三浦風雅、今度こそ自らの手で掴み取った夢 月9ドラマ楽曲抜擢、注目ソロシンガーが「Start」を歌うまで

三浦風雅、自らの手で掴み取った夢

 はじまりの朝のような曲だ。夢に向かって旅立つ日の清々しい朝、そんな風景が見える。タイトルは「Start」。7月19日にリリースされた、三浦風雅のメジャーデビュー曲である。

 壮大なミュージックビデオも印象的だ。広い空と、どこまでも続く道。開放的な楽曲と相まって、どこにだって行けそうな、なんだってやれそうな気持ちになる。三浦は、その足で一歩ずつ、ゆっくりと確実に歩いていく。音を楽しむように、噛みしめるように。伸びやかな歌声は爽快でありつつも甘く、語りかけるように温かく心に寄り添う。背中を押すよりも、ともに歩こうと手を繋いでくれるような、真に優しい声だ。

 紆余曲折を経て、ようやく辿り着いた三浦の“Start”。ときには立ち止まり、諦めそうになる日もあった。けれど自らの手で掴み取った「今」。「Start」は三浦そのもの、三浦風雅だからこそ歌える歌だ。

 同曲はフジテレビ系“月9”ドラマ『ナイト・ドクター』のオリジナルナンバーに抜擢。ともにドラマのオリジナルナンバーに起用されたTani Yuukiや「ドライフラワー」「かくれんぼ」などの人気楽曲を生み出した優里など、気鋭の男性ソロシンガーの活躍がめざましい昨今、三浦風雅もまた、その一角を担うに申し分ない歌唱力と表現力を持つ。今知っておくべき注目のアーティストとして、その軌跡を辿りつつ魅力に迫る。

今度こそ、自らの力、自らの手で、掴み取った夢

 三浦にとって音楽のはじまりは、兄が好きだったコブクロ。「轍-わだち-」を聴いたときには「全身に衝撃が走った」と語っている。高校の文化祭で歌を披露することもあった。自身のなかに芽生えた夢に気付きながらも、周りの声に押され流され、一度は心に蓋をした。

 そんなとき、三浦に転機が訪れる。高校卒業の思い出づくりとして、校庭で歌った「100万回の「I love you」」(Rake)。撮影していた友人が動画をTwitterに投稿すると、瞬く間に拡散された。この、嘘のようなタイミングさえ、三浦を音楽の世界に導き、繋ぎとめるための運命であったと今ならば思える。

 三浦は、自身の夢と向き合い始めた。路上に出て歌い、スクールに通ってレッスンに明け暮れる日々。思いもよらぬ壁にぶつかることもあったが、そんなときはまた、路上に戻って歌い続けた。2018年1月には、100人収容のライブハウスで初のワンマンライブを開催。半年後の2ndライブでは200人を集めた。次は300人、と意気込んだ3rdライブは「大人の事情」により、本番3週間前に中止を発表。その後半年間、三浦は音楽活動を休止した。

 音楽をやめようとまで思いつめた三浦を支えたのは、ファンの存在。ふとSNSを開けば、「三浦風雅」を広めるべくファンが路上ライブの映像を拡散していた。活動休止中にも関わらず、増えていくフォロワー。「ここでやめたら無責任だ」と、活動再開を決意した。

 そうして2019年6月、1stアルバム『Miura Fuga -To be Reborn-』を、翌月には2ndアルバム『Make a Story』をリリース。「300人」を飛び越え、400人規模のワンマンライブにて、三浦は復活した。

 三浦の名を一気に世間に知らしめたのは、4000人が参加したオーディション。視聴者参加型の審査では、路上時代から三浦の歌を愛し続けたファンの大きな支えがあった。そして獲得したグランプリ。やっとファンに恩返しができるーーそう思った矢先、メジャーデビューは白紙となった。

 社会の厳しさと冷たさ、自身の甘さを痛感したという三浦。ダメージは食らえど、折れて倒れはしなかった。この経験を機に「意地でも売れてやろう」と決意新たに、2021年3月個人事務所「株式会社MAKE F ENTERTAINMENT」を設立。7月19日、ポニーキャニオンからついにメジャーデビューを果たした。今度こそ、自らの力、自らの手で、掴み取った夢。支えてくれたファンとともに切った「Start」。三浦風雅というアーティストが今、メジャーシーンを歩き始めた。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「アーティスト分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる