平井 大、星野源、秦 基博、平井 堅……『映画ドラえもん』主題歌はなぜ子供から大人にまで響く?
年に一度公開される『映画ドラえもん』シリーズだが、2014年の『STAND BY ME ドラえもん』以降「大人が泣ける映画」としてブームが再燃している。子ども時代にアニメや映画を見ていても一度は“卒業”したドラえもんで、ここまで大人たちが「泣ける」という理由。その中には、愛くるしいキャラクターたちが繰り広げる物語に加えて、主題歌も一つの要素になっているのではないだろうか。今回は、楽曲の歌詞や歌っているアーティストに触れながら、改めて『映画ドラえもん』と主題歌の親和性について紐解いていきたい。
最新作『映画ドラえもん のび太の月面探査記』の主題歌である平井 大の「THE GIFT」は、2019年3月25日付のBillboard JAPANアニメチャート“Hot Animation”で2週連続1位を獲得した。また、『映画ドラえもん』シリーズの中で興行収入1位の映画『STAND BY ME ドラえもん』の主題歌である秦 基博の「ひまわりの約束」は、同じくBillboard JAPANの総合ソング・チャート“HOT100”にて2014年8月11日付の初登場以来160回以上のチャートインを記録している。
誰もが知る国民的アニメの映画主題歌を務めてきた大役は、ここ10年ほどで振り返ってみても、スキマスイッチ、絢香、BUMP OF CHICKEN、山崎まさよし、平井堅、星野源などが挙げられる。どのアーティストもJ-POPのメインストリームで活躍しているアーティストたちだが、それは単に流行に乗った起用ということではない。物語のテーマに沿ったメッセージをしっかりと映画を見た人に伝えることのできるアーティストたちが、<J-POP×ドラえもん=名曲>の方程式を生んでいるのだ。だからこそ、ヒットの代名詞となるほど映画と足並みを揃えて主題歌になる楽曲が多くの人の心に届いているのだと思う。
また、人々が「共感できる」と頷く歌詞も、主題歌が響くと言われる理由の一つだ。ここでは、近年のドラえもん再ブームの火付け役ともいえる『STAND BY ME ドラえもん』で主題歌を担当した秦 基博「ひまわりの約束」から最新作で主題歌を担当した平井 大「THE GIFT」まで、近年の『映画ドラえもん』の主題歌となった楽曲の歌詞に注目しながら考察してみよう。
秦 基博「ひまわりの約束」
「のび太の結婚前夜」や「帰ってきたドラえもん」など、コミック版『ドラえもん』の名作エピソードが3DCGで蘇った『STAND BY ME ドラえもん』で主題歌となった秦 基博の「ひまわりの約束」は、〈どうして君が泣くの/まだ僕も泣いていないのに/自分より悲しむから/つらいのがどっちかわからなくなるよ〉〈そばにいたいよ/君のために出来ることが僕にあるかな〉と、映画のタイトル通り相手に寄り添い思いやる温かさに溢れた楽曲。
平井 堅「僕の心をつくってよ」
真夏の暑さに耐えかねたのび太たちが向かった南太平洋に浮かぶ巨大な氷山。その下に閉ざされた、巨大な古代都市をめぐる冒険が展開される『映画ドラえもん』の原点回帰とも言える作品『映画ドラえもん のび太の南極カチコチ大冒険』(2017年)の主題歌である平井堅の「僕の心をつくってよ」。〈誰といても僕じゃない気がして/誰かの後ろを見てた/隠れても隠れても/君だけは僕を見つけてくれた〉〈ねぇ 君のずるさを晒してよ/ねぇ 僕のダメさを叱ってよ/これからも この先も/僕の心をつくってよ〉と歌うこの歌は弱い「僕」と守ってくれる「君」の関係性と相手への信頼感を強く感じさせる。