AKB48、乃木坂46……“歌手以外”の道へ進むアイドルたち 卒業後のセカンドキャリアを追う

大木亜希子はセカンドキャリアの取材本を発表

 さて、ここまで名前を挙げた元メンバーたちは、アイドル時代から現在につながる活動をおこなってきた。ただ実際は、アイドルを卒業して進路をいろいろ模索し、違った職業にたどりついた元メンバーの数の方が圧倒的に多い。むしろそちらが真の意味で「セカンドキャリア」と呼ぶにふさわしい気がする。

 ここで取り上げたいのは、元SDN48の大木亜希子である。彼女は2012年3月のグループ解散後、しばらくタレント業をおこなっていたが、25歳で所属の芸能事務所を退社。WEBメディアに入社し、ライターとなった。そして2018年にフリーライターとして独立。翌年には、アイドルのセカンドキャリアを取材した書籍『アイドル、やめました。』を上梓した。

 同書では大木が、社内の打ち上げでAKB48グループの曲をカラオケで歌ってしまうなど元アイドルの肩書きに縛られていたこと、そういった過去から抜け出して新しい人生を歩んだときの気持ちが素直な目線で綴られている。

 大木による取材文のなかで印象的だった人物が、元NMB48・赤澤萌乃だ。グループ卒業後に燃え尽き症候群となり、やりたいことが見つからず焦っていたそうで、赤澤は大木に「ちゃんと進路を決められずにいたので、もう『どうしようかな』って感じでした」と迷走したことを明かしている。

 やりたいことが見つからないまま毎日を送っていた赤澤。だがある日、アイドル時代によく着ていたブランドの服を買いに行き、そこで思い切って「ここで働きたい」と店員に声をかけた。そして面接を経て就職。アパレル店員として働き始めた。客とコミュニケーションをとりながら服を選ぶなど、接客業にやりがいを得ているという。

 同書を読むと、アイドルのセカンドキャリアは、先々までレールが敷かれているものではないことがよく分かる。むしろグループを卒業することが分かっていながら、未来予想図が白紙状態のまま、外の世界へ飛び出していく。大木は、「すべての元アイドルが、引退時に「次なる目標」を決めているわけではない」「彼女(赤澤)を見ていると、人は時に「見切り発車」することも大切なのではないかと私は思う」と記している。

 アイドル卒業後も芸能界に残って持ち味を発揮している元メンバー。一方で、違う世界でチャレンジをしている元メンバー。彼女たちがセカンドキャリアでも幸せを掴んでいく様子を陰ながら応援したい。

■田辺ユウキ
大阪を拠点に、情報誌&サイト編集者を経て2010年にライターとして独立。映画・映像評論を中心にテレビ、アイドル、書籍、スポーツなど地上から地下まで広く考察。バンタン大阪校の映像論講師も担当。Twitter:https://twitter.com/tanabe_yuuki/

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