『映画大好きポンポさん』インタビュー
カンザキイオリが明かす、活動を続けていく上での原動力 「湧き上がる感情こそが創造の源」
花譜ちゃんは感情お化けなんです
ーー花譜さんが歌う「例えば」は、ジーンやポンポといったクリエイターの内面を象徴するような曲だと感じました。劇中でも重要なポイントで流れる曲ですが、歌詞やメロディを考える上で大事にしたポイントを教えてください。
カンザキ:この曲を平尾監督から制作してほしいとお願いされた時、参考楽曲が自分がめちゃくちゃ好きなアーティストさんの曲だったんです。運命! とも思ったし、それにラフの映像で曲が流れるシーンを確認したら、めちゃくちゃ鳥肌が立つシーンだったし。ドキドキしながら制作しました。
平尾監督からのリクエストや、物語をもとに、登場キャラクターの創造の意味を強烈に表現する世界観を目指して作りました。ロックだけどあまり挑戦したことがない気色だったので、自分の中でも新たな世界観を開けた気がしています。
ーー劇中では、ジーンが映画の編集をする上で、残す部分と削る部分の選定に苦悩するシーンがあります。作品をより良いものにするために、様々なものを切り捨てることの重要性が描かれていたと思いますが、カンザキさん自身もジーンと同様の苦悩を経験したことはありますか?
カンザキ:切り捨てるのって本当に難しいよなって、私も映画を見て思いました。一つの曲を作ってる時、湧き上がる言葉や曲のイメージ全てが美しいと思ってしまうんですよね。美しくて、壮大で、最高!って思っちゃう。でもそうやって全部を詰め込んで詰め込んで詰め込みまくったものって、なんとなく方向性がバラバラで、最終的に何が言いたいのかわからないことがあります。作曲を始めた時によくありました。
全部最高の言葉なのに……なんでうまくいかないんだ!って苦悩しちゃいますね。そういう時には信頼できる人に曲を聴かせて、客観的な意見をもらってから削るようにしてます。「全部最高に決まってるじゃん病」に罹っている時は、正常な判断ができませんからね。客観的に意見をもらって、一回「は? 最高に決まってんじゃん、なんでそういうこと言うの? ムカつく!大嫌い!」ってなって、その後「あ、でも確かにな……」っていう流れで冷静になることはよくありますね。後は少し時間をおいて、改めて作品を見つめてみたり。ゆっくり時間をかけて作品と向き合うことが、一番大切かもしれないです。
ーー花譜さんとは2018年から約3年ほどシンガーとクリエイターという関係を築いていますが、改めて花譜さんの歌にどんな魅力を感じますか?
カンザキ:もう3年になるんだ……という事実に今まさに驚いているし、ああ、どんどん私も老いていくんだなというワクワクに苛まされていますが、とにかく長いこと一緒に楽曲制作をさせていただいているのは、とても喜ばしいことですね。
花譜ちゃんは感情お化けなんです。歌に感情を込めるのが本当にうまくて、聴き惚れちゃう。しっとりとした優しい曲も、激動に塗れた情熱的な曲も難なく歌いこなしちゃう。本当にすごい。だから私も負けないように、歌詞にちゃんと意味を込めて制作するよう心がけています。彼女の感情に飲まれないように。
ーー「窓を開けて」は、新人のCIELさんが歌唱を担当。いきなり映画主題歌に大抜擢されたところは劇中に登場するナタリーと重なる部分があります。「窓を開けて」という楽曲もナタリーのキャラクター性に一番近いと思いました。
カンザキ:明るい曲をリクエストされ、制作を進めていましたが、俄然自分が根暗なもので、最初は難しかったです。色んな曲を聞いて、沢山参考にしながら、だけど自分の色を込められるように制作しました。色んな明るい曲を聴きすぎて、制作後半は自分もテンアゲ状態で制作してましたね。楽しくてしょうがなかったです。
ーー今回の制作を通して感じた、CIELさんの歌声の特徴や魅力を教えてください。
カンザキ:実は、CIELちゃんとは対面も実際にお話ししたこともないのです。まだデビューすらしていない時に、CIELちゃんという子に楽曲を提供するお話をいただきましたから、彼女の歌声すらまだ聞いていない状態でした。
仮歌を初めて聞いた時、めっちゃ元気やしめっちゃ可愛い!ってなりました。繊細だけどめちゃくちゃパワーのある歌声! 誰かのデビューを支える楽曲を手がけることができて光栄です。