METAFIVE、再始動~5年7カ月ぶり新作『METAATEM』に高まる期待 特級ミュージシャン集う音楽集団の最新モードを紐解く

METAFIVE、2021年本格再始動に高まる期待

 ここでMETAFIVEの成り立ちをざっと振り返っておこう。

 METAFIVEとは、高橋幸宏、テイ・トウワ、小山田圭吾、砂原良徳、ゴンドウトモヒコ、そしてLEO今井という6人のメンバーで2014年に結成された。当初は「高橋幸宏&METAFIVE」という名前だったことからもわかる通り、ライブ用に集められた高橋のバックバンド的な色合いが濃かったが、小山田がサントラを担当した『攻殻機動隊ARISE』にオリジナル曲を提供しライブをやったころからバンドとしての手応えを感じ始め、やがてMETAFIVEとバンド名を改め、2016年1月に1stアルバム『META』をリリースしたのである。『METAATEM』はそれ以来となる2ndアルバムだ。

 METAFIVEの中核にあるのは、元サディスティック・ミカ・バンド~YMOという伝説的バンドを歴任し、ソロとしても数多くの名作を送り出してきた高橋の洗練されたヨーロッパ的なポップ感覚だ。ほかのメンバーはなんらかの形で高橋に影響を受け、あるいは活動を共にしてきたミュージシャンばかりで、すべて高橋が声をかけての参加だ。

 テイはYMOに影響を受けて音楽を始め、坂本龍一のラジオ番組にデモ音源を投稿したことがプロになるきっかけとなった。高橋との共演も多いが、METAFIVEに於いては曲作りのほか、唯一楽器を演奏せず、ターンテーブル等のDJ機材を使ってノイズ成分などの「汚し」の部分を担当する。アルバムのアートディレクションもテイの担当だ。

 小山田圭吾はもちろんコーネリアスでの活動が知られているが、SKETCH SHOWや再始動後のYMOのツアーギタリストとして参加するなど高橋との繋がりも強い。METAFIVEにおいてはギタープレイのみならず楽曲提供も積極的に行い、「環境と心理」ではリードボーカルも担当している。

 砂原良徳は、言わずと知れたYMOの熱狂的なファンであり、直接的な高橋との共演はなかったが、親交は深い。METAFIVEでは曲作りやシンセサイザー(主にシンセベース)の演奏のほか、音源のマスタリングも担当。音響面での総合的なディレクションを担っているようだ。

 ゴンドウトモヒコはYMOのツアーサポートのほか高橋のソロやpupa等にも参加するなど、近年の高橋の音楽活動にはほぼ参加、右腕的存在と言っていいだろう。METAFIVEでは曲作りやシンセサイザーの演奏のほか、ユーフォニアムやフリューゲル・ホーンなどのプレイで、METAFVEのエレクトロニックな演奏の中でオーガニックな要素を担う。

 そしてメンバー中最年少のLEO今井は、ソロ活動や向井秀徳とのKimonosで知られるが、高橋のソロアルバムの英詞制作に参加し、その存在と声の魅力を買われ高橋に抜擢された。METAFIVEではボーカル、作詞、作曲と貢献度が高い。「LEO君のボーカルがいいとみんなが認めるようになってから、METAFIVEがバンドとしてまとまってきた」とは高橋の言葉だが、彼のボーカルの個性METAFIVEの音楽性を規定しているところはあるようだ。

 全員がソングライターでありプロデューサーでありトラックメイクもできる。バンドリーダー級の一騎当千のメンバーが揃っても、決してエゴのぶつかり合いにはならない。絶対的なリーダーが自分の考えを押し通すようなことも決してない。6人のメンバーが対等の立場で発言し、それぞれがお互いに敬意を払い尊重し信頼して、任せるところは任せる。それだけのキャリアと実績と自信と余裕のあるオトナなメンバーが揃った、オトナのバンドなのである。誰かが曲の素となるアイデアを提示し、メンバー全員で回しながら少しずつアイデアを加え、曲を仕上げていく。そんなフラットな関係で成り立っているから、音楽性も広く、そして柔軟になる。

METAFIVE - 環境と心理 -

 「環境と心理」は作詞作曲とも小山田によるミディアムナンバーで、クールなサウンドとメランコリックなメロディで移りゆく景色と心理を細やかに描写していく。コーネリアスの『Mellow Waves』との共通点を感じさせる曲だが、小山田、今井、高橋と持ち味の異なるボーカリストが歌い継ぎ、砂原やテイによるエレクトリックな仕掛けやゴンドウの吹くホーンなど、各メンバーの持ち味をさりげなく忍ばせることで、コーネリアスとは異なるMETAFIVEらしさを演出する。楽器の数は多いがごちゃごちゃせずすっきりと音場を見通すことができるのはミックスとマスタリングの勝利だろう。

 アルバムの音源はいまだ手元に届いておらず、この2曲だけでアルバムの内容を推し量るのは無理があるが、おそらくはアルバムの中でもソフト/ハードで両極に位置するであろう対照的な2曲の中間に、5年7カ月の間に経験を積み進化したメンバーの色を反映したさまざまな表情の楽曲が、バラエティ豊かに並ぶはずだ。

 コロナのパンデミックによる自主隔離、さらに高橋幸宏の闘病などさまざまなアクシデントを乗り越え、再始動に向けて本格化した新生METAFIVEの全貌が見えるまで、あと少しである。

■小野島大
音楽評論家。 『ミュージック・マガジン』『ロッキング・オン』『ロッキング・オン・ジャパン』『MUSICA』『ナタリー』『週刊SPA』『CDジャーナル』などに執筆。Real Soundにて新譜キュレーション記事を連載中。
facebook:https://www.facebook.com/onojima
Twitter:https://twitter.com/dai_onojima

「The Paramedics」

■リリース情報
「The Paramedics」
楽曲試聴・購入はこちら

2ndアルバム『METAATEM』(読み:メタアーテム)
8月11日(水)リリース
CD品番・価格:CD:WPCL-13260/価格¥3,080(税込)  
VINYL品番・価格:WPJL-10136/7(アナログ2枚組)/¥4,950(税込)
予約購入URL:https://metafive.lnk.to/metaatem

 ■ライブ情報
『METAFIVE "METALIVE 2021"』
日程:2021年7月26日(月)
会場:KT Zepp Yokohama
開場:17:30
開演:18:30

■関連リンク
Twitter: https://twitter.com/metafive_news
Instagram: https://www.instagram.com/metafive_news/
Facebook: https://www.facebook.com/METAFIVE/

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