山本彩、ダンスミュージックで告げる新章の幕開け 海外クリエイターによる配信リミックス&新曲「Donʼt hold me back」の意図を読む
山本彩が8月20日を皮切りに過去の楽曲リミックスを5曲と新曲「Don't hold me back」を順次リリースする。これらの動きから感じるのは、アーティスト・山本彩としての新たな幕を開ける期間になるということだ。
ダンスミュージックへのアプローチで打ち出す新しい武器
リミックスは8月20日の「イチリンソウ」から1週間置きに、「Homeward」(8月27日)、「君とフィルムカメラ」(9月3日)、「Larimar」(9月10日)、「ゼロ ユニバース」(9月17日)とリリースが続いていく。筆者は一足先にすべての楽曲を聴いたのだが、特徴的なのは5カ国のリミキサーがそれぞれ違ったジャンルの色を展開していることだ。「イチリンソウ」を手がけたのは、ニュージーランドのオークランドを拠点に活動するファンク/ニューディスコのアーティスト・La Felix。彼の代表曲「Delicious」を彷彿とさせるダウンビートながら、原曲の雰囲気を残しつつ、しっかりとボーカルを聞かせるアレンジに仕上がっている。
一方の「Homeward」はアップビートに、ボーカルへのエフェクトも加わったリミックスに。手がけたのはハウス&ディスコシーンで活躍するニューヨーク在住のアーティスト・Bit FUNK。「君とフィルムカメラ」は、野崎良太が率いる特定のメンバーを持たない自由なミュージックプロジェクト・Jazztronikによって、クラブミュージックへと変貌を遂げた。イントロから唸りを上げるベースサウンドが原曲とはまた違った顔を見せてくれている。強烈なキックでスタートする「Larimar」は、韓国出身のDJ/プロデューサーDaulによるリミックス。異国情緒溢れるアウトロは、癖になるユニークなサウンドである。ラストを飾る「ゼロ ユニバース」をリミックスしたのは、今年10月に日本デビューも決定しているedbl。原曲の世界観を基調にしながら、メロウかつソウルフルなアレンジが加えられた。
結果的には、「イチリンソウ」はオーストラリア、「Homeward」はアメリカ、「君とフィルムカメラ」は日本、「Larimar」は韓国、「ゼロ ユニバース」はイギリスと世界各国のリミキサーが集結した形だ。自身がラジオパーソナリティを務める『SPARK』(J-WAVE)や『MOS BURGER HEART STUDIO』(FM802)でもダンスミュージックを選曲することの多い山本彩。最近の放送でも、『SPARK』でVicetone feat. Daisy Guttridge「Waiting」をプレイしたばかりだ。今回のグローバルに根ざした連続配信リリースからは、山本彩が海外にも音楽を届けたい、ワールドワイドな活動に挑戦したいという強い意思も感じられる。
そして、8月25日には新曲「Donʼt hold me back」がリリースされた。作詞・作曲を山本彩が手がけ、バンドメンバーとしてもお馴染みの小名川高弘が編曲を手がけている。驚くのはAメロ終わりの30秒辺りから突入するラップパート。3rd アルバム『α』収録の「stay free」の時とは一変した節回しが一気にドープな雰囲気を強くさせる。作詞はAFRO PARKERのメンバーで、「ヒプノシスマイク」の楽曲制作にも関わる弥之助との共作。山本彩にとっての本格的なラップ曲の誕生である。サビは高音を張り上げるボーカルが印象的であり、バキバキに歌い踊る山本彩の姿が容易に想像できる。間奏からDメロ~ブレイクダウン、大サビで爆発ーーという流れはダンスミュージックにおける王道の手法であり、山本彩としては新たに手に入れた強力な武器でもある。