adieuが『adieu 2』で開いた新しい扉 君島大空、古舘佑太郎、カネコアヤノらを魅了した歌声を聞いて
女優の上白石萌歌がadieu名義による2ndミニアルバム『adieu 2』を6月30日にリリースした。前作『adieu 1』に引き続き、小袋成彬、Yaffle、塩入冬湖(FINLANDS)が参加しているほか、君島大空、古舘佑太郎、カネコアヤノが新たに楽曲提供。前作から約2年を経て、より表現力が増した彼女の歌声。その内面から溢れ出す、感受性豊かなadieuの音楽の魅力に迫る。
adieuは2017年秋、映画『ナラタージュ』の主題歌として野田洋次郎(RADWIMPS)が作詞作曲した「ナラタージュ」を歌い話題を集める。その歌声は“時を止める歌声”と称され多くの反響を呼んだ。2019年の冬に1stミニアルバム『adieu 1』をリリース。同作には、小袋成彬・Yaffleが作詞作曲、シンプルなビートにノイジーなギターがミックスされた「強がり」、今年4月に『THE FIRST TAKE』で歌われ大反響を呼び、320万回を超える再生数を記録した「よるのあと」、さらにいしわたり淳治とadieuが歌詞を共作、澤部渡(スカート)が作曲したアップテンポの爽快なナンバー「蒼」や、小袋成彬が提供した恋心のきらめきと儚さを歌った「天気」などが収録された。
YouTubeチャンネル『THE FIRST TAKE』のインタビュー企画『THE FIRST TAKE MUSIC』内で、『adieu 1』について、「名刺のような作品。自分の存在を探るような、adieuとは何かを模索していた」と評したadieu。また「新たな一面、新しいadieuとしての顔をお見せしている。ライブをしたいと思ったり、ライブですてきに映える曲もあります」と、『adieu 2』についても語った。
『adieu 2』は、君島大空が作詞作曲を手がけ、4月11日に先行配信された「春の羅針」で幕を開ける。君島は、カンヌ国際映画祭のショートフィルムコーナーに入選した映画『離れても離れてもまだ眠ることを知らない』の音楽や、『no art, no life』(NHK Eテレ)のテーマ曲「星の降るひと」など、穏やかで深遠な世界観、アコースティックとサンプリングによるサウンドコラージュなどで注目される音楽家だ。
君島は「春の羅針」について、「萌歌さんの声が 春の長い暁闇の中から 夜明けの光の代わりになって 夢の中にまで射し込んできてくれる景色を想いながら書きました。この歌がひとり分のどうにもならない夜に辿り着くことを静かに願っております」とコメント。同曲は、春の足音が聞こえてくるような楽曲で、美しく透明感のあるadieuのウィスパーボイスは、低く垂れ込めた雲の合間から差した、ひと筋の光のような輝きを放つ。同曲によって、穏やかに夜が明けるように、アルバムが幕を開けるのだ。
続く2曲目は、『THE FIRST TAKE』で初披露された「愛って」。ロックバンド“2(ツー)”の古舘佑太郎が作詞作曲を手掛けた同楽曲は、The SALOVERS時代から古館のファンであったadieuからのオファーを受け、古館自身もその歌声に惚れ込んだことで長年温めていたというこの曲をぜひ歌って欲しいと提供した。
前述の『THE FIRST TAKE MUSIC』でadieuは同曲について、「明るくて真っ直ぐな光を感じる。今まで歌ってきた曲とは違い、遠くを見据えるような明るい印象。愛にはいろいろな形があって、大きさとか温度とか、人それぞれ違う形がある。この曲の物語の中で愛の形を探るような、そんな歌なのかな」と、今までにない新鮮さを感じたと話した。悲しいことがあったわけではなくとも、独り言をつぶやくような等身大の歌声と古館の飾らない言葉、そしてメロディが琴線に触れ、ふと涙が溢れてしまう楽曲だ。