和ぬか、神野メイ……バイラルヒットの中でも目を引く歌詞 言葉にできない“本音”を歌う恋愛ソングに支持集まる?

 楽曲がヒットする要因として、SNS上でのバズが前段にあることはもはや珍しくない。TikTokやYouTube、Twitterといった空間で話題となり、そこから一気に音楽チャートを駆け上がって世の中に知れ渡っていくという流れだ。今や新曲は昼夜問わず公開されているし、既存の曲ですらいつどこで火が付くかわからない。小規模のものであればバズはそこら中で起きている。ただし、そのすべてが社会的に大きなレベルのインパクトを残すわけではない。その中から少しずつ精査されていき、やがて生き残ったもの(=強度のあるもの)だけが広く世間に届くことができるのだ。

 昨年で言えば、瑛人の「香水」や、DISH//の「猫」、Rin音の「snow jam」といった作品がその良い例と言える。また他にもTani Yuukiの「Myra」や、りりあ。の「浮気されたけどまだ好きって曲。」といった作品もネット発のヒットとして注目を浴びていた。今年なら優里の「ドライフラワー」(リリースは2020年10月)がその代表と言えそうだ。こうしたヒット曲は、その時その時代が欲する何かしらの要素を持っていたと考えるのが自然だろう。人々が求める“何か”を持っていたから受け入れられ、広まっていく。そうでなければ早々とどこかで勢いが止まってしまうはずだ。

優里 『ドライフラワー』Official Music Video(ショートver.)

 それを踏まえて、主に今年の上半期にバイラルチャートの上位に位置していた和ぬかの「寄り酔い」は非常に興味深い作品であった。どことなく和な雰囲気を漂わすメロディの中毒性と、音頭のようなリズムによるユニークな音作りが面白い。この独特の世界観を持つ「寄り酔い」は、今年2月に発表されるとMVがYouTubeで瞬く間に再生回数を伸ばし、現在は1000万回を超える。まさに世間まで“届いた”一曲となった。

寄り酔い/和ぬか【Music Video】

 この曲で印象深い点は、なんと言ってもその特徴的な歌詞であろう。タイトルの“寄り酔い”とは、曲中に出てくる〈酔いで寄りたいの〉というフレーズを表した言葉で、酒の力を借りて君に近付きたいという女性の赤裸々な恋心が表現されている。歌詞に綴られているのは、〈綺麗な愛〉よりも〈肌に任す〉ことを望む少々大胆な〈私〉の本音。それでも相手を目の前にすると〈言えるわけないじゃん〉と自分の気持ちを素直に伝えられない様子がなんともいじらしい。

 一方で、昨年末に公開された神野メイとHenriiの「クリームソーダとシャンデリア feat.ねんね」も上半期に話題を集めていた楽曲の一つだ。どことなく懐かしいエレクトロサウンドの中で、男女2人の恋の駆け引きが描かれる。

クリームソーダとシャンデリア feat.ねんね / 神野メイ(mei) & Henrii 【Official Music Video】

 2人の間にゆったりとした時間が流れるように〈バニラ〉がじわじわと溶けていくクリームソーダに対して、じっとして動かない(だが美しい)シャンデリアという2つのアイテムの対比は、2人の関係性を喩える秀逸な表現だ。〈君〉がよそ見する〈青い鳥〉とはTwitterのことだろうか。舞台は現代だが、全体的にレトロなテイストでファンタジー感があるのも良い。

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