『大豆田とわ子と三人の元夫』EDテーマがバイラル上位に 松たか子の歌唱表現を引き出すSTUTSの手腕

 本曲のトラックとプロデュースを担当したSTUTSは、トラックメイカー&MPCプレイヤーだ。ヒップホップやトラップをルーツに持ち、ビートの効いたチルなサウンドを得意としながらも、80年代のシティポップやAORのような艶のあるメロディも操る、音像の魔術師である。自身のアーティスト活動のほか、星野源やYUKI、DAOKOなど様々なアーティストの楽曲の演奏やプロデュースに参加している。「Presence I」のトラックはメロウかつダウンテンポで、KID FRESINOのラップとはもちろん相性抜群だが、驚くのは松たか子のボーカルとも相性がいいところだ。おそらくSTUTSが、トラックを“松たか子の声”に寄せてきているのだと思う。松たか子の歌唱力は、大ヒットした『アナと雪の女王』で誰もが知るところだと思うが、その個性は、ウィスパーとは異なる独特の軽やかさを伴った声質にある。それを熟知した上で、さらなる実力を引き出すことに成功しているのが本作だ。ロングトーン無しで譜割りが進行し、サビではリズムのアプローチを変えてスムースなグルーブを作り出している。また、ファルセットかそうじゃないかのギリギリで高音をキープさせるキーの設定や、ジャズの趣も感じられるアーバンなサビのメロディラインなど、聴けば聴くほど、松たか子というボーカリストをプロデュースしている要素が見つかる。

 今後、ポップスシーンで、STUTSの名前を見かけることがますます多くなるはずだ。「Presence I」のクオリティ、そしてバイラルチャート2位という結果が、そう断言してもいいと教えてくれている。

※1:https://realsound.jp/2021/05/post-754382.html

■伊藤亜希
ライター。編集。アーティストサイトの企画・制作。喜んだり、落ち込んだり、切なくなったり、お酒を飲んだりしてると、勝手に脳内BGMが流れ出す幸せな日々。旦那と小さなイタリアンバル(新中野駅から徒歩2分)始めました。
Piccolo 266 インスタグラム(@piccolo266)

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