『You are you』インタビュー
氷川きよしが語る、長いキャリアを経て言えるようになった本音 新作『You are you』で届ける説得力のあるポップス
ダメな人や無駄な人なんて、地球上にはひとりもいない
ーー改めてアルバム『You are you』の話題に戻ります。前作『Papillon』はポップスアルバム第1弾というのもあり、やりたいことを全部詰め込んだ結果、かなり幅広い作品に仕上がったと思います。でも、今作はサウンドもメッセージも焦点がより絞れたことで、統一感が強まっている印象を受けました。氷川:今回は特に自分というフィルターを通して、自分だからこその説得力のあるものを届けたいなと思いました。やっぱり、みんなには自己肯定してほしいと思うんです。それは、どんな人にでも……今は自己否定の世の中になってしまっているから、自分を肯定してもらえるようなアルバムにしたかったんです。
今作では「私が味方だから」と、みんなに伝えたいです。どんな人も命を持っているわけで、その中に持っているであろう優しい部分も認めたい。世間的に見たらどんなにダメな人にでも「ダメな人なんていないよ」と伝えたい。そういうことを今回は歌いたかったんです。ダメな人や無駄な人なんて、地球上にはひとりもいないですから。
ーー誰もが色々な役目を背負って、この世に存在しているわけですものね。
氷川:このアルバムには大きなテーマとして “レジリエンス(復活力)”という言葉が存在していて。今回のアルバムでは以前から親交のあった木根尚登さんに制作に参加していただいたんですが、木根さんとアルバムについて考えていたときに「“レジリエンス”という言葉がいいよね」という話が出てきたんです。困難を乗り越える力として、今すごく注目されている言葉なので、レジリエンスという言葉の意味に沿って曲を作っていきたいねと。今みんな困難の中にいますけど、それでも生きていかなくちゃいけないし、次にやることを考えていかないといけない、そこに対応していかなければいけない。絶望なんてしていられないですよ。だから、困難を乗り越える力=レジリエンスをテーマに、本来の自分に戻っていこうというアルバムにしようと決めました。
ーー作家さんに作詩をお願いする際、氷川さんからはどんなオーダーをするんですか?
氷川:アルバムの大きなテーマに沿いつつ、1曲1曲ごとにキーワードをお伝えしています。例えば「Jeanne d’Arc〜聖女の微笑み〜」だったらジャンヌ・ダルクをテーマに作ってほしいとお願いします。氷川きよしという人物ありきの作品であり、みんなに通ずるものじゃないといけないので。
ーー氷川さんの歌であり、氷川さんのフィルターを通したみんなの歌でもあるわけですものね。
氷川:そのとおりです。せっかくですので1曲ずつ説明していくと……まず、1曲目の「Frontier」は開拓者という意味のタイトル。おこがましいですが、そのぐらいの意気込みで22歳から演歌の世界に入り、デビュー曲から『紅白』に出場させていただき、そこからずっと自分にしかできない道を開拓していこうという気持ちでここまで来ました。最初は“ヴィジュアル系演歌歌手”、次は“演歌界のプリンス”と言われるようになり、ずっとやり続けてきたからこその「Frontier」だったと思うんです。だから、新しい靴で歩もうという思いがこの曲には詰まっています。アルバムはそこからスタートするわけです。
2曲目は「Jeanne d’Arc〜聖女の微笑み〜」。ジャンヌ・ダルクは女性だったけど男性のように生きるしかない状況の中で戦い、革命を起こした人ですよね。女性だからといって誰かに守ってもらって生きるのではなくて、自分ひとりで立ち上がって命を守る、そういう使命感のある女性だったんです。そこと自分を重ねるのはおこがましいですけど、そうせざるをえないときにそこで戦って、結果を出して形にしていかなくちゃいけないこともある。たとえ可能性が1%だとしても諦めずに戦う、そういうジャンヌの生き方を歌いたいなと思って作ってもらった1曲です。
そして、3曲目の「Labyrinth」で迷宮に迷って、次の「小夜月」では人を好きになり、そこで苦しみを味わう。でも、私は苦しんでもあなたを苦しませようとは思わない、好きだけどそれはエゴじゃない……人って人を好きになるとエゴが生じたりしますけど、この曲ではそれは違うということを伝えたかった。自分は歌を歌う者としては悲劇を知る人間でいたいんです。そうじゃないと、いい歌を歌えない気がしますから。
ーー影の部分を知らないと、良い表現はできないと。
氷川:そうです。影の部分が歌では光になりますし、苦しみ哀しみを知ってこそ歌が輝くというのは、芸術においてのひとつの法則ですよね。そういう思いが込められたのが「小夜月」です。
ーー「紫のタンゴ」は湯川れい子さん作詩の、アルバム『南風吹けば』収録曲の新アレンジです。
氷川:湯川先生が書いてくださった、〈女も男も無いのさ だからって だからって何さ〉という歌詞がすべて。男だから、女だからと人を判断してはダメですよね。その人の内面と人間性で付き合っていく、そういうことを教えてくれる、人間主義の時代が来たなと感じさせてくれる作品です。この曲は今後もずっと歌っていきたい1曲ですね。
ーーこの歌詞含めて、これからの氷川さんにとっての新たな代名詞になりそうですね。
氷川:この曲はテレビでも歌いたいんですけどね。いろんな人に聴いてもらいたいです。
ーー次が「9月に逢いたい」。氷川さんが作詩された楽曲です。氷川:今まで一生懸命応援してくださった皆さんに対する思い、純粋に自分のことが好きで、歌を楽しみにしていて、待っていてくれる人への感謝と愛情あふれる思いを綴った1曲です。
次の「生まれてきたら愛すればいい」は、ヤマザキマリさんに作詩をお願いしました。マリさんとはずっと仲良くさせていただいていて、「(詩を)書いてくれませんか!」とお願いしたら快諾していただけたんです。それで作曲を誰にお願いしようかなと思ったときに、パッとひらめいたのが木根さん。シャンソンで作ってほしいとお願いしたんですが、相性は最高でしたね。マリさんと木根さん、お二人の人柄と人間力があふれた作品に仕上がったので、そこをどう表現しようかなと、一生懸命歌わせてもらいました。
ーー今回、木根さん作曲の楽曲が、「RESET」のカバーを含めて3曲収録されています。
氷川:木根さんに参加していただく中でいろいろ相談に乗ってもらいましたが、そこで木根さんの既存曲も歌いたいなと思ったんです。「RESET」はご本人が作詩作曲された1曲で、木根さんの曲を色々聴いた中で特にグッときてしまって、「これを歌わせていただけませんか?」と相談したんです。最初、木根さんは「僕のカバーはいらないんじゃない?」と言っていたんですけど、「今この曲を歌いたんですよね」と伝えて、歌わせていただきました。
ーーカバーといえば、その木根さんが所属するTM NETWORK「SEVEN DAYS WAR」のカバーも収録されています。
氷川:「SEVEN DAYS WAR」も、どうしても今のタイミングで歌いたくて。それで野村義男さんにギターを弾いてもらってカバーしました。今歌いたいと思ったものをそのときに歌わないと、次はないと思うので、その感性だけは大切にしようと思っています。以前は「次にとっておこう」と思ったんですけど、今しかないですよね。考え方も古くなってしまうから。だから、自分の感性とか自分を信じてあげたいなと。そのほうが悔いがないと思いますので。
ーー「Glamorous Butterfly」は大黒摩季さんの書き下ろし曲ですね。
氷川:これは摩季さんと深夜に電話やメールしたりして、色々なやり取りの中で書いてくれた曲です。タイトルも前作がフランス語での蝶々(=Papillon)だったから、今度は英語の蝶々(=Butterfly)で“飛べ!”という攻めの思いを込めて歌っています。そして最後は、昨年布袋寅泰さんから声をかけていただいて、布袋さんのアルバム『Soul to Soul』でご一緒したときの「I Don't Wanna Lie feat. 氷川きよし」で締め括りです。
ーーすごく綺麗な流れのアルバムになりましたね。実際、通して聴いているとすごく心地良いんですよ。
氷川:この曲順は映画音楽などを手掛けてきたスタッフにも意見を聞いたんです。まず自分が歌いたい曲をチョイスしたんですが、これをどういう構成で並べたらいいかわからなかったので。結果、すべてひとつのストーリーに沿って並んでいるので、それぞれ聴いた方が自分自身を重ねて楽しんでもらえたらうれしいです。
ーーその作り込まれた構成が、聴いたときの心地良さにつながっているんでしょうね。
氷川:『Papillon』と比べるとさらに流れが良いですよね。前作は初めての経験だったからああいう作品に仕上がりましたけど、今聴くと1曲1曲が強すぎて、ちょっと恥ずかしさもあります(笑)。でも、今回は何回でもリピートできる作品になりましたし、自分もすでに数えきれないほど繰り返し聴いていますけど、まったく飽きないんですよ。
ーーそれ、わかります。僕も一度聴いたら、何度も聴きたくなりましたから。
氷川:本当ですか? きっと皆さんにも何度も楽しんでもらえるアルバムに仕上がったんじゃないかなと確信しています。いろいろと難しい世の中になってしまいましたが、このアルバムが皆さんにとって“困難を乗り越える力=レジリエンス”になってくれたらうれしいです。
※1:https://realsound.jp/2020/02/post-500150.html
サイン入りチェキプレゼント
氷川きよしサイン入りチェキを1名様にプレゼント。応募要項は以下の通り。
応募方法
リアルサウンド公式Twitterと公式Instagramをフォロー&本記事ツイートをRTしていただいた方の中から抽選でプレゼントいたします。当選者の方には、リアルサウンドTwitterアカウント、もしくはInstagramアカウントよりDMをお送りさせていただきます。
※チェキはランダムでの発送となりますので、メンバーの指定は受け付けておりません。
※当選後、住所の送付が可能な方のみご応募ください。個人情報につきましては、プレゼントの発送以外には使用いたしません。
※当選の発表は、賞品の発送をもってかえさせていただきます。
リアルサウンド 公式Twitter
リアルサウンド 公式Instagram
<締切:9月15日(水)>
■リリース情報
氷川きよし
ポップスアルバム第2弾『You are you』
8月24日リリース
<Aタイプ>
【初回完全限定スペシャル盤】CD+DVD
COZP-1800~1801 ¥3,700(税込)
※豪華歌詩ブックレット
※ステッカー封入(Aタイプ絵柄)
<Bタイプ>
【通常盤】CD
COCP-41522 税込¥3,200(税込)
※豪華歌詩ブックレット
※ステッカー封入(Bタイプ絵柄)
<収録曲>
1.Frontier
作詩:石丸さちこ/作曲/森 大輔/編曲:森 大輔
2.Jeanne d’Arc~聖女の微笑み~
作詩:塩野 雅/作曲:塩野 雅/編曲:梅堀 淳
3.Labyrinth
作詩:塩野 雅/作曲:塩野 雅/編曲:NaO
4.小夜月
作詩:中村真悟/作曲:中村真悟/編曲:中村真悟
5.紫のタンゴ(New ver.)
作詩:湯川れい子/作曲:杉本眞人/編曲:梅堀 淳
6.9月に逢いたい
作詩:kii/作曲:平 義隆/編曲:内田敏夫
7.生まれてきたら愛すればいい
作詩:ヤマザキマリ/作曲:木根尚登/編曲:Nishi-Ken
8.RESET
作詩:木根尚登/作曲:木根尚登/編曲:清水信之
9.You are you
作詩:kii/作曲:木根尚登/編曲:清水信之
10.SEVEN DAYS WAR
作詩:小室みつ子/作曲:小室哲哉/編曲:Nishi-Ken
11.Glamorous Butterfly
作詩:大黒摩季/作曲:大黒摩季/編曲:Yohey Tsukasaki
12.I Don’t Wanna Lie feat.氷川きよし
作詩:Micca/作曲:布袋寅泰/編曲:布袋寅泰
<特典MV>
1.You are you
2.Glamorous Butterfly
■関連リンク
氷川きよし公式Instagram
氷川きよしオフィシャルサイト