった大切なものを守りたいと、心のスイッチが入る瞬間を表現しました。一段ギアが上がった曲になっているので、サントラを聴いて映画のシーンを思い出してほしいです。
■リリース情報
やまだ豊『映画「東京リベンジャーズ」オリジナル・サウンドトラック』
2021年7月7日(水)リリース
通常盤(初回仕様限定)¥3,000(税込)
※封入特典(初回仕様限定):特製“東京卍會”ステッカー
ダウンロード/ストリーミングはこちら
<収録曲>
1.Time Leap
2.Kickin’ It ft. Frank Bentley
3.Powerless
4.PUNKS
5.Familiar Faces
6.Fleeting
7.Revengers
8.Breakdown
9.Inner Strength
10.Graveyard
11.Summer
12.GET REKT
13.RUMBLE
14.BLOODTHIRST
15.Without You
16.Here and Now
17.Ready 2 Brawl ft. Michael Gildner
18.Out For Revenge
19.Overcast
20.Illuminate
21.Second Chance
-BONUS TRACK-
22.名前を呼ぶよ -Instrumental-
■公開情報
映画『東京リベンジャーズ』
全国公開中
出演:北村匠海、山田裕貴、杉野遥亮、今田美桜、鈴木伸之、眞栄田郷敦、清水尋也、磯村勇斗、間宮祥太朗、吉沢亮
原作:和久井健『東京卍リベンジャーズ』(講談社『週刊少年マガジン』連載中)
監督:英勉
脚本:高橋泉
配給:ワーナー・ブラザース映画
(c)和久井健/講談社 (c)2020 映画「東京リベンジャーズ」製作委員会
公式サイト:tokyo-revengers.jp
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公式Instagram:@revengers_movie