『宇宙なんちゃらこてつくん』『みいつけた!』……大人の心も鷲掴み、子供向け番組で聴けるアーティストの本気ソング

 今、NHK Eテレがますます面白い。攻めている番組が多いだけではなく、使われている楽曲や、その提供アーティストも興味深いのだ。豪華というだけに留まらず、番組との親和性や、その目の付けどころにも、ワクワクせずにはいられない。これは、子どもだけに見せておくにはもったいない! ということで、いくつか番組や楽曲をピックアップしてご紹介しよう。

宇宙なんちゃら こてつくん 第1巻 [DVD](C)2021 Space Academy/ちょっくら月まで委員会

 まずは、この春からはじまったアニメ『宇宙なんちゃらこてつくん』。動物が暮らすアニマル国が宇宙開発に乗り出し、宇宙について学ぶ宇宙アカデミーを設立。そこに通う生徒たちが、宇宙に飛び立つことを目指す……というストーリー。かわいい絵柄や、つい笑ってしまうエピソード、濃いキャラクターも魅力的なのだけれど、さらにこのアニメでは“音”が効果的に使われている。というのも、ナレーションやセリフの後に♪テッテレー、などといったコーラスが、ユーモラスに響き渡るのだ。新しい形のミュージカル風アニメ? その面白さを、エンディングでさらに際立たせるのが、主題歌「2000なんちゃら宇宙の旅」だ。初めて聴いた時、ほお、ラップね、なんか本格的だなあ……と思いながらクレジットを見てひっくり返った。RHYMESTERである! 思わず、踊っている我が子に向けて、この人たちは日本にラップが広まりはじめた頃に結成したレジェンドでね……と語り上げてしまった(もちろん、聞いてくれなかった)。でも、熱弁をふるいたくなるほど、この楽曲はすごいのだ。

TVアニメ「宇宙なんちゃら こてつくん」ノンクレジットED/主題歌「2000なんちゃら宇宙の旅」RHYMESTER

 まずは「さあ旅立とうぜ 雲の上の(上の)上へ(上へ)」とコール&レスポンスが表れ、次に「宇宙ステーションでパーティ気分 アポロ11がアニキぶん」などと宇宙とユーモアを絡めつつ見事に韻を踏み、さらに「何でもない その一歩一歩 がとんでもない」と個々のキャラクターのダンスの映像に子どもへのメッセージを重ね合わせ、「ラララ なんちゃらら~♪」と高らかに歌い上げて終わるのだ。この間、1分ちょっと。その中に、アニメのストーリーとヒップホップのスタイル、さらに子どもに愛されそうなユーモアから真摯なメッセージまで、ありとあらゆるものが詰まっているのである。うわあ、これはとんでもなく贅沢な楽曲だよ! と再び我が子に力説したところで、やっぱり踊っているだけで聞いてくれなかったのだけれど、頭ではなく体と心で音楽を吸収するって、子どもにとって大事なのだと思う。たとえば、Eテレの枠を飛び出して誰もが知ることとなったFoorinの「パプリカ」にも、作詞作曲者の米津玄師の革新性がちりばめられているけれど、これを無邪気に歌い踊った世代の中には、確実に新しいアートのスタンダードが根付いた気がしてならない。

 また、ぜひとも番組単位で音楽をチェックしてほしいのが『みいつけた!』。イスとサボテンと女の子が繰り広げる番組……と字面にしてみるとかなりファンキーだが、流れてくる楽曲も然り。これまでも星野源、トータス松本、山崎まさよし、森山直太朗、クレイジーケンバンドなどなど、豪華布陣が作曲や演奏(と、人によってはイスのキャラクターになって出演)を担ってきた。最近では、カノエラナが作詞作曲の「ぱっぷんぷぅ」、井乃頭蓄音団が演奏の「わーわーわー~はじめてのウソ~」などが流れている。そんな中でも、昨年春に流れて驚かされたのが、くるりの岸田繁が作詞作曲した「ドンじゅらりん」(のちにセルフカバーも発表)。子どもが大好きな恐竜をテーマに、たっぷり擬態語を交えて口ずさみやすくしながらも、構造は交響楽的なのだ。

「ドンじゅらりん」岸田繁

 感性はピュアな子ども、技巧は超絶プロフェッショナル、そんな両極を持ち得るアーティスト、なかなかいないだろう。今年リリースされたくるりのアルバム『天才の愛』を聴いても、そんな彼らしさは感じられる。子どもにわかりやすいもの、面白いものを差し出すだけではなく、その繊細な耳と感性に触れてほしいものとは? ということを追求すると、普段の音楽の作り方も変わってくるのかもしれない。

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